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4)調査結果
(1)坂井マリン株式会社
■坂井マリン(株)について
・前身は漁網販売会社である坂井漁網。平成5年6月設立
・資本金1,000万円、年商1億円
・従業員数は7人(坂井漁網との兼任を含む)
・公共の処理場から漁網の処分についての相談を受けたことがきっかけとなり、リサイクルを開始、当初は、ボランティアで坂井漁網が販売した網を回収し、産廃業者に運んでいた。
・平成17年1月より、リサイクル事業を開始。
■技術の概要について
・回収した漁業系廃資材を手選別により素材毎に分別し、切断・破砕・圧縮処理している(この手選別こそが最大のポイントであり、ノウハウとなっている)
・処理後の資材は、素材の質や状態に応じてリサイクル素材(マテリアルリサイクル)や燃料(サーマルリサイクル)として有効に活用
・マテリアルリサイクルの場合、インゴットや3〜5cmのチップにして再生業者に売却
・サーマルリサイクルの場合は、産廃処理費としての費用を支払い、製鉄会社(住金鉱化(株))に引き取りを依頼
・選別により、リサイクルが不可とされたものについては、焼却・埋立処分している(全体の3〜4割程度)
・廃FRP船についても、陸揚げから収集・運搬、リサイクル処理まですべてを一貫して請け負っている
■特長について
・あらゆる漁業系廃資材のリサイクル体制を確立
・手選別(目分別)による素材選別体制を確立
・針金入りの網や鉛入りのロープもそのまま引き受け、社内で分別。回収したワイヤーは買い取り業者に売却
■処理コストについて
・プラント建設費に約1億円(これまで少しずつ拡張)
・施設の維持管理費(人件費を除く)として年間約5,000万円
・年間処理量(2005年)は700トン(FRP船を含む。個別には不明)
■事業採算性等について
・ロープ、漁網の処理費用は50円/kg(輸送費別)
・FRP船については、船の長さにより決定(尺6,000〜10,000円で、油やビルジ抜きを含む)
・サーマルリサイクルでは、回収・処理資材を製紙会社に売却することもできるが、コストバランス(運搬コストがかさむ)という点で不利なため、現状は、製鉄会社に引き取りを依頼している
・現在は、PETやタイヤ、農業ごみなど、あらゆる産業廃棄物の処理を引き受けており、リサイクル部門だけでも十分採算がとれている
■再生製品の性能等について
・再生製品はヤツイトレーディング(海南市)を通じて海外に売却(販売先は常に複数を確保。コストバランス等をみて適宜、売却先を選定している)
■環境・安全面について
・特別な環境対策は実施していないが、現地での荷受けにあたって、EM剤を用いた防臭対策を行っている
■適用条件について
・漁業系の廃資材なら幅広く受け入れるが、臭いのひどいもの、防草加工したもの(薬品が付着したもの)は不可
・リサイクル方法については、素材の質とコストのバランスを勘案して決めている
■業務展開等について
・営業エリアとしては、和歌山のほか、徳島、大阪、高知、三重、岩手、宮城などであるが、近場で安定的に発生するものに重点を置いて対応している
・設備の稼働実績として、夏場に多く、冬場(12〜2月)に少ないという特長がある(特に東北地方)
■評価・表彰実績、特許の取得について
・なし
■環境への取り組み(環境ISO: ISO14001)について
・未取得(様子見)
■その他(リサイクル事業の展開を図っていく上での課題)
・一定の処理量を確保し続けることが最大の課題
・行政側に漁業系廃棄物処理の現状を理解している部署がない(自治体によって対応がバラバラ)
・漁業関係者の意識改革:廃棄物処理(リサイクル)にもお金を出す、という意識を持ってもらうようにする
 
<現地写真等>
 
坂井マリン(株)和歌山リサイクルセンター
 
中間処理設備
 
多目的油圧切断機
 
難処理物用一軸破砕機
 
高圧圧縮梱包機
 
リサイクルフロー


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