(2)旅客輸送面での特色
〔1〕アジア方面を中心に国際線ネットワークが充実
関空は、前記の(1)の〔1〕にあるとおり、中国などアジア方面を中心に、国際線ネットワークが充実しており、利用者の選択肢が広いことから、多様なニーズに応えることができ、観光やビジネスでの交流拡大に寄与します。例えば、中国への日帰りビジネス出張、新たな旅行企画商品の開発・販売等が可能となります。
〔2〕国内主要都市へのネットワークが充実
関空は、国内主要都市へのネットワークが次表のとおり充実しており、特に、需要の高い首都圏(羽田)との間には1日15便が運航し、「羽田−関空−海外」のルートの活用により、首都圏の国際線需要を補完する役割を果たせます。
路線名\空港名 |
関西空港 |
成田空港 |
中部空港 |
羽田線 |
15便 |
なし |
なし |
新千歳線 |
8便 |
3便 |
13便 |
沖縄線 |
9便 |
1便 |
6便 |
福岡線 |
6便 |
3便 |
20便 |
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〔3〕国際・国内の乗継ぎが便利
関空の旅客ターミナルビルは、国際⇔国際、国内⇔国際の乗継ぎがビル内での上下移動のみでスムースにできるよう設計されています。
また、現在チェックインカウンターでの待ち時間短縮のために、インラインセキュリティーの工事を実施しているところです。
〔4〕ビジネスジェットの受け入れを積極的に推進
グローバル企業の要人の国内外の往来に利用されるビジネスジェットについては、欧米において、既にビジネスツールとして定着し、また、アジアでは、香港やシンガポールにおいて、最近では中国でも、利用が急速に拡大しています。
このような世界的な流れを受けて、関空は、第2滑走路オープンによって余裕ができる発着枠を最大活用するため、ビジネスジェットの誘致を積極的に推進しています。また、関空では、空港内に、ビジネスジェットのための専用ターミナルビルや格納庫などの施設展開も可能です。
〔5〕関西地域においては、魅力ある観光資源やコンベンション施設が豊富
関西地域では、歴史と伝統に裏打ちされた神社仏閣、祭り、世界遺産のほか、ウォーター・フロント、テーマパーク、グルメといった都市観光など、魅力ある観光資源が豊富であり、しかも、広域連携により、そのネットワーク化を図り、周遊型観光の促進を図りつつあります。また、国際会議や大型イベント開催のための諸施設が充実しています。こうした関空の背後地の魅力やポテンシャルは、訪日外客誘致に資するものであり、「アジア・ゲートウェイ空港」としての関空の優位性につながります。
(3)商業施設の充実や顧客満足度向上の取組み
当社としては、収入全体の55%を非航空系(商業系)収入が占めており、免税店、ホテル、飲食店、物販店などの魅力ある商業施設の充実を図っています。昨年7月には、ターミナルビル2階の北側区画をリニューアルし、「町家小路」としてオープンし、ダイニングコート方式により地域の有名店が多数出店し、お客様の好評を得ています。[図表5]
[図表5]◇お客様のニーズに合ったサービスの取り組み
また、「来て見て楽しい空港づくり」の見地から、地元関係団体との連携の下に、各種のイベントを開催し、賑わい創出に努力しています。第2滑走路オープンを控え、滑走路を使ったマラソン大会、ウォーキング大会のほか、シンポジウムなどの開催も予定しています。
さらに、顧客満足度ナンバーワンの空港を目指すため、社内に「CS推進センター」を設置し、お客様の声に基づき、空港の安全性、利便性、快適性を高める各種の取組みに力を入れています。この結果、関空は、空港の清潔さ、預けた荷物が短時間で受取れること、出入国時の手続きがスムースであること等が高く評価され、英国のスカイ・トラックス社による「エアポート・オブ・ザ・イヤー2006」において、世界第4位を獲得したところです。本年3月からは、24時間営業のネットカフェを併設した空港ラウンジを設けるとともに、リラクゼーション施設やコーヒーショップの新設を図るなど、さらに、CS向上のための取組みを進めています。
3 関空の最大活用を図っていく上での課題と今後の対応
今後、関空が「アジア・ゲートウェイ構想」の中核空港として、その機能やポテンシャルを十分に発揮していくためには、次のような課題への対応が必要です。
(1)関空の高コスト構造の是正(内外の空港との競争条件の整備)
関空は、伊丹空港の騒音問題の抜本的解消を図るため、海上空港として、大阪湾の沖合5キロの大水深を埋め立てて建設されました。このため、土地の造成、連絡橋の建設等に膨大な初期投資を要し、しかも、大半を有利子負債で賄ったため、これが着陸料などの空港施設の使用料金に反映され、高コスト構造の空港となっているのは否めません。内外の空港間競争が激化する中で、競争条件の均等化に向けた環境整備が課題となっています。
当社としては、収入拡大、経費削減のための様々な取組みを通じて、平成16年度から経常べースでも黒字に転じており、また、有利子負債も確実に減少しているものの、なお、1兆2000億円の残高を抱えており、自助努力での料金引下げにも限界があります。[図表6]
[図表6]◇関西空港と主要空港の料金比較・関西空港会社の財務状況等
○関西空港と主要空港との料金比較(平成18年3月末現在)
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関空 |
成田 |
中部 |
韓国・仁川 |
上海・浦東 |
着陸料(国際線1着陸当たり) |
576,840円 |
455,400円 |
458,160円 |
292,032円 |
374,369円 |
旅客サービス施設使用料
(通称:PSFC、1人当たり) |
2,650円 |
2,040円 |
2,500円 |
2,040円 |
1,316円 |
〈注1〉着陸料は、B777-200型(276t、376席、L/F70%)の場合により算出。 |
〈注2〉PSFCの換算レートは、平成18年3月13日のレートにより算出。 |
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○国内三大空港の連結貸借対照表(平成18年度中間連結ベース)
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関空会社 |
成田会社 |
中部会社 |
資産の部
固定資産
流動資産等 |
2兆500億円
1兆9,700億円
800億円 |
9,900億円
9,300億円
600億円 |
5,500億円
5,400億円
100億円 |
負債の部
有利子負債
無利子負債
その他 |
1兆4,800億円
1兆2,000億円
2,400億円
400億円 |
7,900億円
5,700億円
1,300億円
900億円 |
4,670億円
2,900億円
1,700億円
70億円 |
資本の部
資本金
利益剰余金等 |
5,700億円
7,900億円
△2,200億円 |
2,000億円
1,000億円
1,000億円 |
830億円
840億円
△10億円 |
〈注1〉一部端数処理をしている。 |
〈注2〉連結損益計算書の収入の区分(航空系・非航空系)は各社の発表ベース。 |
〈注3〉連結損益計算書の固定資産税等は単体ベース。 |
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○国内三大空港の連結損益計算書(平成18年度中間連結ベース)
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関空会社 |
成田会社 |
中部会社 |
営業収益
航空系収入
非航空系収入 |
531億円
234億円
296億円 |
909億円
564億円
345億円 |
263億円
119億円
144億円 |
営業費用
減価償却費
固定資産税等 |
384億円
146億円
35億円 |
728億円
247億円
74億円 |
220億円
74億円
13億円 |
営業損益 |
147億円 |
181億円 |
43億円 |
営業外収益
政府補給金収入 |
47億円
45億円 |
2億円
- |
3億円
- |
営業外費用
支払利息 |
114億円
112億円 |
50億円
48億円 |
32億円
21億円 |
経営損益 |
79億円 |
132億円 |
14億円 |
中間純利益 |
71億円 |
66億円 |
12億円 |
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現在、交通政策審議会航空分科会において、国際拠点空港のあり方を含めた航空政策の見直しについて審議中ですが、ぜひ、関空の高コスト是正に向けた抜本策についても議論をお願いしたいと思っています。
こうした抜本策の実施は、関空をさらに利用しやすい空港とし、今後のネットワークの充実に資するほか、物流コストの低減により、グローバル経営を推進する我が国企業の国際競争力の向上に寄与し、さらには、関空を拠点とする我が国航空企業の競争力の強化にも寄与するなど、波及効果の高い施策と言えます。
(2)2期島の有効活用を図るための施設整備や機能拡充
本年8月の第2滑走路のオープンに際しては、「限定供用」ということで、4000メートルの滑走路と南側連絡誘導路のみの供用であり、2期島全体については、今後、需要動向等を見ながら段階的に整備することとなっています。[図表7]
[図表7]◇関西国際空港 第2滑走路の概要
(拡大画面:89KB) |
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昨年春から、当社内において、有識者のご意見も伺いながら、2期島の施設展開についての全体計画を検討中であり、近くとりまとめを予定しています。
当面の対応として、1期島の国際貨物地区が満杯の状況にあることから、2期島での貨物上屋やエプロン整備が急務となっており、また、1期島と2期島を連絡する北側誘導路等の整備も課題となっています。
(3)関西3空港(関空、伊丹、神戸)の機能分担の徹底
今後とも、平成17年11月に関西3空港懇談会において了承された3空港の機能分担を徹底し、3空港のトータルとしての最適運用を図っていく必要があります。すなわち、関空は、「西日本を中心とする国際拠点空港であり、関西圏の国内線の基幹空港。国際線が就航する空港は、今後とも関空に限定することが適当。」、伊丹空港は、「国内線の基幹空港。環境と調和した都市型空港とする。」、神戸空港は、「150万都市神戸及びその周辺の国内航空需要に対応する地方空港。」という機能分担を踏まえた対応が必要です。特に、内外の空港間競争が激化していく中で、関西地域の3空港が競合することなく、補完しあって全体としての競争力を高め、お客様の利便の向上を図っていく必要があります。
(4)航空企業による新規路線の開設や増便についての弾力的対応
内外の意欲ある航空企業が、新規路線の開設や増便を要望した際に、国がこれまで以上に弾力的にこれを認めていくことが望まれます。特に、関空など空港制約の少ない空港での増便、経済合理性の支配する貨物専用便の分野での増便については、弾力的対応がとりやすいと考えられます。
(5)貿易・通関・出入国制度等についての一層の規制緩和
通関・貿易制度の規制緩和(特に、コンプライアンスを遵守する優良事業者に対する手続簡素化などの優遇制度の拡充、次世代シングル・ウインドウ化の早期実現による申請手続の負担軽減)、出入国手続の簡素化(特に、VIP対応)等により、旅客、貨物の流れをよりスムースにすることが必要です。
4 おわりに
関空は、第2滑走路のオープンを契機に、本格的24時間空港として、また、「アジア・ゲートウェイ空港」として、新しい飛躍の時期を迎えます。これまでも、国、地元の経済団体や地方公共団体、そして、多くのお客様のご理解とご支援を得て、関空は発展してきたところであり、深く感謝いたしております。
今後とも、関空が人流・物流の拡大を通じて、地域の活性化、国際競争力の強化等に貢献していけますよう、変わらぬご支援、ご利用をお願いします。
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