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第3 熱収縮チューブに関する調査
3.1 熱収縮チューブとは
 「熱収縮チューブ」とは、加熱することで形状が、径方向にのみ収縮するチューブ状のもので一般的に、最初の径のおよそ1/2に収縮するものである。
 
3.2 熱収縮チューブの種類
 現在販売されている熱収縮チューブは、架橋ポリエチレン(以下XLPE)や塩化ビニール(以下PVC)などプラスチックの形状記憶性を応用したものがほとんどであり、それらはすべて、電子線照射架橋である。約30年前に商品化され、用途としては、主に電子機器内の配線端末保護、ケーブル用ジョイントカバーなど多岐にわたっている。
 知られている商品としては、スミチューブ(住友FP)、バーサフィット(レイケム)、ヒシチューブ(三菱樹脂)などがある。
 また、プラスチック以外にも、たとえばシリコーンゴムやEP(エチレンプロピレン)ゴムを使用した熱収縮チューブもある。
 ゴム材料を使った熱収縮チューブは、電子線架橋とは異なる製造方法で、形状記憶性を与えた商品が販売されている。材質はエチレンプロピレンゴム(EPゴム)とシリコーンゴムである。その特徴を生かして、各種用途に使用されている。
 また、EPゴムチューブと他の材質のチューブの比較を表3.2に示す。
 
表3.2 EPゴムチューブと他のチューブの比較
項目 EP
ゴムチューブ
XLPE
チューブ
PVC
チューブ
シリコーン
チューブ
PET
チューブ
柔軟性 ×
耐候性 ×
収縮率 1/5が可能 1/3程度 1/2程度 1/2程度 1/2程度
電気特性
サイズ範囲 〜270mmφ 〜100mmφ程度 〜200mmφ程度 〜50mmφ程度 〜100mmφ程度
価格 安価 安価 安価 高価 安価
 
 このように、EPゴムの熱収縮チューブは、船舶用途で採用するときに必要な、「耐候性」「太サイズが可能」「収縮倍率が可能」といった項目において優れていることから、今回のテーマで確認するチューブに選定した。
 
3.3 EPゴム製熱収縮チューブ(ニシチューブ)の特長
 過去にEPゴム系の熱収縮チューブを製造しているメーカは数社あったが、だんだん製造を中止していき、いまでは、西日本電線(株)が国内唯一のEPゴム系熱収縮チューブメーカとなっている。
 当初は、電気絶縁用として、電線・ケーブルの端末やバスダクトの絶縁保護として使用されていたが、EPゴム製熱収縮チューブ(ニシチューブ)はゴム製であり、プラスチック系統の収縮チューブに比べて、下記に示すような長所があることから、さまざまな分野で使用されるようになった。
(1)弾力性・柔軟性に富む
(2)太いサイズが可能(270mmφまで)
(3)肉厚品が可能(収縮後:7mmまで可能)
(4)収縮倍率:1/5が製造可能
 ニシチューブは上記のような長所を持っていることから、使用される分野は多岐にわたっており、保護・防食・防水・環境調和・手すり用途などに至っている。
 特に、自動車・二輪車関連業界では、ニシチューブが柔らかいことから、曲がったパイプやホースに挿入しやすいこと、ゴムホースの曲がり部を矯正しにくいなどといった利点が認められている。また、肉厚品は各種プロテクタとして使用され、収縮倍率の大きいものについては、チューブを被せる対象物の外径が大きく変化している物体や、配管の出口などで配管と電線の径差が激しい箇所などに採用されている。
 チューブ内面にホットメルトの接着剤を塗布した製品は、加熱収縮させるときの熱で、接着剤が溶け、被物体に接着することから、空気や水分を遮断させることができ、金属配管の錆の発生を防ぐことができる。海岸に放置したサンプルの調査を実施したが、20年前のサンプルでも錆が発生していないことを確認している。
 
3.3.1 EPゴム製熱収縮チューブ(ニシチューブ)の諸特性
 ニシチューブは材質がEPゴムであることから、電気特性や機械特性には優れたものがある。機械的・電気的性能を、表3.3.1に示す。
 
表3.3.1 ニシチューブの機械的・電気的性能
試験項目 単位 規格値 性能
常温 引張強さ MPa 7.8以上 15
伸び 300以上 570
老化 引張強さ残率 80以上 93
伸び残率 80以上 93
耐油 引張強さ残率 - 44
伸び残率 - 67
引裂強さ N/mm - 47
比重 - - 1.3
脆化温度 - 破壊しない
耐オゾン性 - - 500時間で亀裂なし
誘電率 - 3.9
誘電正接 0.9
体積抵抗率 Ω-cm - 1×1015
硬さ JIS A - 90
収縮率(軸方向) - 3〜12
 
3.3.2 EPゴム製熱収縮チューブ(ニシチューブ)の種類
 熱収縮チューブは、管状のものが主として使用される。
 管状のものには内面接着剤付きと接着剤なしの2種類が使用される。
 また管状のものは、被物体の端から挿入しないといけない、そのため両端がふさがっている場合には、装着できず、その解決策としてジッパー付き熱収縮チューブとファスナー付き熱収縮チューブがある。
 
 熱収縮チューブの呼称の見方を下記に示す。
例:
NOR-A 35-8-2.5 NOR-A 内面接着剤付き
NOR35-8-2.5 NOR 内面接着剤無し
35 収縮前内径
8 収縮後内径
2.5 収縮後のチューブ厚さ(最大収縮時)
 
1)内面接着剤付き熱収縮チューブ
 
表3.3.2a 内面接着剤付き熱収縮チューブ
呼称 収縮前 収縮後 被物体 定尺
m
内径Dmm 内径dmm 厚さtmm 外径目安mm
NOR-A 12-3-2 12.0以上 3.0以下 1.80〜2.40 3.5〜11.5 1.0m
NOR-A 35-8-2.5 35.0以上 8.0以下 2.25〜3.00 8.5〜34.5 1.0m
NOR-A 65-15-3 65.0以上 15.0以下 2.70〜3.60 15.5〜64.5 1.0m
 
図3.3.2a 内面接着剤付き熱収縮チューブ
 
写真3.3.2 a 内面接着剤付き熱収縮チューブ
 
2)内面接着剤無し熱収縮チューブ
 
表3.3.2b 内面接着剤無し熱収縮チューブ
呼称 収縮前 収縮後 被物体 定尺
m
内径Dmm 内径dmm 厚さtmm 外径目安mm
NOR 12-3-2 12.0以上 3.0以下 1.80〜2.40 3.5〜11.5 25m
NOR 35-8-2.5 35.0以上 8.0以下 2.25〜3.00 8.5〜34.5 25m
NOR 65-15-3 65.0以上 15.0以下 2.70〜3.60 15.5〜64.5 25m
 
図3.3.2b 内面接着剤無し熱収縮チューブ
 
写真3.3.2b 内面接着剤無し熱収縮チューブ


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