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平成17年横審第70号
件名

貨物船美豊丸灯浮標衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年3月24日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(岩渕三穂)

理事官
小須田 敏

受審人
A 職名:美豊丸船長 海技免許:四級海技士(航海)

損害
美豊丸・・・船橋前の右舷側外板に擦過傷
灯浮標・・・防護枠,櫓(やぐら)フレーム等に曲損等

原因
操船不適切(船間距離を広げる措置不適切)

裁決主文

 本件灯浮標衝突は,同航船との船間距離を広げる措置が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年11月12日20時10分
 伊良湖水道
 (北緯34度33.8分 東経136度59.6分)

2 船舶の要目
船種船名 貨物船美豊丸
総トン数 498トン
全長 75.22メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 美豊丸は,鋼材を主な積荷とし,専ら太平洋側日本沿岸諸港間の運航に従事する船尾船橋型鋼製貨物船で,A受審人ほか3人が乗り組み,空倉で,船首2.0メートル船尾4.0メートルの喫水をもって,平成16年11月12日16時50分名古屋港を発し,大阪港に向かった。
 ところで,美豊丸では船橋当直を,A受審人及び一等航海士の2人による単独の5時間交替制としており,当日名古屋出航から22時まで及び03時から08時までが同受審人の当直時間となっていた。
 A受審人は,出航操船に引き続き単独の船橋当直に当たり,正規の灯火を掲げ,操舵室中央に立って操舵輪を握り,18時32分野間埼灯台から247度(真方位,以下同じ。)3.0海里の地点で,針路を136度に定め,機関を全速力前進にかけ,11.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 19時41分A受審人は,伊勢湾第3号灯浮標の北西方0.6海里に当たる,神島灯台から335度2.9海里の地点に達したとき,伊良湖水道航路通航時刻調整のために待機していたとみられる大型船が,入航の態勢で速力10ないし12ノットで航行し始めたのを認め,同船の右舷後方に付いて進むこととし,速力を5.0ノットの微速力前進として続航した。
 19時48分A受審人は,伊勢湾第3号灯浮標を左舷方300メートルほどに見て航過したとき,中山水道方面から南下した小型船が,左舷船尾方から自船を追い抜く態勢で接近するのを認めて進行し,20時00分少し前神島灯台から354度1.55海里の地点で,伊良湖水道航路に入航し,航路に沿う134度に転針して引き続き同じ速力で続航した。
 A受審人は,伊良湖水道航路に入航したとき,前示大型船を左舷船首方2,500メートルほどに,前示小型船を左舷船尾方650メートルほどにそれぞれ認め,また,右舷船首方に丸山出シ灯浮標の灯火を認めて引き続き5.0ノットの速力で続航し,20時03分神島灯台から002度1.35海里の地点に達したとき,同小型船の右舷船首が自船の左舷船尾と並航し,その後同船との進路が少し交差していたことから,横の船間距離が徐々に縮小して20メートルほどとなったが,機関を使用して同船を早めに航過させるなどの措置をとることなく,徐々に針路を右に転じて続航した。
 A受審人は,徐々に針路を右に転じ,148度の針路となって続航し,そのまま進行すると丸山出シ灯浮標に著しく接近する状況であったが,まだ少しくらいなら右転しても同灯浮標に接触することはないものと思い,前示小型船との船間距離に気を取られていたのでこのことに気付かず,20時10分わずか前同船が左転したのを認めたとき,右舷船首至近に同灯浮標の灯火を視認して左舵をとったが及ばず20時10分神島灯台から021度1,710メートル地点において,美豊丸は,ほぼ同じ針路,速力でその船橋前の右舷側外板が,丸山出シ灯浮標に衝突した。
 当時,天候は晴で風力3の北西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期で,付近には約1ノットの南東流があった。
 A受審人は,伊良湖水道航路を通過したのち海上保安部に衝突の事実を通報し,事後の措置をとった。
 衝突の結果,船橋前の右舷側外板に擦過傷を生じ,丸山出シ灯浮標の防護枠,櫓(やぐら)フレーム等に曲損等を生じたが,のち同灯浮標は代替修理された。

(海難の原因)
 本件灯浮標衝突は,夜間,先航船に続いて伊良湖水道航路を南東進中,左舷側を追い抜く態勢で接近する同航船との船間距離を広げる際,機関を使用するなどの措置をとらずに右転し,丸山出シ灯浮標に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,伊良湖水道を南東進中,左舷側を追い抜く態勢で接近する同航船との船間距離を広げようとする場合,右舷船首方に丸山出シ灯浮標を認めていたから,右転して同灯浮標に著しく接近することとならないよう,機関を使用して同航船を早めに航過させるなどの措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,まだ少しくらいなら右転しても丸山出シ灯浮標に接触することはないものと思い,機関を使用するなどの措置をとらなかった職務上の過失により,同灯浮標との衝突を招き,美豊丸の右舷側外板に擦過傷を,同灯浮標の防護枠等に曲損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図1
(拡大画面:11KB)

参考図2
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