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平成17年門審第82号
件名

漁船第十一共福丸浸水事件

事件区分
浸水事件
言渡年月日
平成18年1月26日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(西林 眞,織戸孝治,上田英夫)

理事官
花原敏朗

受審人
A 職名:第十一共福丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
主機電装品,発電機,充電機及び集魚灯用安定器等濡損

原因
主機冷却海水系統の点検不十分

主文

 本件浸水は,主機冷却海水系統の点検が十分でなかったばかりか,船内を無人として岸壁に係留する際,海水吸入コックを閉鎖しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年12月21日02時00分
 宮崎県島野浦漁港
 (北緯32度40.0分 東経131度48.9分)

2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 漁船第十一共福丸
総トン数 4.88トン
登録長 9.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 187キロワット
(2)設備及び性能等
ア 第十一共福丸
 第十一共福丸(以下「共福丸」という。)は,昭和53年3月に進水し,網船1隻,灯船2隻及び運搬船1隻からなる中型まき網漁業船団に所属するFRP製灯船で,船体ほぼ中央部の甲板上に操舵室を,その下層に機関室をそれぞれ配置していた。
イ 機関室
 機関室は,船首側に隣接する元魚倉との隔壁を取り除き,船尾側にある船員室との間が同室の床板から高さ約0.45メートル(m)の仕切板で仕切られており,ほぼ中央部に主機として,B社製のS6MB-MTK型と称する間接冷却式のディーゼル機関を据え付け,前部動力取出軸からベルト駆動される交流発電機を元魚倉右舷側と機関室左舷前部に各1台,充電機を同室右舷前部にそれぞれ配置し,元魚倉及び船員室には集魚灯用安定器などを設置していた。
ウ 主機冷却海水系統
 主機の冷却海水系統は,主機左舷後部の船底部に取り付けられた呼び径1インチ2分の1の海水吸入コックから直結冷却海水ポンプにより吸引加圧された海水が,空気冷却器,清水冷却器及び潤滑油冷却器などを冷却して船外排出されており,同コックから同ポンプに至る吸入管には長さ約1.7m内径38ミリメートルのゴムホースを使用し,同ホースを海水吸入コックに差し込んで金属製のホースバンド1個で固定していた。

3 事実の経過
 A受審人は,宮崎県島野浦漁港を基地として,周年日帰り操業に従事しており,操業を終えて岸壁に無人で係留する際の海水吸入コックの取扱いについて,次の主機始動時に開け忘れて過熱運転とならないよう,また同コックのハンドルが固くなっていたこともあって,海水管関係の作業を行う以外は閉鎖することがほとんどなかった。
 また,A受審人は,帰港後同乗の甲板員に機関室のビルジ量を点検させ,溜まっていればビルジポンプを運転して排出するようにしていたが,自ら同室に入り,主機の冷却海水系統を十分に点検していなかったので,長期間使用されていた海水吸入ゴムホース(以下「ゴムホース」という。)と同ホースをコックに固定していたホースバンドが経年劣化し,ゴムホースが硬化するとともに,振動の影響もあってホースバンドに微小亀裂が生じて進行する状況となっていることに気付かないまま,操業を続けた。
 共福丸は,A受審人ほか1人が乗り組み,宮崎県北浦港沖合漁場での操業を終えて島野浦漁港に帰港し,船首0.40m船尾1.15mの喫水をもって,平成16年12月20日06時30分島野浦港北防波堤灯台から真方位115度480mの地点に係留した。
 A受審人は,機関室ビルジを確認したのち,主機を停止して下船することとしたが,ビルジ量に異常がなく,これまで海水吸入コックを開けたままで支障なかったので大丈夫と思い,同コックを閉鎖することなく,甲板員とともに離船した。
 こうして,共福丸は,船内を無人としたまま係留中,海水吸入コックとゴムホースを固定するホースバンドの亀裂が進行して破断し,開弁された同コックを経て同ホース差込み部から多量の海水が浸入し,翌21日02時00分前示係留地点において,折からの天候悪化から当日の出漁の可否を判断するために岸壁に赴いた船団の漁労長により,船体が異常に沈下しているのが発見された。
 当時,天候は曇で風力2の北西風が吹き,港内は穏やかであった。
 自宅で休養していたA受審人は,漁労長から電話で共福丸の異常を知らされ,係留岸壁に急行したところ機関室が船底から約0.8mの高さまで浸水していたことから,僚船に依頼して排水作業を行い,海水吸入コックからゴムホースが外れかかっているのを認めて同コックを閉鎖した。
 浸水の結果,共福丸は,主機電装品,発電機,充電機及び集魚灯用安定器等が濡損したが,のちいずれも修理され,海水吸入管及びホースバンドが新替えされた。

(本件発生に至る事由)
1 ゴムホースと同ホースを海水吸入コックに固定していたホースバンドがいずれも長期間使用されて経年劣化していたこと
2 主機冷却海水系統の点検を十分に行っていなかったこと
3 船内を無人として係留する際,海水吸入コックを閉鎖していなかったこと

(原因の考察)
 本件は,主機冷却海水系統の点検を十分に行っていれば,長期間使用しているゴムホースと同ホースを海水吸入コックに固定していたホースバンドが経年劣化し,同ホースの硬化していることやホースバンドに微小亀裂が生じていることを発見でき,早期に新替えなどの措置をとれたものと認められる。
 したがって,A受審人が,主機冷却海水系統の点検を十分に行っていなかったことは,本件発生の原因となる。
 また,本件は,船内を無人として係留する際,海水吸入コックを閉鎖していれば,ゴムホースの硬化やホースバンドの破断など冷却海水系統に不測の事態が発生しても海水の浸入が防止できたものと認められる。
 したがって,A受審人が,船内を無人として岸壁に係留する際,海水吸入コックを閉鎖しなかったことは,本件発生の原因となる。

(海難の原因)
 本件浸水は,主機冷却海水系統の点検が不十分であったばかりか,船内を無人として岸壁に係留する際,海水吸入コックを閉鎖しなかったことにより,ゴムホースを同コックに固定していたホースバンドが破断し,海水が機関室に浸入したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,船内を無人として岸壁に係留する場合,冷却海水系統に不測の事態が発生したときに,海水が機関室に浸入することのないよう,海水吸入コックを閉鎖すべき注意義務があった。ところが,同人は,ビルジ量に異常がなく,これまで海水吸入コックを開けたままで支障なかったので大丈夫と思い,同コックを閉鎖しなかった職務上の過失により,ゴムホースを海水吸入コックに固定していたホースバンドが破断し,同接続部から機関室に海水が浸入する事態を招き,主機電装品,発電機,充電機及び集魚灯用安定器等を濡損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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