(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年9月12日19時10分
和歌山県友ケ島水道中ノ瀬戸
(北緯34度17.7分 東経135度01.9分)
2 船舶の要目
船種船名 |
モーターボートフリーウェイV |
登録長 |
6.86メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
220キロワット |
3 事実の経過
フリーウェイV(以下「フ号」という。)は,平成5年6月に第1回定期検査を受け,平成16年9月にA受審人が中古で購入したFRP製モーターボートで,船体中央に操縦席のあるキャビンとその上方で操船可能なフライングブリッジを備え,レーダーはなかったものの,GPSプロッターを装備していた。
昭和60年10月に二級小型船舶操縦士の海技免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,知人2人を同乗させ,遊走の目的で,船首0.6メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,平成17年9月12日10時ごろ係留地である大阪府貝塚市のマリーナを離れ,和歌山県加太港でさらに知人2人を同乗させ,同港沖合の地ノ島でシュノーケリングなどを楽しんだあと,兵庫県洲本市古茂江港に向かい,ホテルの桟橋に係留して休憩を取った。
同日18時37分A受審人は,古茂江港を発するとき,法定灯火を点灯し,和歌山県虎島と同県地ノ島の間の中ノ瀬戸を通狭することとして,加太港に向かった。
A受審人は,この海域での操船経験が豊富にあったので,GPSプロッターを使うまでもないと考え,電源を入れないまま,友人1人を伴ってフライングブリッジに上がり,目視で手動による操船を行った。
19時06分少し前A受審人は,友ケ島灯台から037度(真方位,以下同じ。)1.6海里の地点に至って,針路を中ノ瀬戸を見通して加太港南のホテルの明かりに向首する126度に定め,機関を前進半速の10.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)として進行した。
ところで,中ノ瀬戸の最狭部は,その幅が450メートルばかりで,地ノ島オソ越ノ鼻西方100メートルの沖合に干出岩が存在していたので,同瀬戸を通狭する場合は,同干出岩に注意して瀬戸の中央寄りに航行する必要があった。A受審人は,過去の通狭経験からその干出岩が存在していることや同瀬戸中央寄りに航行しなければならないことについて十分に承知していた。
定針したとき,A受審人は,GPSプロッターの電源を入れておらず,正確な現在位置を知ることができなかったが,過去の経験により加太港南のホテルの明かりの見え方などから,同明かりに向首すれば中ノ瀬戸の中央寄りを航行できるものと思い,GPSプロッターの電源を入れて自船の船位を確認しなかったので,自船が中ノ瀬戸の中央寄りに航行しないまま水中に存在する干出岩に向首していることに気付かなかった。
こうして,A受審人は,その後も依然として,船位の確認を十分に行うことなく続航中,19時10分友ケ島灯台から061度1.8海里の地点において,水中にあった干出岩に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風はなく,日没時刻は18時12分で,潮候は上げ潮の末期で,視界は良好であった。
乗揚の結果,船底のキール部に亀裂を生じ,浸水したが,自力航行し加太港に向け,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,和歌山県友ケ島水道において,中ノ瀬戸を通狭する際,船位の確認が不十分で,地ノ島オソ越ノ鼻西方沖合の干出岩に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,和歌山県友ケ島水道において,中ノ瀬戸を通狭する場合,地ノ島オソ越ノ鼻西方沖合の干出岩に接近しないよう,GPSプロッターの電源を入れて船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかしながら,同人は,過去の経験により目標のホテルの明かりに船首を向ければ瀬戸の中央寄りに通狭できると思い,船位を十分に確認しなかった職務上の過失により,同干出岩に向首していることに気付くことなく進行して乗揚を招き,船底のキール部に亀裂を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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