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はじめに
 「自閉症児者の家族支援の人材養成事業(ペアレント・メンター養成事業)」も2年目に入り、全国の49支部に、ベーシックコース・フォローアップコースの研修を修了した140名のペアレント・メンターが誕生しました。
 養成講座をスタートした2005年度は全国の方面別の3つの会場でベーシックコースのみを、また2006年度は同じく3会場におけるべーシックコースに加えてフォローアップコースを2会場において実施することが出来ました。
 今後は、ベーシックコースのより地域に密着したスタイルでの開設をめざし全国各地へと拡げつつ、継続的なフォローアップ研修へとつなげて行きたいと考えています。
 そのため、本年度の報告書は、それぞれの地域でペアレント・メンター養成講座を計画し運営する際に、インストラクターの助けとなる具体的な方法が提示できればと考え作成をしました。本文では、ペアレント・メンターの役割やガイドライン、相談の技術と基礎知識など、養成講座の内容・進め方について出来るだけわかりやすくまたすぐに活用していただけるマニュアルになるよう工夫をしました。加えて別添のCDには、リソースブックの見本や養成講座の企画とその準備の段階で必要となる各種資料を掲載しています。それぞれの地域でお役立て頂けるとうれしいです。
 全国各地で家族たちが同じ自閉症児を育ててきた経験を生かして、育児の悩みの相談を受けたり、情報を提供するなどの活動を行っていますが、相談を受ける側が抱える悩みも少なくありませんでした。この養成講座が、地域でその役割を担ってくださっているご家族の相談活動の一助になれば幸いです。
 家族の、家族による、家族のための相談支援体制の充実に向けて、発達障害者支援センターをはじめとする地域資源とのネットワークの中で、今後もペアレント・メンターとともに自閉症の人とその家族のサポート体制の充実を図れればと願っています。
2007年3月
社団法人日本自閉症協会
 
自閉症児者の家族支援の人材養成事業
ペアレントメンター養成講座
養成講座をはじめるにあたって
1 養成事業の目的
 日本自閉症協会のペアレント・メンターは支部機能を活用し、自閉症児を持つ親が一人で悩まなくてもすむように、地域での当事者同士の支え合いを推進することを目的としています。
 
 メンター(mentor)とは「信頼のおける相談相手」という意味です。既に欧米でも親自身が診断を受けたばかりの子どもの親や、さまざまな子育ての疑問を持つ親に対して話を聞き、情報提供を行うペアレントメンターの活動が行なわれています。
 日本自閉症協会でも49の支部において現在たくさんの親がこうした活動を行ってきており、相談する親の心の支えになっています。
 しかしながら、一方では「質問や悩みに十分に応えられたのか不安」「当事者からの相談にどのように対応して良いかわからない」など、親であり相談者として活動を行う中での様々な悩みも多く寄せられています。こうした相談活動は自閉症の概念が広がる中で、今後ますます必要となって来るでしょう。
 
 もちろん親は専門家ではありませんから、自分の体験にないことや難しい相談を受けることはできません。しかし同じ親として話を聞くことや共感すること、地域の情報を提供することはできます。これは、親にしかできないことです。だからペアレントメンターの養成が必要になっています。
 
 今回の研修会の目的は、このような活動を行っている方々に対して、相談技術の基礎を学べる機会を提供することです。
 
 メンターの行う相談活動は、ボランティア的な活動ですから、自分自身の状態にあわせて無理のない範囲で行うことが必要です。
 
 また、相談活動にはストレスを伴う場合もあります。メンター同士で支え合える環境を整えたり、発達障害者支援センターなどそれぞれの地域においてバックアップしてもらえる機関を持つことも重要です。
 
 メンターの具体的な活動としては以下のような内容が考えられます。
 
1 電話での相談
2 リソースブックでの地域情報の提供と地域専門機関への紹介
3 支部やブロックによるグループ相談会でのアイデア提供
 
 メンターに対する支援やフォローのシステムは、まだ十分に整備されているとは言えませんが、この研修を通じて各支部でのメンター制度の在り方について考えていって頂ければ幸いです。
 
2 養成講座の目標
・同じ親として障害理解や障害受容への支援を行うための基本的面接技術を習得する。
・自閉性障害に関連する基本的な知識を習得する。
・それぞれの地域におけるリソースブック作成を通して地域情報の収集と情報提供を行うための技能を習得する。
・地域ごとの親の相談に関する交流を図り、ネットワークを構築する。
 
3 養成講座の内容・流れ
ベーシックコース
(1日目)
講座のガイダンス
 ペアレントメンターの説明や全体の講座の目的について流れや進め方について説明を行う。
 
リソースブックについてのガイダンス
 リソースブックの意義とその作り方について、サンプルを出しながら説明する。
 リソースブックをどのように相談に生かすかの説明を行う。
 
公開講座 自閉症に関する基本的知識
 知的障害を伴う自閉症から高機能・アスペルガータイプまでを対象とし、幼児期〜成人期までのライフステージを通した課題や支援について基本的理解を深めるための講義を行う。
 
交流会
 地域ごとの活動について情報交換や交流を行う。
 
(2日目)
講義 相談の技術 基礎
 親の障害受容の変遷、相談の基礎技能となる傾聴や共感などのとらえ方と技術について講義を行う。
 
実習のガイダンス
 実習の進め方について説明する。面接実習のグループ分けについては、地域・経験・事前アンケートの内容などを考慮して各グループに偏りが生じないように配慮する。各グループの人数は6-9人とし、各グループごとに実習講師と実習補助者が一名ずつ割り振る。
 
面接のデモンストレーション
 個別面接の良い例。悪い例などを実習講師・補助者で示す。
 
傾聴・共感等の基本的な面接実習
グループディスカッション
まとめ
修了証授与
 
フォローアップコース
講義・情報交換 自閉症協会・各支部の活動について
講義 相談の技術 応用
実習のガイダンス
電話相談実習
インシデント・プロセス法実習
グループディスカッション
まとめ
修了証授与


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