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平成17年門審第99号
件名

漁船第18海漁丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年1月30日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(清重隆彦)

副理事官
三宅和親

受審人
A 職名:第18海漁丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板に亀裂を伴う凹損,機関室浸水

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年9月4日03時30分
 福岡県能古島北西岸
 (北緯33度38.2分 東経130度18.0分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第18海漁丸
総トン数 19トン
全長 23.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 481キロワット

3 事実の経過
 第18海漁丸(以下「海漁丸」という。)は,いか一本つり漁に従事するFRP製漁船で,昭和62年10月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人ほか1人が乗り組み,操業の目的で,船首0.7メートル船尾2.5メートルの喫水をもって,平成17年9月3日14時30分長崎県千尋藻漁港を発し,18時00分ごろ福岡県沖ノ島北西方の漁場に至り,19時30分ごろから操業を開始したものの,その後,台風14号が接近中である旨の気象情報を入手したことから,やりいか約5キログラムを獲ったところで操業を打ち切り,22時00分同台風避難のため同県博多漁港に向けて発進した。
 これより先,A受審人は,同月2日23時ごろ千尋藻漁港に入港し,雑用を済ませて4時間ばかり休息をとり,翌3日08時ごろから,数日前に衝突事故を起こした僚船の事後処理を手伝った後,前示時刻に同漁港を発して漁場までの航海当直に就き,漁場到着後は操業に従事し,漁場発進後も航海当直に就いていたので,睡眠不足気味であった。
 発進後,A受審人は,機関を全速力前進に掛けて9.0ノットの対地速力で,波が出始めて船体が動揺する状況のもと,舵輪後方に立って見張りに当たり,自動操舵によって福岡湾口に向けて南下した。
 A受審人は,翌4日02時54分シタエ曽根灯浮標から329度(真方位,以下同じ。)1.5海里の地点に達したとき,船体の動揺が幾分軽減されたので,操舵室内後部にある板敷き床に腰を降ろした姿勢をとって目視により見張りに当たっていたところ,睡眠不足気味であったことから眠気を覚えたが,港が近いのでなんとか我慢できるものと思い,休息中の甲板員を昇橋させて2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 03時16分A受審人は,残島灯台から318度2.2海里の地点に至り,針路を143度に定めたとき,なおも眠気を感じていたが,依然として居眠り運航の防止措置をとることなく進行した。
 A受審人は,いつしか居眠りに陥り,03時24分転針予定地点に達したものの,このことに気付かず,転針せずに続航中,03時30分残島灯台から254度400メートルの地点において,海漁丸は,原針路,原速力のまま能古島北西岸に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力3の北東風が吹き,潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果,船底外板に亀裂を伴う凹損を生じて機関室に浸水した。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,台風避難の目的で漁場から博多漁港に向けて南下する際,居眠り運航の防止措置が不十分で,能古島北西岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,単独の船橋当直に就き,台風避難の目的で漁場から博多漁港に向けて南下中,睡眠不足気味で,眠気を覚えた場合,居眠り運航とならないよう,休息中の甲板員を昇橋させて2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,港が近いのでなんとか我慢できるものと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥り,予定の転針地点を航過したことに気付かないまま進行し,能古島北西岸への乗揚を招き,船底に亀裂を伴う凹損を生じ,機関室に浸水させるに至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して,同人を戒告する。





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