災害ボランティアセンター検証研究会
下諏訪町災害救援ボランティアセンターの活動より
2006年7月19日に長野県で発生した集中豪雨水害において、下諏訪町では7月22日より社会福祉協議会が中心となり、災害救援ボランティアセンターを設置した。センターにて積極的に活躍された方々と、地元自治会の方々と共に当時を振り返り、「住民主体」「一人ひとりを見つめた支援」を意識したセンター運営のあり方について、意見交換を行った。
□ 日時・場所:2006年3月18日(日)/下諏訪総合文化センター
※この企画は、同日下諏訪町社会福祉協議会主催で行われた平成18年度下諏訪町ボランティア連絡協議会総会・研修会終了後に実施したものです。
□ 参加・報告:浦野愛
[参加者]
・災害ボランティアの会:青木航志氏・小口秀明氏
・下諏訪町ボランティア連絡協議会会長:有賀せつ子氏
・前下下諏訪町第4区区長:石川富造氏
・下諏訪町社会福祉協議会事務局次長:中村良夫氏
[内容]
・県からの職員派遣はありがたかったが、自分たちのように「地域のために何か役に立ちたい」という純粋な気持ちで作業をしていた人たちばかりではなく、作業することだけが目的になっているように見えた。(小口)
・地域を少し見てきただけでも困っている人がいることは明らかなのに、センター開設当初はボラセンにいても、ほとんどニーズが上がって来なかった。何のためのセンターなのか分からず、独自で動いた方がよっぽど早く、役に立つ活動ができるのではないかと思った。そのため、ミーティングで「一人ひとりを見つめる支援」という課題提起を受けた時には、「これだ!」と感じ、自分から要望を出せない人に声を出しやすいきっかけを作りたいと考え、『おせっかい隊』を提案した。結果的に被災者の方からは喜ばれた。(小口)
・センターを組織的に運営していくことで頭が一杯になってしまって、被災者の方の顔が見えなく、疲労だけが蓄積していった時期があった。適度に休むことも必要だということを知った。(青木)
・地区ボランティアは災害発生直後から、着の身着のままで約20名が集まり、避難所へのおにぎり配布などを行っていた。このような活動は住民にとってとても心強かった。また、暗い雰囲気だった避難所の中も地区ボランティアの方々が世間話をしたりと明るい雰囲気を作ってくれ、それが心のケアにもつながった。このように被災した人の心をきちんと捉えられる人の存在が安心感につながると思う。(石川)
・もともと下諏訪町には、日常から地域に対して思い入れのある人たちが多く、日常から地域の中で積極的に活動していた地区ボランティアは、被災者のニーズ拾いや声かけ活動に最適な存在だった。地元が主体となって今後も継続的に被災者のケアを行うことを考えれば、この時期に地区ボランティアと連携していくことは重要であると感じていた。また、「何かしたい」という想いはあっても、普段は受身がちで、自ら積極的に活動を生み出していくという姿勢には欠けている面もあったため、活動の活性化の後押しにもなるのではないかという期待があった。(中村)
・社協とは、今まで災害救援ボランティアセンターの設置への協力については特に取り決めはなかったが、今回の訪問活動を通じて、自分たちが担っていく役割の重要性を自覚した。活動自体は小さなものだったが、訪問した際に被災者が見せるホッとした表情や出てくる要望を聞き、普段からつながりのある人が関わらなければ見えてこないニーズが沢山あると実感した。(有賀)
[まとめ]
・下諏訪町では、平成16年度より「災害救援ボランティアセンター運営委員会」を設置し、ある程度の事前準備や学習を重ねていたが、「ボランティア受付部門」をいかに上手く運営していくか、とういことに捉われすぎていたように感じた。
・コーディネーターとしてセンターに配置されているスタッフの中で、現場に出て被災地を回ったり、直接声を聞くという姿勢やその必要性を認識していた人は少なかったと感じた。
・しかし、現場の生の声を伝えることで、センターにいては見えて来ないニーズが埋もれていることを理解し、具体的にどのような活動メニューが必要であるのか、誰がそれを担えるのかについて話し合いを深めることができた。
・外部支援者の役割としては、地域が自ら主体的に動き出せる「きっかけ」をいかに作っていけるかだと思う。その「きっかけ」とは「被災者の生の声の伝達」と「過去の被災地における具体的な活動メニューの例示」である。メニューを提案するのではなく、例示することで、地元ボランティアの中からある程度の支援イメージが沸き、自分たちのアイデアとして「訪問活動」や「おせっかい隊」などの提案につながったように感じる。
・また、これらの被災者の生の声が届いたことで、ボラ連に見られるように「自分たちも力になりたい」という応援団も地元の中から多く出てきたように思う。
・このような地元の力を信じつつ、気づきのペースに合わせながら、すべての活動の始まりは「被災者の声に耳を傾けること」を共有することができれば、災害ボランティアセンターが機能だけに捉われない、「被災者一人ひとりを見つめた支援」が展開できる拠点に近づいていけるのではないかと感じた。
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