(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年6月27日23時09分
東京湾中ノ瀬西方海域
(北緯35度22.8分 東経139度42.4分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船金昌丸 |
貨物船第二十茂平丸 |
総トン数 |
499トン |
105トン |
全長 |
75.92メートル |
42.72メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
367キロワット |
3 事実の経過
金昌丸は,船尾船橋型鋼製貨物船で,A受審人ほか4人が乗り組み,大豆1,500トンを積載し,船首3.4メートル船尾4.4メートルの喫水をもって,平成17年6月27日22時30分京浜港横浜区第3区を発し,福岡県博多港に向かった。
A受審人は,東京湾中ノ瀬西方第2号灯浮標の西方海域で昇橋して法定灯火を掲げていることを確認し,前直の船長と交替して単独の船橋当直に当たり,22時50分横浜蛸根海洋観測灯標(以下「海洋観測灯標」という。)から020度(真方位,以下同じ。)3.8海里の地点において,針路を176度に定めて自動操舵とし,機関を全速力前進にかけ,10.6ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で進行した。
23時03分わずか前A受審人は,海洋観測灯標から048度2.0海里の地点に至ったとき,左舷船首61度930メートルのところに第二十茂平丸(以下「茂平丸」という。)の白,白,緑3灯を初認し,間もなく同船が前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で,自船の進路を避けないまま接近してくることを認めたものの,警告信号を行わなかった。
23時07分A受審人は,茂平丸との距離が250メートルとなって間近に接近したが,同船が東京湾中ノ瀬西方第1号灯浮標(以下「1号灯浮標」という。)付近で浦賀水道航路の北口に向けて左転するはずなので大丈夫と思い,機関を停止するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく続航し,同時08分同距離が90メートルとなったとき,同船と並行するよう自動操舵のまま針路を215度に転じ,同時09分少し前手動操舵に切り替えて右舵をとったが及ばず,金昌丸は,23時09分海洋観測灯標から080.5度2,870メートルの地点において,船首が215度を向き,原速力のまま,その左舷船尾部が茂平丸の右舷船首部に後方から10度の角度で衝突した。
当時,天候は曇で風力4の南西風が吹き,潮候は下げ潮の初期で,視界は良好であった。
また,茂平丸は,船尾船橋型鋼製貨物船で,B受審人ほか4人が乗り組み,雑貨約200トンを積載し,船首1.7メートル船尾3.2メートルの喫水をもって,同日21時15分京浜港東京区を発し,東京都大島元町港に向かった。
21時30分B受審人は,東京灯標付近で昇橋して法定灯火を掲げていることを確認し,前直の船長と交替して単独の船橋当直に当たり,22時58分少し前海洋観測灯標から051度2.9海里の地点において,針路を1号灯浮標に向く205度に定めて自動操舵とし,機関を全速力前進にかけ,9.3ノットの速力で進行した。
23時03分わずか前B受審人は,海洋観測灯標から059.5度2.25海里の地点に至ったとき,右舷正横930メートルのところに,金昌丸の白,白,紅3灯を視認でき,同船が前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近してくることを認め得る状況であったが,船首方の1号灯浮標の明かりを注視し,周囲の見張りを十分に行わなかったので,このことに気付かず,機関を停止するなど同船の進路を避けることなく続航した。
茂平丸は,23時09分わずか前B受審人が至近に迫った金昌丸に気付き,自動操舵のまま左舵をとったものの効なく,原針路,原速力のまま,前示のとおり衝突した。
衝突の結果,金昌丸は左舷船尾部ハンドレールに,茂平丸は右舷船首部ハンドレールにそれぞれ曲損を生じたが,のちいずれも修理された。
(海難の原因)
本件衝突は,夜間,東京湾中ノ瀬西方海域において,両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中,南西進する茂平丸が,見張り不十分で,前路を左方に横切る金昌丸の進路を避けなかったことによって発生したが,南下する金昌丸が,警告信号を行わず,衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
B受審人は,夜間,東京湾中ノ瀬西方海域において,南西進する場合,接近する他船を見落とさないよう,周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,船首方の1号灯浮標の明かりを注視し,周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近する金昌丸に気付かず,同船の進路を避けることなく進行して衝突を招き,金昌丸の左舷船尾部ハンドレール及び茂平丸の右舷船首部ハンドレールにそれぞれ曲損を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は,夜間,東京湾中ノ瀬西方海域において南下中,茂平丸が前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で,自船の進路を避けないまま間近に接近するのを認めた場合,機関を停止するなど衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかしながら,同人は,茂平丸が1号灯浮標付近で浦賀水道航路の北口に向けて左転するはずなので大丈夫と思い,機関を停止するなど衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により,同船との衝突を招き,前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
参考図
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