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平成17年広審第72号
件名

漁船澄恵丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年2月15日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(川本 豊)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:澄恵丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板に擦過傷,プロペラ及び舵板に曲損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年2月14日02時30分
 愛媛県松山市興居島南岸
 (北緯33度52.3分 東経132度40.0分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船澄恵丸
総トン数 4.99トン
全長 15.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 15

3 事実の経過
 澄恵丸は,松山市高浜漁港を基地として夜間に釣島南西方の伊予灘の漁場で底曳き網漁に従事する,操舵室を船体中央部よりやや後方に備えたFRP製漁船で,A受審人(昭和50年8月四級小型船舶操縦士免許取得)が船長としてほか1人と乗り組み,操業の目的で,船首0.10メートル船尾1.85メートルの喫水で,平成17年2月13日16時00分同漁港を発し,漁場に向かった。
 A受審人は,17時30分由利島南東1.3海里ばかりの地点に達して底曳き網漁を開始し,その後伊予灘航路第8号灯浮標と同9号灯浮標との間の5海里ばかりの漁場で約4回底曳き網漁を行ってえび等を漁獲し,翌14日02時01分松山港外港2号防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から272度(真方位,以下同じ。)5.4海里の地点を発進し,針路を防波堤灯台の灯火に向首する092度に定め,機関を全速力前進にかけて8.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 A受審人は,発進後,操舵室内の舵輪後方の椅子に腰掛けて操舵操船にあたっていたところ,折からの微弱な北流により左方に偏位して防波堤灯台の灯火が船首わずか右に見えるようになり,興居島南岸に接航する089度の実効針路で続航し,02時27分防波堤灯台から276度2.0海里の地点に達したとき,船位が更に左方に偏位して防波堤灯台の灯火が興居島の島陰に隠れて見えなくなり同島南岸に著しく接近する状況となったが,大型船の陰になって同灯火が見えなくなったものと思い,直ちにGPSプロッターを見るなどして船位の確認を十分に行わなかったので,このことに気付かないで進行した。
 こうしてA受審人は,原針路,原速力のまま続航するうち,澄恵丸は,02時30分防波堤灯台から277度1.6海里の興居島南岸に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の東南東風が吹き,潮候は下げ潮の中央期にあたり,付近には微弱な北流があった。
 乗揚の結果,船底外板に擦過傷を生じたほか,プロペラ及び舵板に曲損を生じた。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,興居島南岸を接航して松山市高浜漁港に帰航する際,船位の確認が不十分で,同島南岸に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,興居島南岸を接航して松山市高浜漁港に帰航する場合,同岸に著しく接近しているかどうか判断できるよう,GPSプロッターを見るなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,大型船の陰になって防波堤灯台の灯火が見えなくなったものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,興居島南岸に著しく接近して同島への乗揚を招き,船底外板に擦過傷を生じさせたほか,プロペラや舵板に曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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