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海難審判庁裁決録(平成18年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配付
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




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平成17年広審第65号
件名

旅客船フェリーふくおか2貨物船センチュリー ホープ衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年1月20日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(島 友二郎,川本 豊,道前洋志)

理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:フェリーふくおか2船長 海技免許:三級海技士(航海)
B 職名:フェリーふくおか2一等航海士 海技免許:二級海技士(航海)(履歴限定)

損害
フェリーふくおか2・・・左舷船尾車両甲板及び機関室外板の凹損,プロペラ先端部の曲損
センチュリー ホープ・・・バルバスバウ及び船首部外板の凹損

原因
フェリーふくおか2・・・台風避難のために錨泊する際,機関用意の状態を維持しなかったこと

主文

 本件衝突は,フェリーふくおか2が,台風避難のために錨泊する際,機関用意の状態を維持せず,強風を受けて走錨し,風下側に錨泊していたセンチュリー ホープに向かって圧流されたことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年8月30日21時19分
 瀬戸内海 燧灘
 (北緯34度11.8分 東経133度27.2分)

2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 旅客船フェリーふくおか2 貨物船センチュリー ホープ
総トン数 9,730トン 9,978トン
全長 167.00メートル 137.03メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 19,858キロワット 4,633キロワット
(2)設備及び性能等
ア フェリーふくおか2
 フェリーふくおか2(以下「ふくおか2」という。)は,平成14年10月に竣工し,可変ピッチプロペラと1,025キロワットのバウスラスターを装備した2機2軸2舵の船首船橋型旅客船兼自動車渡船で,関門港新門司区と大阪港間の定期航路に就航していた。
 船体は,乗用車スペースである第1及び第2甲板,トラックスペースである第3及び第4甲板,客室スペースである第4,第5及び第6甲板,乗組員スペースである第7甲板,並びに最上甲板である第8甲板を有し,当時,船体中央部付近の喫水から第8甲板までの高さは,約23メートル(m)で,風圧面積が非常に大きい船型であった。
 操舵室は,第7甲板にあって,同室中央に操舵スタンドが,その両側前方にARPA機能付きの第1及び第2レーダーが,右舷側に機関やバウスラスターの遠隔操縦装置及び電子チャートが表示される運航支援装置などを備えた操船コンソールが,左舷側後部にチャートテーブル及びGPS受信機等がそれぞれ設置されていた。
 大錨は,重量4,838キログラムのAC14型ストックレスアンカーで,錨鎖は,直径62ミリメートル,1節の長さ25mで,両舷に各12節が装備されていた。
 海上試運転成績書写によれば,速力は,主機出力85パーセント,同回転数毎分160.6,翼角28.4度として25.11ノットで,旋回性能は,操縦性資料写によれば,主機出力4/4で,舵角35度をとったとき,縦距及び最大横距が,左旋回ではそれぞれ549m,747m,右旋回では,それぞれ569m,815mで,停止性能は,全速力後進を発令すると,船体停止までの距離及び時間は,それぞれ997m及び2分43秒であった。
イ センチュリー ホープ
 センチュリー ホープは,2001年高知県で建造された船尾船橋型貨物船で,船橋前方に貨物倉4個及び各倉にデリッククレーンを有していた。また,船橋内には操舵スタンド,レーダー2台,GPS,音響測深儀,ドップラーソナー,汽笛及びVHFなどが装備されていた。
 操縦性能書写によれば,最大速力は,機関回転数毎分186のときに約14.5ノットで,旋回性能は,旋回径が左旋回では1,100フィートで,1回転するのに4.8分を,右旋回では同1,260フィート,同5.1分をそれぞれ要し,満船状態での停止性能は,全速力後進を発令すると,船体停止までの距離及び時間は,それぞれ6,310フィート及び7.4分であった。

3 平成16年台風16号の動向
 平成16年台風16号(以下「台風」という。)は,8月19日マーシャル諸島付近で発生し,23日にサイパン島の西で大型で猛烈な勢力となった。27日以降日本の南海上をゆっくりと北西に進み,29日夜には九州の南海上で進路を北向きに変え,30日09時には中心気圧950ヘクトパスカル,最大風速毎秒40m,暴風半径東側260キロメートル(km),西側170km,強風半径東側600km,西側410kmと大型で強い勢力となり,09時30分ころ鹿児島県串木野市付近に上陸して九州を縦断した。
 17時過ぎ中心気圧965ヘクトパスカルと強い勢力を維持したまま山口県防府市に再上陸して北北東に進み,夜には鳥取県沖の日本海に達し,次第に速度を速めて,強い勢力のまま能登沖を北東に進行した。その後,やや勢力を弱め,31日昼前に津軽海峡を通り,14時過ぎ北海道苫小牧市付近に再々上陸し,北海道を縦断して,オホーツク海で温帯低気圧に変わった。

4 事実の経過
 ふくおか2は,A,B両受審人ほか26人が乗り組み,空倉のまま海水バラスト1,500トンを積載し,船首5.12m船尾5.36mの喫水をもって,台風避難の目的で,平成16年8月30日10時40分大阪港を発し,燧灘の錨地に向かった。
 17時10分A受審人は,香川県円上島北方2海里付近の錨地に至り,讃岐三埼灯台(以下「三埼灯台」という。)から232度(真方位,以下同じ。)7.3海里の地点で右舷錨を投じ,錨鎖を10節延出したが,錨かきが悪く,走錨状態となったので一旦揚錨し,18時10分同灯台から230度7.3海里の地点で,錨泊中のセンチュリー ホープから南南西方に0.9海里離れた,水深20mのところに再度右舷錨を投じ,法定の灯火及び甲板上照明灯を点灯し,毎秒20mの南東風が吹く状況下,錨鎖を10節水面まで延出して錨泊を開始した。
 A受審人は,入手した台風情報で,台風の接近に伴い風向が南東から南西に変化し,更に強くなることが予想されたが,錨鎖を10節延出しているので大丈夫と思い,走錨したとき,直ちに機関を使用して走錨防止措置がとれるよう機関用意の状態を維持することなく,機関終了とし,航海士及び甲板手の2名による4時間交替の守錨当直体制として,走錨検知ができるよう,GPSの離脱警報を0.2海里に設定するように指示し,降橋して自室で休息した。
 19時45分B受審人は,昇橋して前直の二等航海士と交替し,3海里レンジとしたレーダーの可変距離マーカー2本を江ノ島及び円上島の南端にそれぞれ合わせ,5分ごとにマーカーのずれ具合を見て,船位の確認と走錨の有無を監視しながら,守錨当直に当たった。
 21時ごろ風向が南西に変わり風力9まで増勢し,21時10分ふくおか2は船首をほぼ南東に向けて走錨を始め,そのころ,B受審人は,風勢の強まりと船首の振れ回りが止まったことに気付いて不審に思い,レーダーの可変距離マーカーのずれ具合を見るなどして,走錨の有無の確認を開始した。
 21時12分A受審人は,風の音が強まったことに気付いて昇橋したところ,左舷後方のセンチュリー ホープに著しく接近しているのを認めて,走錨していることに気付いたが,機関用意の状態を維持していなかったので,直ちに機関を使用して走錨防止の措置をとることができず,21時15分機関用意を令したものの,用意ができず,左舷後方に錨泊中のセンチュリー ホープに向かって圧流が続き,21時19分三埼灯台から233度6.6海里の地点で,ふくおか2は,135度を向き,その左舷船尾が,センチュリー ホープの船首に後方から45度の角度で衝突した。
 当時,天候は雨で最大瞬間風速毎秒約30mの突風を伴う風力10の南西風が吹き,香川県全域に大雨,洪水,暴風,波浪,高潮警報が発表されていた。
 A受審人は,機関用意ができた21時20分,機関を微速前進にかけて錨鎖を巻き始め,23時40分揚錨を完了して移動を開始し,翌31日01時40分高井神島灯台から043度5.0海里の地点に左舷錨を投じ,錨鎖10節を水面まで延出して再錨泊し,機関を使用して走錨を防止した。
 また,センチュリー ホープは,フィリピン共和国国籍を有するC船長ほか同国人船員21人が乗り組み,鋼材1,466トンを積載し,船首4.70m船尾5.00mの喫水をもって,台風避難の目的で,30日10時25分水島港を発し,燧灘の錨地に向かった。
 13時27分C船長は,前示衝突地点に至り,左舷錨を投じて錨鎖を7節まで延出し,日没後には法定の灯火及び甲板上の照明灯を点灯して錨泊した。
 21時10分C船長は,ふくおか2が走錨を始めたのを認め,汽笛の吹鳴及びサーチライトの照射などにより警告信号を発し,衝突の少し前機関を全速力後進にかけたが,センチュリー ホープは180度を向いたとき,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,ふくおか2は,左舷船尾車両甲板及び機関室の外板に凹損,及びプロペラ先端部に曲損等を,センチュリー ホープは,バルバスバウ及び船首部外板に凹損等をそれぞれ生じたが,のちいずれも修理された。

(本件発生に至る事由)
ふくおか2
1 錨鎖12節中の10節を延出したこと
2 センチュリー ホープの南南西0.9海里の地点に錨泊したこと
3 GPSの離脱警報を0.2海里に設定したこと
4 機関用意の状態を維持しなかったこと
5 B受審人が5分に1度の割合で走錨の有無を監視し,船首の振れ回りが止まったことに気付いて走錨の有無の確認を開始したこと
6 走錨開始2分後に船長が昇橋したこと
7 走錨開始5分後に機関用意を令し,同10分後に機関用意ができたこと

(原因の考察)
 本件は,ふくおか2が,機関用意の状態を維持していれば,強風を受けて走錨したとき,直ちに機関を使用して走錨防止措置がとれ,発生を回避できたものと認められる。
 したがって,A受審人が,錨鎖を10節延出しているので大丈夫と思い,機関用意の状態を維持していなかったことは,本件発生の原因となる。
 A受審人が,装備する錨鎖全量12節を延出せずに10節としたこと,センチュリー ホープの南南西0.9海里の地点に錨泊したことは,いずれも本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これらは海難防止の観点から是正されるべき事項である。
 A受審人が,GPSの離脱警報を0.2海里に設定したこと,並びにB受審人が,5分に1度の割合で走錨の有無を確認したこと,船首の振れ回りが止まったことに気付いて走錨の有無の確認を開始したこと,及び同確認作業中にA受審人が昇橋し,機関用意を発令したことは,いずれも本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件発生の原因とならない。

(海難の原因)
 本件衝突は,ふくおか2が,夜間,瀬戸内海燧灘において,台風避難のために錨泊する際,機関用意の状態を維持せず,強風を受けて走錨したとき,直ちに機関を使用して走錨防止措置をとることができず,風下側に錨泊していたセンチュリー ホープに向かって圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,燧灘において,台風避難のため錨泊する場合,台風の接近に伴い,風勢が強まることが予測できたのであるから,機関用意の状態を維持すべき注意義務があった。しかるに,同人は,錨鎖を10節延出しているので大丈夫と思い,機関用意の状態を維持しなかった職務上の過失により,強風を受けて走錨したとき,直ちに機関を使用して走錨防止措置をとることができず,風下側に錨泊していたセンチュリー ホープに向かって圧流されて衝突を招き,ふくおか2の左舷船尾車両甲板及び機関室の外板に凹損,及びプロペラ先端部に曲損等を,センチュリー ホープのバルバスバウ及び船首部外板に凹損等をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人の所為は,本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図1
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参考図2
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