日本財団 図書館


4 徳島県、鳴門市、香川県、善通寺市
国内調査の概要
1 調査対応者
・林 健久(東京大学名誉教授、前地方財政審議会会長)
・山中 昭栄((財)自治総合センター参与、元防衛施設庁長官)
・辻 弘昭(前横浜市主税部長)
・池田 達雄(総務省自治税務局税務企画官)
 
2 実施時期
平成18年10月
3 調査事項及び調査先
(調査事項)
・超過課税への取り組み
・債権管理局の設置
・滞納整理機構の設置
・税務行政の課題及び取り組み
・その他
 
(調査先)
10月11日(水)・・・
鳴門市税務課
10月12日(木)・・・
徳島県税務課、徳島滞納整理機構
香川県税務課
10月13日(金)・・・
善通寺市債権管理局
 
徳島県、鳴門市、香川県及び善通寺市における税務行政の現状・取組について
総務省自治税務局税務企画官 池田 達雄
国内調査の趣旨・内容
 
 税源移譲により地方税のウェイトが高まり、今後、地方税への住民の関心はこれまで以上に高く、かつ厳しいものになる。一方で、税制全般についていえば、今後、消費税を含む税体系の抜本的改革に取り組んでいかなければならない。こうしたことから、18年度の当研究会では、今後の地方税制のあり方、地方税における徴収対策、課税自主権の発揮等について研究しているところである。
 今回の国内調査においては、各地方団体において、
・徴収対策や納税環境整備について、どのような取組がなされているか
・課税自主権の発揮について、どのような取組がなされているか
・今後の地方税制のあり方について、どのように考えているか
について調査を実施することとした。
 具体の調査項目は、以下のとおりである。
 
《調査対象項目》
(1)当該団体における税財政の概略(財政状況、税収の状況、税務組織、徴税システムの概要等)
(2)税務行政の現状と課題
(3)徴収対策に関する取組状況
(4)コンビニ納税、クレジットカード納税など徴収や納税環境整備の面での新しい取組
(5)民間委託や再任用職員等の活用状況
(6)課税自主権の発揮に関する取組状況
(7)地方税制のあり方についての考え
(8)その他(税源移譲広報に関する取組状況等)
 
I 鳴門市における税務行政の現状及び取組
 かつては、豊かな競艇事業の収益基金に支えられ、福祉、教育など全て直営方式により、手厚い行政サービスの提供や、都市基盤施設の整備などを行っていたが、長引く不況による景気の低迷等により、歳入が大幅に減少する一方、少子高齢化対策や環境問題への対応等社会経済情勢の変化に伴う新たな行政需要が増加する等、財政環境は一段と厳しい状況。そういった中で、徴収率の向上及び自主財源確保等への取組みが重要な課題。
 
1 鳴門市財政健全化計画(H18〜H21)の策定(H18.6)
 
○徴収率向上に向けた取り組みの推進
取り組み事項:電話催促、臨戸訪問、差し押さえの強化、「徳島滞納整理機構」との連携等
数値目標:平成21年度までに、徴収率91%以上に引き上げ。(17実績:86%)
○さらなる超過課税、法定外税の導入の研究
(平成17年度から軽自動車税について適用済み(標準税率の1.2倍))
 
2 徴収率について
 
 17年度の徴収率は、現年分97.9%(過去最高)、滞納繰越分12.8%、合計86.1%となっている。
 15年度までは低下傾向、16年度より上昇に転じている。徴収率が上昇した要因としては、臨戸訪問の強化、徳島滞納整理機構移管に対するアナウンス効果等があげられる。
 しかし、県内平均(90.8%)と比較してもまだ低いレベル。これは滞納繰越分の徴収率が伸び悩むことが要因である。その中で、鳴門市独特の特徴としては、特別土地保有税の滞納額全体に占める割合が高い(22%)ことがあげられる。(参考)県内の徳島市、小松島市、阿南市では、同割合が0.8%〜5.7%程度。
 バブル経済期において、その地理的条件からリゾート開発が進められ、広大な土地がリゾート用地の先行取得というかたちで取得され、それに伴い特別土地保有税も課税されていた。しかし、バブル崩壊後は、リゾート開発も進まず、広大な土地が利用されないまま、取得企業の倒産が相次ぎ、さらなる徴収困難な滞納税額が増えるに至っている。
 
3 徴収対策について
 
○「鳴門市税滞納処分審査委員会」の設置(H17.12)
 税負担の公平性を確立するため、滞納処分を市政全般の課題として捉え、国税庁OBを顧問に迎え、特に大口・悪質滞納者に対する滞納処分の実施や逆に同処分の執行停止等について審査・決定する機関(委員長:助役)。また、「徳島滞納整理機構」への移管案件の是非、検討・審査も行う。年3〜4回開催。
 
○「徳島滞納整理機構」への移管
 平成18年度の徳島滞納整理機構への移管件数は40件。なお、移管選定外の滞納者についても、同整理機構への移管準備の中で得た財産調査や債権差押、取り立てのノウハウを活かしているところ。
 例えば、預貯金、生命保険に加えて、H18から売掛金債権の差押(2件)を行っている。
 
○徳島県との連携
・地方税法第48条に基づく個人住民税の徴収引継ぎ制度の活用。
(H18: 約5百万円を引き継ぎ済み)
・県税事務所との合同徴収の実施(H18: 約百万円)
・県税事務所徴収職員の短期派遣制度について、平成19年度以降の活用を検討中
 
4 課税自主権の動向
 
 軽自動車税の超過税率の適用については、「財政健全化計画」の中で、財源確保の一手段として議論されてきた。
 これは、財政の健全化を実現するためには、競艇事業に依存しない行財政システムを確立することが不可欠であり、徴収強化に向けた取り組みとともに、軽自動車税の超過税率を選択したものである。
 軽自動車税の超課税率については、平成16年の第1回定例市議会にて、市税賦課徴収条例の一部改正案の可決。当初は、財源確保の観点から、16年度より施行すべきではとの議論の中、住民に対する周知不足が顕著に見られることなどから、住民の理解を得る期間が必要であるとの考えの基、実施時期を1年遅らせ17年度から適用した。
 この間、市の広報誌、ホームページ等、また納税通知書発送時に税率変更についての文書を同封するなどの方法により、広く市民に広報活動を行った。
 さらに、NHKの報道番組である「クローズアップ現代」にて全国ネットで放送されたことにより、鳴門市の財政状況等についても、市民の理解が深まったこともあり、超過税率適用後においても苦情や問い合わせもほとんどなく、スムーズな課税スタートが可能となった。財政効果は年間、23百万円程度。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION