(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年6月4日03時00分
鹿児島県種子島北端部
(北緯30度49.6分 東経131度02.1分)
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第二十七日昇丸 |
総トン数 |
19トン |
登録長 |
17.40メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
190 |
3 事実の経過
第二十七日昇丸(以下「日昇丸」という。)は,昭和60年10月に進水し,中型まき網漁業船団の網船として従事するFRP製漁船で,平成16年6月交付の一級,特殊及び特定の各資格を担保する小型船舶操縦免許証を所持する,A受審人ほか7人が乗り組み,操業の目的で,船首1.0メートル船尾3.0メートルの喫水をもって,同17年6月3日15時00分船団の僚船3隻とともに鹿児島県内之浦港を発し,同県種子島北方漁場に向かった。
ところで,A受審人は,B社の代表取締役社長と漁ろう長を兼務しており,日昇丸で出漁中に破網事故があって,網の修理の目的で発航日の前々日に急きょ帰港していたもので,帰港日及びその翌日は修理作業の指揮や関連業務の処理などに時間をとられ,睡眠時間がいずれの日も平素より2時間ばかり短かったうえ,発航当日は出港準備のために03時ごろに起床したことから,発航時から睡眠不足による眠気を感じ,目を冷やしたり他の乗組員と会話をしたりするなどして1人で操船に当たっていた。
19時ごろA受審人は,種子島北端の北西方2.5海里ばかりの漁場に至り,操業を開始したものの漁獲が思わしくなかったことから,次の操業に備えて他の乗組員を休息させ,同島北端の東南東方7.2海里ばかりの漁場まで移動したが,同漁場に魚群を発見できなかったので,船団の各船を分散させて魚群探索を行いながら,最初に操業した漁場に戻ることにした。
翌4日01時00分A受審人は,喜志鹿埼灯台から106度(真方位,以下同じ。)6.6海里の漁場を発進し,機関を全速力前進にかけ,7.5ノットの対地速力で,立って自動操舵の転針ダイヤルを操作し,南北に大きく蛇行してソナー及び魚群探知機の魚影反応を見ながら西進し,時には操舵室後部の畳敷きのところに座り,僚船と無線交信をして同反応を聞きながら進行した。
02時40分ごろA受審人は,魚群を発見できなかったことから,僚船を先行させて目的地で魚群探索や集魚作業を行わせ,自船はその間に種子島北端部の東側近くを探索してみることとし,同時43分半喜志鹿埼灯台から115度2.4海里の地点で,針路を種子島北端部に向く284度に定め,畳敷きのところに腰掛けた。
このとき,A受審人は,全船を指揮して魚群探索をしていたときの緊張感が単独探索となって緩んだことや睡眠不足であったことから,強い眠気を覚えたが,魚群探索中に居眠りすることはあるまいと思い,休息中の乗組員を昇橋させて2人当直とするなどの居眠り運航の防止措置をとることなく,同じ速力で進行した。
A受審人は,いつしか居眠りに陥り,種子島北端部の陸岸に接近していることに気付かず,転針せずに同じ針路で続航中,03時00分喜志鹿埼灯台から145度1,000メートルの地点において,日昇丸は,原針路,原速力のまま,種子島北端部の岩礁に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は上げ潮の末期であった。
乗揚の結果,日昇丸は,球状船首及び右舷船底外板に亀裂を伴う凹損を生じたほか,シューピース及びソナー送受波器などを損傷したが,自力で離礁し,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,鹿児島県種子島北方漁場において,同島北端部に向く針路で魚群探索中,居眠り運航の防止措置が不十分で,陸岸に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,鹿児島県種子島北方漁場において,自動操舵により同島北端部に向く針路で魚群探索中,強い眠気を覚えた場合,居眠り運航とならないよう,休息中の乗組員を昇橋させて2人当直とするなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが,同人は,魚群探索中なので居眠りすることはあるまいと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥り,同島北端部の陸岸に接近していることに気付かず,同じ針路のまま進行して乗揚を招き,日昇丸の球状船首及び右舷船底外板に亀裂を伴う凹損を生じさせたほか,シューピース及びソナー送受波器などを損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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