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平成17年神審第107号
件名

モーターボートマステラス乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年1月26日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(村松雅史)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:マステラス船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板擦過傷及び左舷船尾外板破口並びにプロペラ曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年6月4日16時05分
 兵庫県姫路港
 (北緯34度45.6分 東経134度35.8分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートマステラス
全長 8.67メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 165キロワット

3 事実の経過
 マステラスは,船体中央に操舵室を設けたFRP製プレジャーモーターボートで,平成17年2月に小型船舶操縦(一級,特殊)免許証の交付を受けたA受審人が船舶所有者から借り受けて船長として単独で乗り組み,同乗者4人を乗せ,釣りなどの目的で,船首0.4メートル船尾0.7メートルの喫水をもって,平成17年6月4日10時00分兵庫県姫路港飾磨区の係留地を発し,同県家島周辺で釣りを行ったのち,家島港に寄せ,15時40分同港を発して帰途に就いた。
 ところで,姫路港網干浜南方水域においては,平成15年9月1日から平成18年8月31日まで網干沖埋立事業護岸築造工事が行われ,網干防波堤灯台から228.5度(真方位,以下同じ。)635メートルの網干浜南護岸上の地点を北東端とし,同地点から164度800メートル,以下順次266度825メートル,344度685メートル及び074度140メートルの網干浜西護岸上の各地点を結んだ線で囲まれる台形状の航泊禁止区域が設定されており,同区域内南西部には,海面近くまで埋め立てられた基礎捨石工事箇所(以下「埋立工事箇所」という。)があり,航泊禁止区域の周囲には,標示用標識として,黄色灯浮標が11個設置されていた。
 この航泊禁止区域については,海図W134B,同W1113及び事業者作成のリーフレットによって一般に周知されていた。
 一方,A受審人は,係留地から家島諸島周辺に至る海域を数回操船して往復していたが,今まで姫路港内を何度も航行していたから大丈夫と思い,最新の海図W134Bなどにより,同港内の水路事情について,十分に調査を行っていなかった。
 A受審人は,播磨灘北西部を北上して姫路港南方沖合に接近し,同港の陸岸や建物を見て,自船が係留場所よりも東方に来ているのではないかと不安になり,一旦,針路を西方にとって陸上の物標により船位を確かめることとし,16時02分少し前網干防波堤灯台から200度1,660メートルの地点において,針路を290度に定め,機関を半速力の13.5ノットの対地速力として手動操舵によって進行した。
 16時04分A受審人は,網干防波堤灯台から228度1,870メートルの地点に達したとき,右舷前方に網干臨海大橋が見えたので係留地より西方にいることがわかり,係留地に向かうよう針路を068度に転じたところ,黄色灯浮標で囲まれた航泊禁止区域に向けて続航する状況となったが,水路調査をしていなかったので,このことに気付かないまま進行した。
 こうして,マステラスは,16時05分少し前航泊禁止区域を標示する黄色灯浮標間を通過して同区域に進入し,原針路,原速力で続航中,16時05分網干防波堤灯台から223度1,470メートルの地点で,埋立工事箇所に乗り揚げた。
 当時,天候は雨で風力4の南風が吹き,潮候は上げ潮の初期で,視界は1海里強であった。
 乗揚の結果,船底外板に擦過傷及び左舷船尾外板に破口を生じ,プロペラが曲損したが,のち修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,兵庫県姫路港において,係留地に向けて航行する際,水路調査が不十分で,航泊禁止区域に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,兵庫県姫路港において,係留地に向けて航行する場合,同港内には航泊禁止区域があったから,同区域に進入しないよう,最新の海図W134Bなどにあたり,水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,今まで姫路港内を何度も航行していたから大丈夫と思い,同港内の水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,航泊禁止区域に向けて進行し,埋立工事箇所への乗揚を招き,船底外板に擦過傷及び左舷船尾外板に破口を生じさせ,プロペラを曲損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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