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3 海賊事件等の状況とセキュリティ対策
3(1)海賊・武装強盗事件の発生件数
・この1〜2年、件数は減少傾向
・ハイジャック型から誘拐型へ
 
2001 2002 2003 2004 2005 2006
マラッカ海峡 17 16 28 38 12 0
シンガポール海峡 7 5 2 8 7 1
その他マレーシア 19 14 5 9 3 3
その他インドネシア 91 103 121 94 79 19
※国際海事局による。2006年は第1四半期のみ。
 
3(2)海上テロへの懸念
 
・9/11以降、懸念高まる
・想定されるシナリオ:
(1)船舶への攻撃?
(2)シージャック→自爆テロ?
・ロイズのJoint War Committeeによる戦争危機地域指定(2005年6月)
・海上テロの蓋然性?
・マ・シ海峡封鎖は可能か?
 
3(3)沿岸国によるセキュリティ対策
 
・海上セキュリティ対策は沿岸国の海上治安機関(海軍、海上警察等)の責務
・連携による取組み
(1)MALSINDO: 海上警備(2004年7月〜)
(2)Eyes in the Sky: 空からの警備(2005年9月〜)
・民間機関である国際海事局(IMB)も大きな役割(情報提供、個別事件対応)
 
3(4)日本による海賊対策への支援
・「海賊対策国際会議」(2000年)、「アジア海上保安機関長官級会合」(2004年、2006年)における対策の協議
・巡視船の派遣による連携訓練、研修等による人材育成支援、海上保安機関設立への支援等
・アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)の実施に向けた支援
 
ブルネイとの海賊対策連携訓練(2005年8月)
(海上保安庁提供)
 
3(5)今後のセキュリティ対策の方向性
 
・国により海上治安機関の能力に大きな格差
→全体としての能力向上が課題
・国境を越えた追跡の可能性?
・アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)の効果的運用
→インドネシア・マレーシアの加盟問題
 
※沿岸国間の思惑の違い、強い国家主権意識が常に協力のネック
 
4 沿岸国と利用国との協力をめぐる動き
4(1)国際海峡における協力に関する国連海洋法条約の規定
 
第43条(航行及び安全のための援助施設及びその他の改善措置並びに汚染の防止、軽減及び規制)
 海峡利用国及び海峡沿岸国は、合意により次の事項について協力する。
(a)航行及び安全のために必要な援助施設又は国際航行に資する他の改善措置の海峡における設置及び維持
(b)船舶からの汚染防止、軽減及び規制
 
4(2)協力の機運ができるまで
 
・1994年、国連海洋法条約発効
→マ・シ海峡における協力の議論開始
→しかし、協力の実現に至らず
・中国が協力の意思表明(2004年10月、マラッカ海峡会議・クアラルンプール)
→以降協力の機運高まる
 
(背景)セキュリティへの懸念
→マ・シ海峡がクローズアップされる
 
4(3)協力の具体化への動き
 
・TTEG・利用国協力会合(2004年12月:ジャカルタ、2006年3月:シンガポール)
・・・航行安全対策
 
・IMO会議(2005年9月:ジャカルタ、2006年9月:クアラルンプール)
・・・航行安全、セキュリティを含め議論
 
4(4)沿岸国の相反する思い・受容と拒否
 
受容のベクトル
沿岸国が航行安全・セキュリティ対策のコストを負担
→「利用国も負担すべき」
拒否のベクトル
マ・シ海峡は沿岸国の主権下にある
→「他国の介入は許されない(特にセキュリティについては)」
 
4(5)強まる拒否のベクトル
 
これまでの協力
航行安全対策に関する協力
・・・海事関係機関相互の友好関係に基づく協力
今後の協力
セキュリティも含めた協力
・・・外交・防衛関係機関が議論に参画
 
国家主権意識への拘泥から拒否のベクトルが強まる恐れ
 
5 新たな協力の枠組み構築に向けて
5(1)検討の視点
(1)協力の分野(航行安全・セキュリティ)
一体的に検討or切り離して検討?
(2)協力プロジェクトの進め方
個別プロジェクト・ベースor包括的枠組み?
(3)資金負担の仕組み
通航料賦課or任意の資金拠出?
※負担の仕組みとしては、現物供与、直接参加もありうる
 
5(2)検討の視点(1)
 航行安全とセキュリティ:一体or切り離し?
 
一体的に検討:包括的・効果的な対策可能(例えば船舶動静把握は航行安全・セキュリティの双方に寄与)
(問題点)セキュリティは国家主権に関わる微妙な面多し→検討に時間要する恐れ
切り離して検討:微妙なセキュリティの問題を避け、航行安全対策を先行して進められる可能性あり
(問題点)
・航行安全とセキュリティを切り離せるか?
・従来航行安全とみなされてきた分野でも、外交・防衛関係機関の介入によりブレーキがかかる動きあり
 
5(3)検討の視点(2)
 個別のプロジェクト・ベースor包括的枠組み?
 
個別プロジェクト・ベース
各利用国がそれぞれの支援したいプロジェクトを支援
→調整容易→早期の協力実現が可能
(問題点)プロジェクト相互の整合性取れない恐れ
包括的枠組み
沿岸国・利用国全体の協議により、プロジェクトの選定・順位付けをし、総合的・体系的に支援を実施
(問題点)協力実現に時間を要する恐れ
 
5(4)検討の視点(3)
 通航料or任意拠出?
 
通航料の賦課:利用度を負担割合に反映でき公平
(問題点)通航船舶に強制する場合、国連海洋法条約との関係で議論あり(IMOでの議論必要)
・第26条:課徴金は特定の役務の対価としてのみ
・第43条:利用国と沿岸国の協力の必要性
任意拠出:条約に関わる議論不要、また、少数の関係国の合意で実施可→早期実現の可能性
(問題点)どのように負担の公平性を確保するか
 
5(5)まとめ
 
・マ・シ海峡の通航量の増加・重要性の高まり(日本の国益にも直結)
→国際的協力の枠組み構築が急務
→我が国としても、沿岸国・利用国間の議論を促していく必要あり
 
・航行安全・セキュリティをどう扱うかが大きな議論のポイント
→我が国として戦略的に進めることが必要


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