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I 事業の目的
 財団法人東京エムオウユウ事務局は、1994年の設立以来、アジア・太平洋加盟各国が「覚書」の実を挙げるためには、各国のPSC検査官の人材養成が喫緊の基本的最重要課題であるとの認識に立ち、「ポートステートコントロール委員会」の承認を得て、日本財団の援助を得て、既に12年にわたり総合的な人材養成(技術協力)プログラムを精力的に実施してきた。この内、「基礎研修コース」及び「フェローシップトレーニング」に限っても、これまでに研修を実施した各国のPSC検査担当者は延べ約430名に上る。
 
 域内で延べ430名に上る研修受講者を中核として、その経験を生かしPSCの適正かつ円滑な実施に貢献してもらうと共に、研修受講者のみならず各国PSC検査官のネットワーク構築に資するため、各国毎のPSC検査官リストを整備することとなった。
 
 本報告書は、平成18年度にインドネシア、シンガポール、タイ、ブルネイ及びマレーシアを対象におこなった事業をまとめたものである。この事業にあたり、東京エムオウユウのメンバーである日本の国土交通省をはじめ、関係各国の関係者のご指導とご支援に対し、改めて深く敬意と感謝の意を表す次第である。
II 「PSC検査官ネットワーク」インドネシア編
現地日程表
項目 場所
平成18年12月13日(水) 移動(東京〜ジャカルタ)
平成18年12月14日(木) インドネシア運輸省との会合(出席者名簿は別紙1) 同省会議室等
PSC検査官との懇親会
平成18年12月15日(金) TG. Priok港PSC担当者との会合 同港事務所
平成18年12月16日(土) バリ島へ移動、会議場等調査 会議場等
平成18年12月17日(日) バリ島港湾調査、ジャカルタへ移動 Benoa港
平成18年12月18日(月) シンガポールへ移動
 
(国内作業)
1. 名簿の作成
 各国のPSC検査官のデータベースを整備するために、まず、インドネシア人PSC検査官で、過去12年間に亘る東京エムオウユウのPSC検査官研修プログラムを受講したことのある者の名簿を作成し、完成名簿のひな型とした。
 
 同時に、事務局を提供している国として、日本の現PSC検査官の名簿も作成、提出した(巻末別表1参照)。
 
(海外作業)
2. ネットワーク構築調査
(1)ネットワーク構築に当たり、まず東京エムオウユウの過去の研修プログラム受講者に中心的存在になってもらおうと、過去の研修プログラム受講者への事業概要の説明、打ち合わせのために、下記の日程でインドネシア共和国首都ジャカルタを訪問した。合わせて、研修受講者の現在の状況、実質的な研修の成果、研修後の定着状況等を聴取した。
 
(2)日程概要
1)平成18年12月14日(木)午前、インドネシア運輸省において、海上保安局長(Director of Sea and Coast Guard) Soeharto氏と面談した。その後、同省内会議室において、海事安全課長(Head of Sub Directorate of Marine Safety)Israhadi氏、国際協力課長(Head of PR and International Cooperation Office)Windari女史等との会議を行った。その夜、事務局が夕食会を催し、関係者との情報交換並びに懇親の場を持った。
2)翌15日(金)には、同国最大の港湾であるTanjung Priok港を視察し、同港事務所長Pandji氏等から、PSC現場で直面している問題等について説明を受けた。
3)翌16日(土)には、バリ島において、2008年(平成20年)東京MOU主管庁会議(PSCC)の開催候補会議場、客船ターミナル等を調査した。
 
(3)現地派遣者
岡田 光豊  財団法人 東京エムオウユウ事務局 理事長
中崎 郁夫  財団法人 東京エムオウユウ事務局 専務理事
秋田 務  国土交通省 海事局総務課外国船舶監督業務調整室長
 
.1 ネットワーク構築
.1.1 当方より事業の趣旨を説明し、リストの作成等の協力を依頼したところ、喜んで協力するとの回答を得た。今後の連絡先として、海事安全課Bintang氏が指名され、リストを完成のうえ、Eメールで送付してくれることとなった。なお、入手したリストを巻末別表2に添付する。
 
.1.2 なお、インドネシア運輸省ではパソコンの導入も遅れており、省としてのEメールアドレスもないため、連絡方法が問題となることが判明した。当面は、Bintang氏が持つ個人的なEメールアドレスを連絡先とし、同氏から国内関係者に連絡してもらうこととした。
 
.1.3 同省に派遣されているJICA専門家によれば、専門家の部屋には特注でISDNを入れたが、省内は通常の電話回線であり速度は遅く容量の大きなものが入ってくると1日使えなくなるような状態とのことであった。また、ISDNでも1メガ以上になると非常に遅くなるので、これ以下で送ってくれるよう関係者にはお願いしているとのことである。
 
.2 東京MOU事務局の活動
.2.1 当方が行っている研修、セミナー等に対し、謝意があった。また、インドネシアは広大な島国で、80港に146人のPSC職員がおり、小さな国と同様に各研修に1名というのは問題であり、インドネシア人枠を増やしてほしい旨の要望があった。
 
.2.2 当方から、インドネシアは今だPSCC及びセミナーを主催しておらず、近々主催してほしい旨の要請を行った。インドネシア側は、2008年にPSCC、2009年にセミナーを開催する方向で予算要求等国内調整を行いたいとの意向を表明した。なお、PSCC等の開催地としてはバリ島が有力とのことであり、同島の会議場候補地等を調査したが、施設、値段等について問題は無く、また、治安状況も安定しているとの印象を受けた。
 
.3 インドネシアのPSC
.3.1 当方から、インドネシアではPSCの際に、金銭を要求されたとの苦情が複数の船会社等から寄せられており、事実関係の説明を要請した。インドネシア側からは、大統領令に基づき、現在、250US$を徴収しているとの説明があった。また、多額の金銭の要求は代理店等がPSCを口実に取っている場合もあるのではないかのとの発言もあった。今後、初回検査時の料金は廃止する方向で検討するとの意向が示された。
 
.3.2 当方の情報システムAPCISに報告されているインドネシアのPSC検査実績は年間50隻程度であるが、Tanjung Priok港では年間400隻以上のPSCを行っているとの説明があった。現在、検査データを本省に集めAPCISへ入力しているが、人手不足等のため、報告されていないとのことであり、改善策として、Tanjung Priok港等7つの港でダイレクトにAPCISにアクセスできるようにするため、最近、パスワード等を取得したとの説明があった。
 
.3.3 インドネシア船籍船は海外PSCで処分されることが多く、現在ブラックリスト(航行停止処分等を受ける率の多い船籍国のリスト)に入っているが、これを改善するため、旗国検査部門と協力し、東京MOUのPSCマニュアルに基づく検査を始めているとの説明があった。
 
4. その他
.4.1 海上保安局長Soeharto氏は、在英国インドネシア大使館書記官としての勤務経験があり国際海事機関(IMO)についての造詣も深く、大学での専攻が造船工学とのことで技術的にも詳しい。また、訪日経験も多く、日本酒をたしなむ等親日的との印象を受けた。
 
.4.2 国際協力課長Windari女史は、笹川奨学金による世界海事大学留学生であり、日本財団への感謝を表していた。また、英語に堪能で、発言内容も的確で非常に実務的との印象を受けた。
 
3. とりまとめ作業
 国内作業1. を元に、2. の海外作業で得られた情報、意見を勘案して、具体的な成果として次のリストを作成した。(○印はネットワーク責任者)
 
■インドネシアPSC関係者名簿(巻末別表2)


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