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 (海難の事実) 
1 事件発生の年月日時刻及び場所 
 平成16年6月4日21時33分 
 京浜港横浜区 
 (北緯35度27.1分 東経139度40.4分) 
 
2 船舶の要目 
| 船種船名 | 
モーターボートアドバンス | 
 
| 全長 | 
8.229メートル | 
 
| 機関の種類 | 
電気点火機関 | 
 
| 出力 | 
106キロワット | 
 
 
 
 
3 事実の経過 
 アドバンス(以下「ア号」という。)は,レーダーを装備せずGPSプロッター等を設備するFRP製モーターボートで,A受審人(平成10年4月一級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み,同乗者3人を乗せ,船首0.3メートル船尾0.7メートルの喫水をもって,平成16年6月4日19時00分東京都荒川区新中川の大杉暫定係留施設を発し,京浜港横浜区本牧ふ頭A突堤基部南西方の貯木場に面するレストランの桟橋に向かった。 
 ところで,京浜港横浜区本牧ふ頭A突堤と大黒ふ頭との間には,横浜航路が設けられ,同航路を跨いで架けられた横浜ベイブリッジの基部東側の前示突堤及びふ頭から同航路境界線にかけて外防波堤が築造されていた。 
 一方,A受審人は,横浜航路を通航したことは昼夜ともになく水路状況には不案内であったが,GPSプロッターを備えているから大丈夫と思い,大杉暫定係留施設を発航する際,備えていた海図に当たったり,GPSプロッターの表示を拡大して検討したりするなどして水路調査を十分に行わなかったので,外防波堤の存在を知らなかった。 
 20時00分A受審人は,浦安市の浦安マリーナに入港して給水を行い,20時20分航行中の動力船の灯火を表示して発進したのち横浜航路に向けて南西進し,21時28分わずか過ぎ同航路に入り,横浜ベイブリッジを通過してすぐに前示レストランの桟橋に向け左転するつもりで航路の外に出て,21時32分少し前横浜外防波堤南灯台から132度(真方位,以下同じ。)560メートルの地点で,針路を同ブリッジ橋桁の南側に向く302度に定め,機関をほぼ全速力前進にかけ,14.3ノットの対地速力で,立って手動操舵により進行したところ,南側の外防波堤に向首することになったが,このことに気付かなかった。 
 こうしてA受審人は,GPSプロッターの表示を拡大せずに夜景を眺めて外防波堤に向首したまま続航中,21時33分わずか前船首至近に同防波堤を認めて驚き,後進にかけたが効なく,21時33分横浜外防波堤南灯台から202度100メートルの地点において,ア号は,原針路,原速力のまま,その船首が,外防波堤に82度の角度で衝突した。 
 当時,天候は晴で風力2の南風が吹き,潮候は下げ潮の初期であった。 
 衝突の結果,ア号は,船首部外板に破口を生じたが,のち修理された。 
 
(海難の原因) 
 本件防波堤衝突は,夜間,京浜港東京区から同港横浜区本牧ふ頭A突堤基部のレストランの桟橋に向け発航するにあたり,水路調査が不十分で,同ふ頭A突堤から延びる外防波堤に向首したまま進行したことによって発生したものである。 
 
(受審人の所為) 
 A受審人は,夜間,京浜港東京区から同港横浜区本牧ふ頭A突堤基部のレストランの桟橋に向け発航する場合,備えていた海図に当たったり,GPSプロッターの表示を拡大して検討したりするなどして水路調査を十分に行うべき注意義務があった。ところが,同人は,GPSプロッターを備えているから大丈夫と思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,本牧ふ頭A突堤から延びる外防波堤に向首したまま進行して同防波堤との衝突を招き,ア号の船首部外板に破口を生じさせるに至った。 
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 
 
 
参考図 
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