睡眠の問題と落ち着きのなさは密接で治療という事になるのですが薬を使うのを皆さんが嫌がられます。光治療は入院をしないと出来ませんので簡単なのはメラトニン剤を二、三週間服用して頂くものです。今まで眠れていなかった子が昼寝まで出来るようになり身長や体重の伸びも違ってきますしDQやIQも違ってきます。短期間にも関わらず睡眠不足が本来の子供の脳の発達を抑制していたのだと思わざるを得ない結果が見られ、二十くらい値が違ってくる事もあります。三歳半の子供は夜間保育から帰る際に起こされるので睡眠障害になり自閉症やパニックが起こっていたのですが、ほんの数ヶ月間治療したらどこがどう自閉だったのかというくらい改善しました。それくらい睡眠の量や質、リズムといったものは重要で子供の脳の発達に影響を与えるという事なのです。睡眠不足と学力低下の関係は百マス計算で有名な陰山先生が以前から言われていた事ですが、前頭葉をしっかり刺激するとよいという研究です。七時間睡眠を取っている子供達の成績はやはりよくて十時間以上と五時間以下は問題があるという結果が出ています。日本の高校生のうち学校以外で勉強をしない人は四割五分もいて授業中にぼんやりしているのは七割もいるそうです。それから十二時過ぎに寝るのは六割強、東京の中学生は七割くらいいるそうです。通学に時間のかかる人もいるでしょうから七、八時間寝ないとやっていけない人はどこかで問題が起こると思います。
夕方帰宅してからすぐに寝て夜中に起きてチャットをしている子供も増えていて、そのまま徹夜して学校に行くような事もあるようです。早寝早起きで朝ご飯をしっかりとっている人は礼儀正しく成績もよいのですが遅寝遅起きで朝食抜きの人や一度寝てから朝方にもう一度寝るタイプはあいさつもしないし学力もいまいちという子が多いようです。夜型の人は朝起きた時に気分が悪くてまだ寝かせてくれという状態でとてもご飯どころではなくなるので睡眠が先で次にご飯なのです。学校に行けなくなった人達は睡眠障害がありますし色々な自律神経症状があります。そして仮眠型になってそれまでは睡眠時間を削ってがんばっていたのに十時間睡眠になって朝、起きられなくて勉強も手につきません。私は勉強や運動がバリバリ出来て学校に行かないという人にあった事がありません。自分で起きてがんばろうと思うけれど駄目だという子は何とか学校に戻してやらないとPTSD(外傷後ストレス障害)になります。だから「がんばった末の疲労だよ、怠けや弱いという事ではないのだよ」と言ってやらなければなりません。そのためにも見ている限りでは分かりませんので二週間の睡眠表をつけて頂き、自分を守るためには勉強も必要ですので高卒認定試験(旧大検)を受けて自分のやりたい学問をさせるのです。それをやらないで家の中でゴロゴロして元気で不登校しているというのはありえないのです。何とか学校に引きずり出してやろうという考え方は間違っています。もし学校に返したいと思うのならばしっかりとした復帰プログラムを作る必要があるのです。沖縄の方の例ですが夜九時から元気になる、月に二、三日学校を休む子がいました。一年では三十六日のペースになりますので不登校の傾向です。寝つきが悪くて夜中、何度が目を覚まし身体がだるくて朝は元気がなく色々な不平不満を言うので両親は学校で何かあったのではないかと学校側と話をしたのですがよく分からない、そこで私が「家族で一時間早く寝て下さい」と申し上げましたらすぐに改善していきました。三つのS(睡眠、性格、食事)は過労死の会の方が言っていたのですが私は不登校も同じように疲労困憊だと思ってきました。何か問題が起こった時には家族全員で一時間でも早く寝て頂くとしばしば解決してしまう事があります。しかし中学生くらいになって皆で一緒に寝ましょうとやるのは無理が出てきますし、本人だけ早く寝なさいというのも家族が楽しく過ごしているのが気になって駄目です。学校には行けていて自立神経症状(頭痛、腹痛、だるい、疲れる)や微熱は発病で危険信号です。それから帰宅と同時に寝てしまうのも発病と思って下さい。この時点で一時間早く寝て睡眠リズムを作るだけで問題は十分解決するはずです。部活動でトラブルのあった子はひと月後には既に朝、起きる事が出来ませんでした。この状態になると復帰するのに数ヶ月から数年は要します。がんばっていると思われてしまっている訳ですから寝ないでガッツがあっていい、とは言えないのです。がんばりと過労は裏表ですから有名なスポーツ選手の中には疲労が蓄積している方もいるはずです。そして生物時計の固定化と睡眠不足によるホメオタス機構、生命維持装置のようなものの破綻が起こってしまいます。会社勤めをしても長続きしない、また遅刻をするといった若者は都会では相当数に上ると思います。それは怠けだとか自己管理のなさだとか言われていますが実は大きな難治性の現代病で頭の中の時計機構が崩れてしまったという現象が起こっている訳ですから上手く行く時間というものが短くなってしまいフリーターなどになって決まった時間に起きてがんばるという事が出来なくなるのです。その人達をどうやって元気にするか、それに今、必死になっているのです。私は世界中の若者が元気になってもらうための施設を作りたいと思っています。睡眠不足、後退症が起こってしまいますとなかなか治りません。二時、三時にならないと眠れず十時間眠らないと起きられないという状態になります。もちろん社会生活が難しいので会社や学校を辞めたり留年したりしなくてはならないといった状態をずっと繰り返してしまいます。本人達がこの状態は病的であると気がついてくれないと困るのです。「起きようと思ったら起きられます」と本人が言うので「じゃあ起きて行けよ」と言うしかないのですが起きられるのは非日常の釣りに行くとかデートがあるといった時なのです。しかし日常は起きられない、それは脳が情報によって動くからという説明しか今の段階では出来ないのです。小学生で〇.三から〇.四パーセント、中学生は二.六から二.八パーセント、高校生では四から五パーセント、大学生は七パーセントくらい存在するのではないかと思われます。しばらくは気合でがんばれるけれどどうしても続かないので一旦休んで再就職したり再就職出来なければ家の中にこもらざるを得なかったりするといった状況になるのです。
次に何故、十時間寝なくてはならないかという事についてお話しますと睡眠欠乏状態が起こった時にエネルギー消費の増加が重要な意味を持ってきます。普通は睡眠中にエネルギーを蓄えていく訳ですが睡眠中にエネルギーが出て行ってしまう、マイナスにはならないのかも知れませんが消費されてしまって朝、蓄積が見られないという睡眠になってしまっているのです。そして睡眠中のエネルギーの消費増大が問題になって睡眠時間が長くなってしまうという事に繋がるのです。長く寝ても十分なエネルギーの蓄積は出来ませんから朝、既に疲労感があって何のために寝たのか分からないといった不思議な睡眠になってしまいます。エネルギーの消費を何とか食い止めて細胞に留められるような治療法を考えなくてはならないと思います。深部体温を見ると脳の体温が上がってしまってリズムがなくなり、寝ていても脳の温度が下がらないのです。本当は心拍数も落ちてきてエネルギーを抑えるのだけれどもそれも上手く行かなくて消費されてしまうのだという状況があるようです。実は体温に関しての調査は行なってきたのですが寝ている時にエネルギーが逃げているのかどうかという事に関してはこれから調査を進めていかなくてはならない段階です。コルチゾールが一番高くなる時間は朝六時で活動性が支えられるのですが四時間もずれてしまえば上手く活動出来ない、だから午前中はぐったりとしていて午後から元気になってくるのです。日本の小学校の先生に聞くと午前中は駄目だとおっしゃいます。アメリカの高校の中には朝十時から授業を始めたところもあると聞いています。博多青松高校は一時から七時までの授業ですので競争率が八倍だと聞いています。フレックス制が必要な理由はここにあるのです。
子供達の体温リズムが平坦になった事で寝ていても脳が働いているような状況になってなかなか疲労が取れません。だから勉強が手につかなくて疲れやすくて根気が出てこない、「生きていくのがやっと」という状態が不登校の子供達なのです。だから凄まじい病気ではあるのですが外からは分からないので怠けていると思われてしまって一生、苦労していくというかわいそうな人達なのです。脳血流が落ちるとコリンという物質が脳内に溜まってきます。そしてワーキングメモリーを見る前頭葉の活動が落ちますので人が言った事を自分で咀嚼してまとめ外に出すという事が非常に難しくなってしまいます。認知力が落ちていくと知能指数が下がってきます。逆に認知力の高い人は興奮してしまって疲労感が非常に強いのです。これらは普通の病院に行って血液検査などをしても何も見つかりません。しかし専門科でこれらの機能をしっかりと見るとボロボロなのだと分かります。治療法の第一段階は壊れた時計機能のメリハリを取り戻す事で高照度光治療を行ないます。非常に基本的な時計の修正法です。光治療は四百から四百七十ナノメーターの青い光を当てるのですが、この光は松果体から出ているメラトニンの分泌を抑えるので時計を少し早める事が出来るのです。照射する事でバラバラだった時計が修復されていくのですが遺伝子を測定した後で何時、光を入れたらよいのかを考えてやらないと効果がありません。時計遺伝子を診るのには一人十万円もかかってしまうのですが副交感神経が残っていると効果は現れやすいです。三十時間で生活していた中学生は治療を行なった事でIQがひと月ちょっとの間に七十七から九十四に上がりました。IQテストの専門家に聞くと短時間に二回やったから覚えていて上がるという事はないのだそうでつまり元々、高いIQを持っているにも関わらず問題が起こったために知能低下の状態になってしまったと言えるのです。
学校や社会に復帰させるには三つの条件があります。「二十四時間のリズムに乗って生活が出来る事」、毎朝きちんと起きられなければなりません。次に「学力を補填しておく事」、授業についていける状態にしておかないと復帰しただけでは辛くなります。最後は「クラスの皆の視線を克服する」、周りが気になって固まってしまっていての復帰は無理です。これらを取り除くプログラムを組まないと元気になったから戻りなさい、いじめがなくなったから大丈夫ですよ、と言うだけでは無理なのです。いじめで受けた不安や緊張といった事で生態リズムが壊れてしまっている訳ですから、例えいじめがあっても元気があれば行く事は出来るのです。
ひきこもりと不登校は繋がっていると考えて頂いてよいと思います。ニートも意欲の問題があるので関係していると思います。そして糖の代謝がおかしくなり血糖値が上がってきてストレス性の糖尿病のようになります。先程、血液では何も分かりませんよと申しましたが血清のピルビン酸が高い人が不登校の傾向にあるという事が分かっています。乳酸は高くありませんのでこれらの比を持っている人には治療法が一つ出てきました。要するにミトコンドリアの働きをよくしようとする方法です。もう一つは飢餓療法で脂肪酸はアセチルコエンザイムAになっているようでピルビン酸はなっていないのでアセチルコリンが出来にくくなった、つまり勉強をする細胞群のガソリンがなくなったのです。アルツハイマーは細胞自体がなくなる病気ですが今の若者はガソリンがなくなったので記憶、学習、睡眠といったところに問題が起こってきたのです。私は「慢性疲労」というよりも「神経細胞代謝疲労症候群」と言った方がよいと思うのですが分かりにくいでしょうか。不登校を予防するにはこれまでフィジカルヘルスケア(血液検査や尿検査、心電図等)は行なってきましたがこれからは脳の状態をチェックする事も必要でしょう。私達が考えているのは質問形式でインターネット上に問診表を出してそれに回答をしてもらうというものです。出来れば学校単位でやって頂き、その点数化された質問表をチェックして問題のある子供に対しては今日、申し上げたような事を注意して頂きたいとアドバイスを返していくのです。そして全面的な睡眠障害にならないように、心の保てる睡眠がとれるよう親御さんも先生方も気を付けて問題があればカウンセラーに入って頂き、子供の不安感をとって余分な興奮性を持たせないようにして欲しいのです。その事で勉強が出来ない子供達を減らし子供達自身が将来を守って欲しいと思います。このシステムは文科省や厚生労働省にやって頂きたかったのですが、予算の都合がつかないという事で政府には任せていられないと自分でやる事にしました。
白夜を持つ北欧で睡眠障害はほとんどないのだそうです。身体が対応してしまっているという事もあるようです。日本は人工的北欧状態なのですが誰も気にしていない、だから親学の中や学校でも睡眠障害については知識として持って頂ければ幸いです。
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