(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年5月29日00時10分
香川県粟島北東方沖合
(北緯34度16.9分 東経133度39.5分)
2 船舶の要目
船種船名 |
モーターボートレナ |
総トン数 |
2.4トン |
全長 |
8.87メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
62キロワット |
3 事実の経過
レナは,船体中央部に操縦室を備え,レーダーを装備していないFRP製モーターボートで,A受審人(平成15年7月二級小型船舶操縦士免許(5トン限定)取得)が1人で乗り組み,友人2人を同乗させ,魚釣りの目的で,船首0.1メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,同17年5月28日18時30分香川県詫間港を発し,19時00分二面島灯台から240度(真方位,以下同じ。)400メートルの地点で錨泊して釣りを行い,翌29日00時00分同地点を発進して帰途についた。
ところで,前示釣り場から詫間港に至るには,同港北西方の粟島の沿岸に沿って時計回りに航行するもので,A受審人は,同海域の昼間航行の経験が何度もあり,同島北東端の矢倉鼻沖合200メートルばかりのところに矢倉石と称する海面上高さ3.9メートルの水上岩及び周辺に浅所が存在し,同石付近には航路標識や灯火などがないことを十分に承知していたが,夜間航行は初めてであった。
発進したときA受審人は,針路を151度に定め,機関を全速力前進から少し減じた回転数毎分2,800にかけ,15.0ノットの対地速力で,法定の灯火を表示して,手動操舵により進行した。
A受審人は,備讃瀬戸南航路を横断したのち,00時03分二面島灯台から168度1,300メートルの地点に達したとき,針路を矢倉鼻北東方沖合に向けることとしたが,矢倉石に接近すればそれを視認して避航できるものと思い,矢倉石から十分に離れて航行できるよう,備讃瀬戸南航路第3号灯浮標の灯光を目標として同航路の南側をこれに沿って東行し,詫間町の明かりを確認したのち右転して南下するなど,適切な針路を選定することなく,105度に転じて続航した。
こうして,A受審人は,矢倉石に向首する針路となって進行し,00時10分わずか前正船首至近に同石を視認し,左舵をとったが効なく,レナは,00時10分上新田港1号防波堤灯台から026度850メートルの地点で,矢倉石北側至近の浅所に,船首を075度に向け,原速力のまま乗り揚げ,これを乗り切った。
当時,天候は晴で風はなく,潮候は上げ潮の中央期で,付近に弱い西流があり,視界は良好であった。
乗揚の結果,船尾部船底外板に亀裂,プロペラ及び同シャフトに曲損などを生じたが,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,香川県二面島西方沖合の釣り場から同県詫間港に帰航するにあたり,粟島矢倉鼻沖合に向け転針する際,針路の選定が不適切で,同鼻沖合に存在する矢倉石に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,香川県二面島西方沖合の釣り場から同県詫間港に帰航するにあたり,粟島矢倉鼻沖合に向け転針する場合,同鼻沖合の夜間航行は初めてで,付近に矢倉石が存在することを知っていたのであるから,同石から十分に離れて航行できるよう,備讃瀬戸南航路第3号灯浮標の灯光を目標として同航路の南側をこれに沿って東行し,詫間町の明かりを確認したのち右転して南下するなど,適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに,同人は,矢倉石に接近すればそれを視認して避航できるものと思い,適切な針路を選定しなかった職務上の過失により,同石に向首進行して乗揚を招き,船尾部船底外板に亀裂,プロペラ及び同シャフトの曲損などを生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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