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V 老年期精神科看護とレクリエーション
◇青年期に発症した精神障がいの方々が今老年期を迎えている現状の理解
◇健康な老年期と精神障がいを持った老年期のレク・・・理解度と障がいのレベルに応じて
◇認知症の進行防止とリハビリテーション
 
○脳の非働性を防ぐ右能刺激訓練
(1)音楽:聴く、弾く、歌う、リズム(ギター、大正琴、三味線、カラオケなど)
(2)ゲーム:囲碁、将棋、マージャン、オセロ、花札、トランプ、パチンコなど。
(3)スポーツ:ゲートボール、ダンス、ビリヤード。水泳、スポーツ観戦など。
(4)絵画:描く、眺める、鑑賞する。
(5)短歌:詩、俳句、川柳など。
(6)犬、ネコ、小鳥、金魚などを飼育。
(7)株、オートレース、ボートレース、スロットマシンなど。
(8)お茶、生け花、書道など。
(9)刺繍、編み物、裁縫など。
(10)園芸、盆栽、野菜作りなど。
(11)男女交際、旅行、湯治など。
(12)読経、写経、経文を憶える。
(13)手芸、折り紙、彫り物、日曜大工、コレクション、陶磁器作り、竹細工など。
(出典)金子満雄月刊「地域看護」第19巻第9号
 
○右脳刺激訓練=レクリエーション活動
 「右脳刺激訓練」のプログラムは、レクリエーションを構成する活動種目がずらりと並んでいる。つまり、レクリエーションのさまざまな活動は、右脳を刺激し、前頭葉の機能低下を防止してくれるプログラム。
(したがって、若くてしかも健康な状態にある時期から、定期的、継続的な右脳刺激訓練、すなわち、レクリエーション活動を生活化し、ライフスタイルとして確立しておくことが認知症の防止に効果的である。)
 
日本の高齢者施設でレクリエーションの時間によく使われる療法
音楽療法
 認知症の高齢者では記憶が部分的によみがえり、問題行動が減少。
園芸療法
 植物や土に触れることによって、不安と緊張がほぐれ、不穏な行動や感情の起伏が少なくなる。植物の匂いや色、手触りなどが五感を刺激して知覚能力が高まる。会話や交流が生まれ、植物を育てることで得られる達成感が自信や意欲につながる。
化粧療法
 問いかけへの反応がたかまり、意思表示をするようになった。不機嫌や徘徊が減り、落ち着きを取り戻した。口紅だけでも表情が生き生きし、身だしなみへの関心が高まった、リハビリに自主的に参加、オムツがはずれたなど。
アニマルセラピー
 社会性の改善、責任感、有用感、自立心、安堵感、ストレスや孤独を癒す。
回想法
 アイデンティティーの形成、自分自身を快適にする、自尊感情が高まる、対人関係の進展を促す、生活の活性化、社会的習慣や技術を取り戻し、新しい役割を担える。新しい環境への適応を促す。職員への効果として高齢者の個性、歴史、背景への理解が深まることでその存在への尊敬の念が増し、質の高いケアへの意欲につながるなど。
ブライトケア
 夜間の入眠困難や中途覚醒などの睡眠障害が改善され、徘徊や攻撃的な行為、昼夜逆転、ADLのレベルの改善。
アロマセラピー
 リラックス、集中力、記憶力を高め、気分を調整する。幸福感、気分の鎮静、元気が出るなど。
 
1 認知症のグループ・レクリエーション支援の効果
(集団を利用したレクリエーション)
 集団レクから、グループの持つ力を活用しながら、一人ひとりの多様性をいかすことが求められる。
(1)対人交流を介して自己および他者の存在を認識
(2)楽しさ、喜び体験をすることにより、感情の表出や表情の変化を引き出す
 楽しさを適切に表現することができる。悔しさ、悲しさを解消することができる。
(3)身体機能や精神機能(注意・集中・思考・判断・意欲)への刺激となり、活動性を高める。
 レク活動において、笑いと歓声のうちにいつの間にか、身体機能を使いこなしているという事態を期待できる。また、ひとつのことを成し遂げた感動を体験する。
 
2 効果的な実施のポイント
(1)楽しいレクのムードづくり
 支援者がムードメーカーになり、演出することが大きな効果を生み出す鍵となる重要な存在。患者、利用者が「主役」であることを強調することが大切。個々が達成感を感じることのできるお手伝いを意図的に自然に行なう。
(2)内容
 ゲームでは、粗大な身体的活動(わかりやすいジャンケンゲーム、ボールゲーム、輪投げ、リレーゲームなど)
 逆に言語知的活動(伝言ゲーム、記憶力ゲーム、神経衰弱など)は知的低下のある認知症の高齢者には不適といわれている(但し、認知症のレベルに合わせて可)。
 音楽的活動では、歌や踊り、音楽に合わせて身ぶり手ぶり、楽器は不規則な拍子は不適だが、自由な拍子とりや、単純なものなら楽しむことができる。(資料の音楽療法参照)
 グループ回想法は、最近では認知症専門病棟や老人施設で一般的に行われるようになった。これは高齢者が豊かな経験を重ねてきた大人として楽しめるプログラムなので、自己肯定感を回復し、自分らしさを取り戻す機会になる。(資料参照)
 
○対象に合わせたレクのアレンジ方法
 対象者の身体的機能、知的レベル、無気力、無関心などの心の状態、障害の度合いの違い、本来持っている運動能力や好みの違いを考慮し「できない」挫折感ではなく、「自分にもできる」思いにつなげて小さな自信をつける。ひとつのきっかけが、人との関係を良くし、生活に張りをもたらす結果になるので、大切に、ていねいに援助する。
 そのためには、同じ種目でも、個々に合わせたアレンジをしながら進めることが必要になる。
 
(3)説明方法
 言葉による指示、聴覚による理解力が弱いので、大きな、はっきりした動作による視覚的な説明のほうがわかりやすいので、実際やってみせながら説明するのが良い。
(4)観察と振り返り
 レク活動中の反応、表情の変化、集中力などを観察する。最後に感想を言ってもらうことも必要。簡単な言葉でしか返ってこない場合が多いが、その言葉に対して、職員が言葉を返してあげることにより、動機づけになったり意欲が高まったりする。
 また、観察の結果や良い反応などは必ず記録に残し、次回のプログラムに生かすことを忘れないこと。
(5)参加の強要をしない。自然に参加したくなるレク・プログラムの提供
 強制的な参加は、痴呆老人にとってはストレスになり、レクリエーションの目的と逆行することになる。
※やってはいけないこと
 無理強い、レク中の説教、全てを否定すること、罰ゲーム、わざとらしい同情、支援者の価値を押しつけること、支援者自身の話をすること(どっちが主役だかわからなくなる)
 
○集団レクリエーションと1対1のレクリエーション
 障害がより重くなればなる程、1対1で行えるレクリエーショナルな活動(心と体を楽しさや喜びで躍動させる何らかの働きかけ)が必要とされ、その具体的な方法が求められている。(資料1体1のレクリエーション参照)
 
○コミュニケーションの基礎中の基礎!
あいさつとホスピタリティー
あ−温かい関心を示す行動
い−いつもしよう
さ−先にしよう
つ−続けることで人間関係が生まれる
 
ホスピタリティー・・・もてなしの心
大切なことは、
相手を思いやる心
相手を思いやる支援
暖かくもてなす気持ち


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