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平成17年神審第104号
件名

モーターボートケルンボーン乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年1月16日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(村松雅史)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:ケルンボーン船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
推進器及びキール一部に亀裂を伴う損傷を生じ,浸水して転覆

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は,針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年8月12日19時30分
 福井県小浜湾北方
 (北緯35度32.9分 東経135度39.8分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートケルンボーン
全長 6.43メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 36キロワット

3 事実の経過
 ケルンボーンは,船体中央より少し前部に操縦席を設け,魚群探知機のみを装備したFRP製プレジャーモーターボートで,平成10年7月に四級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が船舶所有者から借り受け,同受審人が船長として単独で乗り組み,知人の家族,大人3人及び子供5人を乗せ,海水浴などの目的で,船首尾とも0.2メートルの喫水をもって,同17年8月12日11時00分福井県小浜漁港甲ケ崎地区を発し,同県鋸埼西方2,600メートルの砂浜で海水浴やバーベキューを行ったのち,19時20分同砂浜沖を発して,帰途に就いた。
 ところで,鋸埼付近には,沖合300メートル近くまで水上岩及び干出岩が点在するなど険礁域が張り出し,A受審人は,このことを知っており,鋸埼沖合を通航するときは,険礁域に近づかないよう,鋸埼から約300メートル離すようにして航行していた。
 A受審人は,発進後,発進地点から1,100メートル北東方の髻(もとどり)島と陸岸から約300メートル張り出した水上岩群との間の幅約200メートルの水路に向けて針路を037度(真方位,以下同じ。)に定め,11.0ノット(対地速力,以下同じ。)の速力で進行し,前示水路を通過したのち,徐々に鋸埼北方沖合に向け,右舵をとって続航した。
 19時29分A受審人は,鋸埼灯台を右舷正横約350メートルに航過し,同時29分少し過ぎ同灯台から004度330メートルの地点に達したとき,水着姿のままで寒そうな同乗者のため,早めに小浜漁港に到着するよう,少しでも航程を短縮しようと思い,鋸埼から十分に離れた針路を選定することなく,針路を134度に転じ,12.0ノットの速力に増速したところ,干出岩が点在する険礁域に向首する状況となっていることに気付かないまま,原針路,原速力で進行中,19時30分鋸埼灯台から060度250メートルの地点において,ケルンボーンは,険礁域の海面下に没していた干出岩に乗り揚げ,これを擦過した。
 当時,天候は曇で風はほとんどなく,潮候は高潮時で,日没は18時51分であった。
 乗揚の結果,推進器及びキールの一部に亀裂を伴う損傷を生じ,航行不能となり,やがて浸水して転覆したが,乗船者は来援した巡視艇に全員救助された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,福井県小浜漁港に向け帰港する際,鋸埼北方沖合において,針路の選定が不適切で,鋸埼東方の干出岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,福井県小浜漁港に向け帰港する場合,鋸埼沖合には険礁域が存在するから同険礁域に接近しないよう,鋸埼から十分に離れた針路を選定すべき注意義務があった。しかるに,同人は,水着姿のままで寒そうな同乗者のため,早めに小浜漁港に到着するよう,少しでも航程を短縮しようと思い,鋸埼から十分に離れた針路を選定しなかった職務上の過失により,鋸埼灯台を右舷正横に航過して小浜漁港に向けて転針し,鋸埼東方の険礁域にある海面下に没していた干出岩に向首進行して乗揚を招き,推進器及びキールの一部に亀裂を伴う損傷を生じさせ,航行不能となる事態を招き,その後浸水して転覆させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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