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平成17年広審第157号
件名

貨物船第十八新映丸のり養殖施設損傷事件(簡易)

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成18年3月14日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(川本 豊)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:第十八新映丸船長 海技免許:五級海技士(航海)
指定海難関係人
B 職名:第十八新映丸甲板員

損害
第十八新映丸・・・推進翼4枚全て曲損
のり養殖施設・・・損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件のり養殖施設損傷は,居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年1月24日02時23分
 香川県直島角埼北方沖合
 (北緯34度27.5分 東経134度01.2分)

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十八新映丸
総トン数 492トン
全長 63.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 661キロワット

3 事実の経過
 第十八新映丸(以下「新映丸」という。)は,専ら香川県小豆島の灘山地区で切り出した石材を広島県三原市,福山市及び愛媛県四国中央市などの揚げ地に運ぶ船尾船橋型の砕石運搬船で,A受審人及びB指定海難関係人ほか2人が乗り組み,石材1,000トンを積載し船首3.1メートル船尾4.5メートルの喫水をもって,平成17年1月24日01時10分香川県土庄東港を発し,三原市幸崎地区に向かった。
 A受審人は,目的地までの船橋当直を,B指定海難関係人,機関長,一等航海士及び自身による,それぞれが単独で1時間30分の体制とした。そして,同受審人は,発航操船に引き続いて池田湾を南下したのち,01時40分鹿島黒埼の南0.5海里に達したとき,備讃瀬戸東航路の西行レーンに入航できるよう針路を267度(真方位,以下同じ。)に定め,機関を全速力前進としてB指定海難関係人に当直を委ねたが,その際,まさか当直者が居眠りすることはあるまいと思い,同指定海難関係人に対して,眠気を催したときは,その旨を報告するよう指示しなかった。
 B指定海難関係人は,当直交替したのち,折からの東方に流れる潮流に抗して9.0ノットの対地速力で引き継いだ針路のまま,備讃瀬戸東航路中央第4号灯浮標の灯火を船首やや左に見ながら自動操舵により進行した。
 ところで,B指定海難関係人は,前日23日の10時00分灘山で石材の積込みを終え,12時30分目的地の入航時間調整などのため土庄東港に回航して同港の岸壁に着岸したのち,上陸して昼食をとり,その後19時00分までパチスロに興じたのち夕食をとって21時ころ帰船した。そして,同指定海難関係人は,23時20分ごろ就寝して翌24日00時50分出航準備のため起床したものの,当直前の睡眠時間が十分でなかったので,軽い眠気を催していた。
 B指定関係人は,01時52分カナワ岩灯標から332度2.0海里の地点に達したとき,右舷船首方に自船の進路を横切る態勢で南下する漁船の灯火を認め,同船を避航するため自動操舵のまま右転して276度の針路として,舵輪後方に置いた椅子に腰掛けて電気ストーブで暖をとりながら進行中,強い眠気を催したが,船長にその旨を報告して当直を替わってもらうなど居眠り運航の防止措置をとらなかったので,いつしか居眠りに陥った。
 こうしてB指定海難関係人は,漁船を避航し終えたのちも居眠りをしていたので原針路に復すことができず,276度の針路のままで続航するうち,新映丸は02時23分鞍掛鼻灯台から182度1.3海里の地点において,全速力のまま直島角埼北方沖合に敷設された直島漁業協同組合が管理するのり養殖施設に進入した。
 本件後B指定海難関係人は,のり養殖施設に進入したことに気付かないままこれを航過し,02時30分直島東岸の砂浜に乗り揚げた。
 一方,A受審人は,自室で休息中,機関の異音に気付いて急ぎ昇橋して本件発生を知り,事後の措置にあたった。
 当時,天候は晴で風力1の南南東風が吹き,潮候は下げ潮の末期で,付近には0.7ノットの東方に流れる潮流があった。
 その結果,のり養殖施設が損傷し,推進翼4枚全てが曲損した。

(海難の原因)
 本件のり養殖施設損傷は,夜間,備讃瀬戸を西行中,居眠り運航の防止措置が不十分で,香川県直島角埼北方沖合に敷設されたのり養殖施設に進入したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは,船長が船橋当直者に当直を委ねる際,同人に対して,眠気を催したときには,その旨を報告するよう指示しなかったことと,船橋当直者が眠気を催した際,居眠り運航の防止措置を十分にとらなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,備讃瀬戸において,船橋当直者に当直を委ねる場合,同人に対して,眠気を催したときにはその旨を報告するよう,指示すべき注意義務があった。しかるに,同受審人は,まさか当直者が居眠りすることはあるまいと思い,船橋当直者に指示しなかった職務上の過失により,同人が居眠りに陥ってのり養殖施設への進入を招き,のり養殖施設に損傷を生じさせたほか,推進翼4枚全てに曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人は,夜間,備讃瀬戸を西行中,眠気を催した際,居眠り運航の防止措置をとらなかったことは,本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては,勧告するまでもない。





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