4 乗合バス事業における新規参入事業者の状況把握
需給調整規制廃止後のバス事業の実態を把握するため、近畿管内で乗合バス事業に新規参入した事業者を対象にアンケート調査を実施し、その運行実態と経営状況等について把握した。調査対象事業者は5事業者(休止の1事業者を含む)で、全ての事業者から回答を得た。
(1)参入の動機と参入状況
自社の事業拡大意欲が参入決定にあたっての要因の大きなものであり、現に、自由記述で求めた参入のメリットでは、自社の貸切事業への好影響を挙げる事業者が多く、乗合事業による収支上のデメリットよりも、旅客事業としての社会的信頼を勝ち得たことを高く評価している。しかし、現段階では、他産業はいうまでもなく同じ運送業界の中でも「トラック事業」等物流関係事業者からの新規参入は見られず、乗合バス事業が事業としての魅力を感じさせない現状も垣間見える。(表−10・11)
表−10 乗合バス参入以前の実施事業(複数回答)
実施事業 |
事業者数 |
構成比 |
貸切バス事業 |
5 |
55.6 |
タクシー事業 |
3 |
33.3 |
トラック事業 |
0 |
0.0 |
レンタカー事業 |
0 |
0.0 |
その他(旅行業) |
1 |
11.1 |
合計 |
9 |
100.0 |
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表−11 新規参入を決定した要因
決定要因 |
事業者数 |
構成比 |
地域住民(利用者)と自治体の両方からの要請 |
1 |
20.0 |
地域住民(利用者)からの要請 |
1 |
20.0 |
自治体からの要請 |
1 |
20.0 |
自社の事業拡大計画 |
2 |
40.0 |
合計 |
5 |
100.0 |
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(2)運行状況と今後の展望
新規参入のほとんどは、通勤通学目的の運行を主体にしており、利用者の階層及び利用状況は、参入前の需要予測に見合ったものだと判断しているものの、営業収支のうえでは厳しい状況にある。(表−12・13)
表−12 バス運行の主な目的
主な目的 |
系統数 |
構成比 |
通勤・通学 |
9 |
52.9 |
通院・買物 |
5 |
29.4 |
観光・レジャー |
1 |
5.9 |
その他(深夜バス) |
2 |
11.8 |
合計 |
17 |
100.0 |
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表−13 利用者数の参入計画時の需要予測との比較
参入計画との比較 |
事業者数 |
構成比 |
大幅に上回った |
1 |
20.0 |
少し上回った |
0 |
0.0 |
ほぼ予測どおり |
2 |
40.0 |
少々下回った |
1 |
20.0 |
大幅に下回った |
1 |
20.0 |
合計 |
5 |
100.0 |
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新規参入事業者は、事業を軌道に乗せていくためには事業拡大を行わざるを得ないのが実態だが、今日の道路状況や駅ターミナルの混雑状況から、停留所の設置等輸送設備の確保における既存事業者および公的施設管理者等との調整作業は大きな課題となっている。(表−14)
表−14 乗合バス事業の拡張計画
拡張計画 |
事業者数 |
構成比 |
具体的に検討している |
3 |
60.0 |
今後検討したい |
1 |
20.0 |
現段階では予定していない |
1 |
20.0 |
その他 |
0 |
0.0 |
合計 |
5 |
100.0 |
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4 おわりに
以上のように、本調査は、近畿各地で取り組まれているバス事業のニューサービス提供等による活性化事例調査や自治体主導による新たなバスサービス等の実証実験の概要等バス事業のサービス全般についての活性化、再生事例の調査結果並びに、学識者をはじめ、国、自治体、バス事業者による「地域におけるバス交通再生・活性化シンポジウム」を通じて、地域におけるバス交通再生・活性化に向けた課題と方策を整理したもので、この結果が、バスを活用したまちのにぎわいの創出、外出支援等をはじめ、自治体の交通政策、事業の活性化に寄与するものと期待するものである。
なお、本調査結果の詳細及びバス交通再生・活性化シンポジウムの内容につきましては、報告書および記録として冊子にとりまとめましたので、ご希望の方は当センターまでご連絡下さい。
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