第5章 静脈物流ネットワークの構築に向けた関係者の意向
ここでは、玄海諸島の廃棄物等の処理・輸送に関する問題点や今後の方針について、関連事業者や行政、住民の意向をアンケート調査結果およびヒアリング調査結果をもとに整理する。アンケート調査およびヒアリング調査の実施概要は以下のとおりである。
(1)アンケート調査
(1)調査目的
玄海諸島における廃棄物等の排出・輸送状況や取扱状況、問題点、今後の方向性などについて把握するため、玄海諸島の全駐在員・漁業協同組合および唐津市内(本土側)の廃棄物処理事業者・自動車リサイクル事業者・家電小売店を対象としてアンケート調査を実施した。
(2)調査対象および回収数
各アンケート調査の対象数および回収数は、下表のとおりである。
駐在員の回収率は100%、漁業協同組合は同83.3%である。また、産業廃棄物処理事業者、自動車リサイクル事業者、家電小売店の回収率は20〜25%前後となっている。
表5-1-1 各アンケート調査の対象数および回収状況
分類 |
調査対象数 |
回収数 |
回収率 |
駐在員 |
91 |
9 |
100% |
漁業協同組合 |
62 |
5 |
83.3% |
産業廃棄物処理事業者 |
89 |
22 |
24.7% |
自動車リサイクル事業者 |
100 |
22 |
22% |
家電小売店 |
72 |
14 |
19.4% |
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注1)馬渡島については、島内3地区(野中、宮ノ本、二タ松)の駐在員に対して実施した。
注2)鎮西町漁業協同組合加唐島支所が加唐島・松島の2島を管轄しているため、調査対象は6者となった。
注3)産業廃棄物処理事業者については「佐賀県産業廃棄物処理業許可業者名簿」、自動車リサイクル事業者については「財団法人自動車リサイクル促進センターにおける登録事業者」、家電小売店については「YAHOO!電話帳」に掲載されている電器店等を対象として、それぞれ唐津市内に事業所を有する業者を各アンケートの対象に選定した。
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(3)調査方法
駐在員アンケートは唐津市の職員を通じて直接配布し、郵送により回収した。漁業協同組合、廃棄物処理事業者、自動車リサイクル事業者、家電小売店については、郵送による配布・回収を行った。
(4)実施時期
分類 |
実施時期 |
駐在員 |
2006年9月25日〜10月20日 |
漁業協同組合 |
2006年9月27日〜10月20日 |
産業廃棄物処理事業者/自動車リサイクル事業者/家電小売店 |
2006年9月13日〜10月10日 |
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(2)ヒアリング調査
(1)調査目的
玄海諸島における廃棄物等の排出状況や本土への輸送状況、問題点、今後の方向性などについて把握するため、玄海諸島の駐在員・漁業協同組合および行政、船社、廃棄物処理・リサイクル関連事業者を対象としてヒアリング調査を実施した。
(2)調査対象および実施時期
a)住民
対象 |
分類 |
調査実施日 |
高島駐在員 |
駐在員 |
2006年12月18日(月) |
神集島駐在員 |
駐在員 |
2006年12月19日(火) |
加唐島駐在員 |
駐在員 |
2006年11月01日(水) |
馬渡島駐在員 |
駐在員 |
2006年11月02日(木) |
鎮西町漁業協同組合馬渡島支所 |
漁協 |
2006年11月02日(木) |
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b)船社
対象 |
分類 |
調査実施日 |
A社 |
貨物船社 |
2006年11月01日(水) |
B社 |
貨物船社 |
2006年12月19日(火) |
C社 |
定期航路事業者 |
2006年11月02日(木) |
D社 |
定期航路事業者 |
2006年11月01日(水) |
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c)行政
対象 |
分類 |
調査実施日 |
唐津市呼子支所 |
行政 |
2006年11月01日(水) |
唐津市鎮西支所 |
行政 |
2006年11月01日(水) |
唐津市肥前支所 |
行政 |
2006年12月18日(月) |
唐津市離島振興課・リサイクル推進課・水産課・清掃業務課 |
行政 |
2006年07月05日(水)のほか、電話・メール等で適宜実施 |
佐賀県 |
行政 |
2006年07月06日(木) |
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d)廃棄物処理・リサイクル関連事業者
対象 |
分類 |
調査実施日 |
E社 |
FRP船リサイクルシステム登録販売店 |
2006年12月19日(火) |
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(1)現状の問題点
(1)玄海諸島共通の問題点
駐在員からあげられている廃棄物等の収集・運搬にかかる問題点は、「リサイクル財の輸送費が高い」が最も多く、5地区が回答している。次いで「島内収集の島民負担が大きい」「リサイクル財の輸送手配が困難」が4地区であげられている。また、漁協からの回答では「リサイクル財の輸送費が高い」を全地区があげたほか、「一時保管の廃棄物等が景観を損ねている」を3地区があげている。
廃棄物等の処理にかかる問題点としては、7地区の駐在員が「漂着ゴミが景観を損ねている」をあげており、各島共通の課題となっている。また、「不法投棄」や「不適切な処理」「釣り人等のゴミ」も4地区で問題としてあげられている。
図5-2-1 
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廃棄物等の収集・運搬にかかる問題点
(複数回答、N=9・駐在員)
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図5-2-2 
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廃棄物等の収集・運搬にかかる問題点
(複数回答、N=5・漁協)
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図5-2-3 
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廃棄物等の処理にかかる問題点
(複数回答、N=9・駐在員)
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表5-2-1 島別にみた廃棄物等の輸送・処理にかかる問題点(駐在員)
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高島 |
神集島 |
小川島 |
加唐島 |
松島 |
馬渡島 |
向島 |
宮ノ本区 |
二タ松地区 |
野中地区 |
収集・運搬の問題点 |
廃棄物等の分別収集が徹底されていない |
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○ |
○ |
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|
○ |
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一時保管の廃棄物等が景観を損ねている |
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○ |
○ |
|
○ |
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島内収集の島民負担が大きい |
○ |
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○ |
○ |
|
○ |
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リサイクル財の本土への輸送費が高い |
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○ |
○ |
|
○ |
|
|
○ |
○ |
リサイクル財の輸送手配が困難 |
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○ |
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○ |
○ |
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○ |
その他 |
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○ |
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処理の問題点 |
不法投棄がみられる |
○ |
○ |
○ |
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○ |
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野焼き等不適切な処理がみられる |
○ |
○ |
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○ |
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○ |
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釣り人等のゴミが多い |
○ |
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○ |
○ |
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○ |
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漂着ゴミが景観を損ねている |
○ |
○ |
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○ |
○ |
○ |
|
○ |
○ |
リサイクル手続きが分かりにくい |
○ |
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○ |
○ |
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a)不法投棄・退蔵
玄海諸島の各島で使用済み自動車や廃家電、漁業関連機器などの不法投棄や退蔵が散見される。これは、処理に必要となる費用負担に対する意識がまだまだ低い点が要因となっている。神集島では、不法投棄による飲料水汚染への影響も指摘されている。
<ヒアリング・アンケート意見>
○費用負担を避けて不法投棄あるいは退蔵しているが、排出者にその自覚がみられない
・リサイクルとして出すのは費用がかかるため、放置してある。リサイクルの分別はできているが、お金を払ってまで処理したくない。島内の畑部分等には瓦等の不法投棄がある。不法投棄をしているという意識が無い。(高島)
・処理費用がかかるため、漁業関連の機械が不法投棄あるいは放置されている。(馬渡島)
・山側にバイクやテレビ、レンジ、冷蔵庫等が不法投棄されている。持ち出すこともできない。山の上の方で不法投棄が多いので、最近では下流にある井戸水も汚染されて飲めない状況である。山が荒れると、海が荒れて、人も荒れる。(神集島)
・家電は畑に捨てるケースもある。しかし、自分の土地だから不法投棄ではないと言い張る人もいる。また、建設業者もモラルを持って、処理してくれなければ困る。(神集島)
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