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3. 株式会社カミテにおける取組
 株式会社カミテは、1988(昭和63)年2月にソニー(株)、十和田オーディオ(株)、秋田県鹿角郡小坂町の勧誘により秋田県誘致企業として設立された。プレス金型の設計製作及びプレス加工を主要業務とし、従業員数は男性15名・女性15名となっている。
 一般に、育児支援を積極的に行っている企業は、大企業や大きな利益を計上している企業であると言われているが、当社では小規模ながら、「少数精鋭主義により、お客様の成長発展に貢献することを第一とする」及び「社員と会社の双方の発展、幸福を追求し、明るく楽しい職場づくりを目指す」という経営理念のもと、事業所内託児施設の整備運営や休業・休暇制度の充実を図り、仕事と子育ての両立支援に取り組んでいる。
 
(1)事業所内託児施設(カミテチャイルドハウス)の整備運営
<施設概要>
・設立:2000(平成12)年3月
・敷地面積:601.31m2
・建物面積:105.99m2
乳児室9.94m2、調乳室4.97m2、幼児室66.79m2、保母室9.94m2
・保育士:常勤2名(保育士資格あり)。この他、兼務の保育士1名。
・保育定員:10名
 現在は1歳児・3歳児各2名、4歳児1名、6歳児3名の計8名。
 この他、小学1・2年生ぐらいの子どもも、学校の休暇時に学童保育として自由に受入可能な体制を整えている。
・保育時間:8時〜19時
 勤務時間(8時〜17時)に合わせて保育を行い、保護者が残業する場合はそれに合わせるが、定時退社に向けた社内全体の努力により、最近はほとんど定時にて終了している。
・保育料金:無料
・その他:建設費及び年間運営費(ほとんどが人件費)の半額につき、21世紀職業財団からの助成を受けている。
 
 この事業所内託児施設においては、昼食時には親子で一緒に食事をとることや、休憩時間中に親子で一緒に遊ぶことを認めている。お互いにすぐそばにいるという安心感から、子どもが保育中に泣くことはあまりなく、親も安心して働くことができる。
 
 
 
(2)休業・休暇制度の充実
(1)育児休業制度、育児短時間勤務
 休業期間は子どもの3歳の誕生日の前日までとし、休業期間に情報提供、復帰後に職場復帰直後講習を実施している。休業期間を子どもの3歳の誕生日の前日までとしているのは、事業所内託児施設を整備したことにより、従業員の間に、「産休が明けたら、すぐに託児施設に預けて働かなければならないのではないか」という風潮が出ることを抑え、従業員それぞれの考えを尊重しつつ精神的な負担なく育児休業の取得を促進するためである。実際のところ、育児休業給付金が1年間の給付となっているので、現在までのところ1年を超えて育児休業を取得する従業員はない。
 
(2)介護休業制度、介護短時間勤務
 休業期間は93日であるが取得回数の制限はない。休業期間に情報提供、復帰後に職場復帰直後講習を実施しているのは育児休業の場合と同様。
 
(3)妊婦特別有給休暇制度
 女性従業員の妊娠が判明してから出産までの間、5日間(正社員で40時間、パート社員で30時間)の有給休暇を与えている。当社では有給休暇は全て1時間単位で取得することができる点が特徴。
 
(4)配偶者特別有給休暇制度
 配偶者が出産する男性従業員に対し、既に設定されている出産時2日の有給休暇に加え、妊娠中より子ども1人につき5日(40時間)の有給休暇を与えている。
 
(5)看護休暇制度
 子どもの検診及び予防接種、家族の病気の際に利用可能。0歳から小学校就学前の子ども1人につき年5日(40時間)、小学校から高校卒業までの子どもを持つ従業員1人につき年2日(16時間)の有給休暇を与えている。
 
(3)当社が仕事と子育ての両立支援に取り組んでいる理由
・少数精鋭主義であるため、せっかく育てた従業員に育児や介護で退社されるのは会社にとっても損失であること、
・育児や介護が精神的な負担、肉体的な負担になって、従業員の能力が充分に発揮できないのも、育児や介護による退社同様、会社にとって損失であること、
・従業員の、育児や介護に参加したいというニーズに応えていく結果として、従業員のモチベーションや士気が高まり、生産性を向上させると考えていること、
が挙げられる。
 
(4)制度活用のポイント
(1)多能工育成による欠員カバー
 従業員向けのアンケート等で、休めない一番の理由として、「自分が休んだらかわりにその仕事をこなしてくれる人がいない」ということが聞かれるが、その対策として、1人の従業員が何種類もの仕事をできるように多能工として育成し、欠員カバーに充てている。当初は欠員カバーのためではなく、受注の波による部署ごとの繁閑の差を埋めるために、従業員を流動させて、全体での人員の最適化を図る体制をとるために行われた。
 多能工育成のその他のメリットとしては、1人の従業員が色々な部署を経験することによって会社全体の動きを見る・横のつながりをつけることができ、それによって社内の協力体制やチームワークを強化することが挙げられる。
 
(2)育児と介護をセットに不公平感をなくす
 当社の従業員は、親の面倒を見るために東京等からUターンしてきたり、地元に就職した者がほとんどであるため、いずれ親の介護の問題が発生する。子育て支援を行う際に、子育てを終えた従業員から「昔はこのような子育て支援はなかった」等の意見があるが、その際に当社では、子育て支援同様、介護に関しても、従業員の意見を聞いて準備するとともに、子育てを終えた従業員に対し「いずれあなた方が介護で休む時に助けてくれるのは、今の若いお父さん、お母さんですよ」というメッセージを発し、従業員の相互理解を深めるように努めている。
 
(5)制度利用状況(2001(平成13)年4月以降)
対象者数 利用者数 利用率
育児休業制度 女性
男性
1
5
1
2
100%
40%
妊婦特別有給休暇制度 1 1 100%
配偶者特別有給休暇制度 5 5 100%
看護休暇制度 女性
男性
12
8
12
8
100%
100%


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