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横田港(広島県)における「放置型船舶処理促進事業」一掃スキーム実施に関する報告書

 事業名 沈廃小型船舶処理促進
 団体名 日本舟艇工業会 注目度注目度1


はじめに
 今後、排出の増加が予測されるFRP(ガラス繊維強化プラスチック)船の適正処理と効果的なリサイクルを目的に、日本舟艇工業会では、国土交通省舶用工業課の協力のもと、平成17年度から瀬戸内海沿岸および北部九州の西日本10県において、プレジャーボートを中心としたリサイクル事業に取り組んでいます。18年度においては、先の西日本を含め、関西、中部、北陸に対象エリアを拡大し、19年度に予定される全国展開を目指しています。
 自治体が処分する所有者不明船において、今年度からご支援いただきました貴財団の助成による一掃スキームの対象地域として、広島県福山市の横田港において、長年放置されたFRP船の撤去作業を12月6日に実施しました。
 以下に、FRP船の撤去により、地域の自然と景観が保全された、横田港における一掃スキームの成果をご報告いたします。
 
1. 横田港の概要
 広島県福山市の南部に位置する内海町(横島)にある横田港は、広島県が管理する地方港湾。かつてはフェリーが発着していたが、本土とつながる内海大橋の開通(平成元年)により、横田港を発着する旅客船は廃止された。また、平成15年2月、当時の沼隈郡内海町は、芦品郡新市町とともに福山市に編入され、現在に至っている。
 
2. FRP船処理に乗り出した背景
 平成17年10月に、尾道海上保安部は福山地域事務所の港湾課(県の出先機関)に対し、内海町横島地区の通称「しやごし浜」(横田港の一部)に放置された船舶、車輌、ゴミの整理を促す内容の指導があり、また同時期に、地元の自治会からも同様の要望が港湾課に寄せられた。
 連絡を受けた港湾課は、放置された船舶などの所有者に対し、自主撤去を促す張り紙を貼付したものの、成果は思うように上げられなかった。
 その後、同年12月9日に、地域の清掃活動を行う地元の内海小学校3年生の児童から、「総合的な学習の時間」の一環として、廃船処理に関する質問が港湾課にファックスで送られた。これをきっかけに、今年1月、港湾課をはじめ、福山市、自治会、建設業者によって、しやごし浜に放置された廃船18隻のうち、8隻が処分された。
 
内海小学校3年生が送った廃船処理に関する質問と、港湾課の回答
 内海小学校3年生が、昨年12月に福山市地域事務所の港湾課へ送った手紙には、次のようなことが書かれていた。
 
 「いま、総合的な学習の時間で海の様子を調べています。すると、内海のしやごしのはまは、ごみがたくさんすててありました。そこで、みんなで海のことをしらべています。私たちは、ゴミをなくす方法グループです。それで、次のことについて教えてください。
 
(1)しやごしのはまをきれいにするくふうを、していらっしゃいますか。
(2)私たちが、しやごしのはまに行った時、船がありました。その船は、11月30日までにかたづけないといけないのにかたづけてありません。どうされるのですか。
 私たちは、しやごしのはまをきれいにしたいのです。協力していただけないでしょうか。おいそがしいと思いますが、おへんじをくだされば、さいわいです。よろしくお願いします。
 
 港湾課の担当者は、質問の2に対し、次のような回答を子供たちに返した。
 「いま、しやごしの浜に置きっぱなしになっている自動車や船の持ち主をはりがみをして調べています。持ち主がわかったものは、自分でかたづけるよう持ち主に連絡します。また、持ち主がわからないものについては、広島県がみんなの税金でかたづけます。しかし、かたづけるのにたくさんのお金がかかるため一度に全部を片付けるのはなかなかむずかしいです。」
 
 このようなやり取りをきっかけに、8隻の廃船が今年1月に処分された。その後も、内海小学校の児童や地元町内会、内海町在住の福山市職員らが定期的に、しやごし浜の清掃活動を続けている。そして、浜に残った10隻の所有者不明の船が、今年度の一掃スキームによって撤去されることになった。
 
3. 一掃スキームによる廃船撤去の実施
 地元の小学生の問い合わせをきっかけに動き出した横田港しやごし浜の廃船処理は、広島県の協力を得て、今年度の一掃スキームの対象地域に選ばれ、先般実施された。
 
●撤去の実施日:平成18年12月6日(水)
●処理隻数:10隻(ディンギー、モーターボート、和船)
●撤去の立会い:広島県福山地域事務所、国土交通省中国運輸局、自治会
●取材メディア:朝日新聞(福山支局)、山陽新聞(福山支局)、大陽新聞(福山市)
 
 横田港の桟橋からほど近いしやごし浜は、横島で唯一残された砂浜(長さ約150メートル)が道路沿いに広がり、因島に架かる西瀬戸内自動車道(しまなみ海道)の因島大橋を眺望する、風光明媚な瀬戸内海沿岸にある。この浜はもともと、漁業者の網干し場として利用されてきたが、漁業の衰退により、地元の人たちの憩いの場として利用されるようになった。
 横島地区連合会自治会会長の渡邉哲司さんは、「船やゴミが捨てられるようになったのは、20年以上も前から。自治会では流れ着いたゴミを定期的に清掃しているが、船の場合、所有者がいるから勝手に処分できない。長さが5メートル以上もあるので、処分しようにもわれわれではとても無理。今回10隻を処分すると聞いて、浜がようやくきれいになると、地元でも喜んでいる。今後も地域が一丸となって、環境美化に務めたい」と話してくれた。撤去当日は自治会の清掃日に当たり、10人ほどの会員が参加し、ペットボトルや漂流ゴミなどが集められた。
 浜には、ディンギー、モーターボート、和船など10隻が打ち捨てられるように放置されている。見る限り、10年、20年を経過した船が多い。なかには、所有者自身が破砕したと思えるようなFRPの残骸も見受けられた。
 午前10時から、地元関係者のほか、取材に訪れた新聞者の記者の目の前で、船の撤去作業が開始された。まず浜のあちこちに放置された船を1カ所に集め、1隻ずつユニック(小型クレーン)で吊り上げ、トラックに積み込まれた。船の長さは5メートル前後のものが多いため、そのままの状態で運搬が可能だ。
 東広島市の産業廃棄物処理業者のトラック3台でピストン輸送し、10隻の廃船は午後2時頃にすべて撤去され、しやごし浜は元の姿を取り戻した。この浜は、浜昼顔の自生地として知られているが、船が処分された浜には来年、今年以上に浜昼顔の花が咲き誇るに違いない。
 撤去に立ち会った福山地域事務所港湾課の野田勝則さんは、「地元の子供たちと自治会の熱心な取り組みにより、廃船が撤去され、きれいな浜に戻った。県の予算だけでは一気に片付けられなかった。一掃スキームの助成はありがたかった。これからも環境を大切にし、地元と一緒に清掃活動を続けていきたい」と話してくれた。
 なお、撤去した廃船は、素材のFRPを小さく破砕したのち、セメントの原燃料にリサイクルされる。
 
4. 再発防止に向けた看板の設置
 しやごし浜をこれからもずっときれいに維持するための再発防止策として、地元の内海小学校の児童が書いた絵をモチーフにした看板が製作され、浜の2カ所に立てられた。通常の「ゴミ捨て禁止」の看板に比べ、自然の大切さを独自の視点で捉えた子供たちの絵が看板になったことで、関心度も高くなり、マナーの向上に役立つに違いない。なお、この看板は、福山地域事務所が製作し、12月21日に関係者にお披露目された。
 
5. 内海小学校の橋本校長
 廃船処理の機運を盛り上げた福山市立内海小学校(児童数73人)は、広島県環境部が支援する環境保全活動のボランティア活動団体「せとうち海援隊」に認定され、海浜の清掃活動や生物調査を通して、海の環境を考える活動を続けている。こうした子供たちの環境活動が、しやごし浜の廃船撤去の実現につながった。
 しやごし浜の廃船の撤去作業終了後、その報告を兼ねて、同校の橋本博子校長に面談した。「ゴミを捨ててはいけないという張り紙を読んだ子供たちが、なぜ浜に船が捨てられているんだろう、そんな疑問から地域事務所へファックスを送りました。子供たちの活動で、浜がきれいになり、本人たちも喜ぶでしょう。これからも地域と一体になり、自然環境を守っていきたい」と、橋本校長は語ってくれた。
 学校の廊下には、昨年の3年生がしやごし浜の清掃の際に集めたゴミで作った人形が展示されている。また、同校は、平成16年度から18年度にかけて、経済産業省の「エネルギー教育実践校」に指定され、「総合的な学習の時間」の発展学習に取り組んでいる。そのひとつとして、全児童でEM菌をプールに投入し、プール排水を浄化させる活動を行っている。プールの水を捨てる前にEM菌で浄化し、海に流そうという環境保全活動だ。
 FRP船のリサイクル事業はまだ始まったばかりだが、内海小学校のような熱心な環境保全活動を支援する意味でも、地域の景観を守る一掃スキームを、ほかの地域においても導入されるよう願っているところである。
 
6. 一掃スキームの評価
 今回実施された一掃スキームによるFRP船の処理に関して、地元自治会の渡邉会長、内海小学校の橋本校長、福山市地域事務所港湾課担当者にヒアリングした内容を集約すると、「大切な地域の自然が取り戻せた」という言葉に表せられるだろう。子供たちの廃船処理に対する地域事務所への問い合わせをきっかけに、地域が協力しあい、かけがえのない浜の自然を取り戻した意義は大きい。また、広島県が負担する所有者不明船の処理費用を支援することで、早期の撤去を実現した。
 また、再発防止策として、子供たちの絵をもとに製作された不法投棄防止の看板も立てられ、一掃スキームの目的を達成したものと思っている。地域の熱心な取り組みにより、ゴミのないきれいな浜に回復したしやごし浜は来年、海水浴やバーベキューを楽しむ人たちでにぎわうに違いない。


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更新日: 2019年6月8日

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