(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年6月20日10時00分
大阪港
(北緯34度35.0分 東経135度27.9分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船大亀丸 |
総トン数 |
470トン |
全長 |
51.34メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
514キロワット |
3 事実の経過
大亀丸は,平成2年7月に進水した鋼製貨物船で,A受審人ほか2人が乗り組み,砕砂900トンを積載し,船首3.0メートル船尾3.6メートルの喫水をもって,同17年6月20日04時00分兵庫県家島港を発し,大阪港堺泉北区第2区にある大浜第1号物揚場へ向かった。
A受審人は,出港操船に引き続いて船橋当直に当たり,06時30分明石海峡航路を航過したところで,次直の一等航海士に船橋当直を引き継いだのち,一旦,降橋して自室で休息を取り,09時20分大阪港の堺航路第15号灯浮標西方350メートルばかりの地点で再び昇橋し,同航海士に船首配置を命じて入港操船に当たった。
そして,09時30分A受審人は,堺市北波止町と大浜北町の間を流れる堅川に架けられた阪神高速湾岸線及び大阪臨海線の渡河橋から西方600メートルばかりの地点で,先船の出港待ちのため,右舷錨を1節半投錨して時間調整を始めた。
ところで,大浜第1号物揚場は,前示渡河橋から堅川を利用した水路(以下「堅川水路」という。)を約400メートル東方へ遡ったところにある旧堺港の最も北側に位置しており,同物揚場に向かう船舶は,堅川水路の東端で,ほぼ直角に左転して200メートルばかり北上するのであるが,幅80ないし100メートルの同水路中央部付近の水深は約4メートルであるものの,護岸寄りは水深3メートル以下の浅所が随所に点在しているうえ,同水路東端の左転予定地点近くには,水深0.4メートルの浅所も存在していることから,当該船舶は,それらの浅所に乗り揚げないよう,水深が正確に記載されている大縮尺の海図W1146号(堺)を調べるなりして,水路調査を十分に行うことが求められる状況であった。
09時50分A受審人は,先船が出港した旨の報告を受けて錨を揚げ,家島港を出港したときから使用していた小縮尺の海図第106号(大阪湾及び播磨灘)を使用して大浜第1号物揚場へ向かってシフトを始め,同時57分大阪港大和川南防波堤南灯台から106度(真方位,以下同じ。)約3.3海里のところに位置する,大浜公園内の蘇鉄山三角点(7メートル)から333度500メートルの地点に達したとき,針路を106度に定め,機関を半速力前進にかけ,6.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵によって進行した。
シフトを開始したとき,A受審人は,前示水路調査を十分に行うことが求められる状況にあったが,これまでも小縮尺の海図を使って無難に入港していたことなどから,大丈夫と思い,大縮尺の海図W1146号を事前に入手するなりして,水路調査を十分に行わなかったので,左転予定地点近くに0.4メートルの浅所が存在していることに気付かなかった。
こうして,A受審人は,09時59分半蘇鉄山三角点から031度380メートルの地点に至ったとき,大きく左舵を取り,大浜第1号物揚場へ向けて回頭中,10時00分蘇鉄山三角点から040度440メートルの地点において,大亀丸は,船首方位065度,速力4.0ノットとなったとき,水深0.4メートルの浅所に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風はなく,潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果,船首部船底外板に塗装剥離及び船尾部船底に小さな破口を生じたが,自力離礁し,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,大阪港において,同港堺泉北区第2区にある大浜第1号物揚場へ向けて航行中,水路調査が不十分で,浅所へ向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,大阪港において,同港堺泉北区第2区にある大浜第1号物揚場へ向けて航行する場合,小縮尺の海図では水深を正確に把握できないことから,水路内の浅所に乗り揚げることのないよう,水深が正確に記載されている大縮尺の海図を事前に入手するなりして,水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,大浜第1号物揚場には,これまで小縮尺の海図を使って無難に入港していたことから,大丈夫と思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,水深を正確に把握しないまま,危険な浅所へ向首進行して乗揚を招き,船底に破口を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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