(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年2月27日04時52分
東播磨港
(北緯34度40.4分 東経134度48.4分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第二十五海上丸 |
総トン数 |
699トン |
全長 |
83.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,471キロワット |
3 事実の経過
第二十五海上丸(以下「海上丸」という。)は,平成4年3月に進水し,主に関門港から瀬戸内海の各発電所や製鉄所への石炭輸送に従事する船尾船橋型貨物船で,A受審人ほか4人が乗り組み,空倉のまま船首1.68メートル船尾3.67メートルの喫水をもって,平成17年2月26日15時45分広島県呉港を発し,兵庫県東播磨港に向かった。
A受審人は,船橋当直を,自らと一等航海士及び二等航海士の3人による単独4時間3交替制として瀬戸内海を東行した。
翌27日04時15分A受審人は,当直中の一等航海士から東播磨港の航路入口から7海里の地点に達した旨の報告を受けて昇橋し,その後単独で操船に当たった。
04時26分A受審人は,東播磨港別府西防波堤灯台から242度(真方位,以下同じ。)6.4海里の地点に達したとき,針路をGPSプロッターに入力されている東播磨港の航路入口に向かう070度に定めて自動操舵とし,機関を全速力前進にかけて12.5ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で進行した。
04時34分A受審人は,レーダーにより航路入口から3海里の地点に達したことを認め,GPSプロッターの速力表示を見ながら主機を操作して10.0ノットに減速したうえ手動操舵に切り替え,同時41分ごろ前路で錨泊している大型専用船の船尾側を迂回するため右転し,同時43分同船を左舷側にかわしたとき,東播磨航路第2号灯標(以下,灯標の名称については「東播磨航路」を省略する。)から250度1.5海里のところで針路を070度に戻し,その後レーダーもGPSプロッターも看視することなく,操舵スタンド後方に立ち見張りを兼ねて操舵に当たりながら続航した。
A受審人は,一等航海士のときから東播磨港へ数多く入出港しており,第1号灯標が左舷標識で第2号灯標が右舷標識であり,これらが航路の入口を示すもので,そこから航路内を航行し,東播磨港の防波堤入口である東播磨港別府西防波堤灯台及び同東防波堤灯台に向かうことを十分に承知していた。
しかし,A受審人は,当時視界も良く,東播磨港別府西防波堤灯台及び同東防波堤灯台の各灯火を左舷前方に確認できていたことから気が緩み,東播磨港の航路を示す多数の点滅する灯火を船首方向から左側にかけて視認できていたが,レーダーや海図を活用して船位を確認し,航路入口を示す第1号灯標や第2号灯標との相対位置関係を確かめることなく進行した。
海上丸は,折からの微弱な東へ流れる潮流により,1度ばかり右方に圧流され,正船首わずか右方に見えていた第2号灯標の灯火が徐々に左方に替わり,そのまま続航すると航路入口から東に外れる態勢となったが,A受審人は,第2号灯標との相対位置関係を確かめなかったので,同灯火が右舷標識である第2号灯標のものと認識しないまま原針路,原速力で進行した。
04時51分半A受審人は,第2号灯標を正船首わずか左方150メートルに見る態勢となったとき,ようやく,同灯標を右舷側に見て航路内に入らなければならないことに気づき,あわてて左舵一杯をとって回頭中,同灯標が右舷側船尾に接近したのでキックを利用するため右舵一杯としたが効なく,04時52分船首が045度を向いたとき,第2号灯標に,右舷側船尾外板が接触した。
当時,天候は曇で風力2の北西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期で,付近には微弱な東流があり,視界は良好であった。
その結果,海上丸は,第2号灯標から発射された黄色ペイントが右舷側船尾外板に付着したのみであったが,第2号灯標の太陽電池台基部及びプラットホーム等に曲損を生じさせた。
(海難の原因)
本件灯標損傷は,夜間,兵庫県東播磨港の航路入口に向けて入航する際,船位の確認が不十分で,第2号灯標に著しく接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,兵庫県東播磨港に入航する目的で航路入口に向けて接近する場合,航路入口を示す第1号灯標及び第2号灯標との相対位置関係を知るため,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが,同受審人は,東播磨港の防波堤入口を示す東播磨港別府西防波堤灯台や同東防波堤灯台の灯火を確認していたことから気が緩み,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,右舷標識である第2号灯標との相対位置関係を確かめないまま進行し,同灯標を左舷側に見る態勢で接近したとき,航路入口から入航するよう,左舵一杯をとって右舷側船尾外板を第2号灯標に接触させ,太陽電池台基部及びプラットホームに曲損を生じさせた。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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