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5 徴収対策の取組状況と課題
 「地方税の収納・徴収対策等に係る調査」(平成18年8月28日付総税企第184号)の結果【資料5】を参考にしつつ、各地方団体における「歳入確保」「効率化」のための取組状況とその課題について述べる。
 
※この調査は、基本的に平成18年7月1日現在の状況について、回答を求め、平成18年9月25日現在で47都道府県及び1842市区町村から回答があったものである。
 
(1)収納手法の多様化
 
(1)コンビニエンスストアへの収納委託(コンビニ収納)
 
 先にも触れたように、コンビニエンスストアへの収納(以下、「コンビニ収納」という。)は、平成15年度地方税制改正の一環として、地方税の納税機会の拡大を図るため、地方自治法施行令を改正して新たに認められることとなったものである。この改正は、平成14年における構造改革特区の第一次提案などにおいて要望が出されたものであるが、この改正が行われるまで、地方税については私人への収納委託が認められていなかった。そもそも地方団体の公金については、その性格からして、取扱い上の責任を明確にし、公正を確保するため、私人に取り扱わせることは原則禁止されている(地方自治法243条)。昭和38年の改正により、使用料、手数料等については、一定の場合に私人への徴収又は収納委託が認められたが、地方税についてはその対象から除外されでいたものである。
 近年、コンビニエンスストアで電話や水道、電気、ガスといった公共料金の支払いが広く行われるようになり、早朝から深夜まで休日なく営業しているという特性から、その利便性は広く認められるようになっており、普通徴収によって徴収されることが多い地方税についても、こうしたコンビニ収納を可能とすることが、納税者の利便性の向上・収納率の向上の観点から有益と判断されたことなどから、本改正が行われたものである。
 
(ア)実施団体数及び対象税目
 
 47都道府県のうち、23県がコンビニ収納を実施済みであり、その全てが自動車税を対象とし、東京都においては、個人事業税も対象としている。残る24県が未実施であるが、このうち11県は今後、導入予定、10県は導入に向けて検討中となっている。
 市区町村については、102団体が実施済み、82団体が導入予定、349団体が導入に向けて検討中である。対象税目は、実施済みの102団体のうち、軽自動車税が100団体、個人住民税が73団体、固定資産税が66団体、国民健康保険税が55団体となっている。導入予定とした団体でも、軽自動車税が最も多く、個人住民税・固定資産税がそれに続いている。
 
(イ)効果とコスト
 
 実施済みの団体について、都道府県は自動車税、市区町村は軽自動車税それぞれの期限内納付の状況がコンビニ収納導入前と導入後でどう変化したか調査されている。
 まず、自動車税については、納期内納付の割合が60〜70%前後であったものが、全ての県で導入後は数ポイント(最大は京都府の68.3%→74.3%で+6ポイント)上昇しており、滞納の新規発生の抑制、督促業務の軽減につながっていると評価できる。
 導入後における納期内納付に占めるコンビニ収納の割合は、団体によって差があるが、20%前後となっている例が多い。都市部の団体ほど高く、地方部ほど低い結果が伺えるが、コンビニエンスストアの立地件数や利便性なども影響していると思われる。
 市区町村分の軽自動車税についても概ね自動車税と同じ傾向が見られた。
 一方、収納委託に係る手数料負担(コスト)については、費用対効果の観点からの検討も必要となるが、実施済みの団体(回答があった団体に限る)の手数料水準の平均は、1件あたり58.6円となっている。地域によってコンビニエンスストアを取り巻く状況が異なること等から手数料設定に若干の幅があることが伺えるが、最小は50円弱から最大は68円強と18円程度の幅があった。この手数料水準については市場原理の中で個々の事情に基づき決定されるものであるため、コメントは難しい。ただ、電気料金などのように受益と負担の関係がイコールであるようなものとは異なり、地域社会の会費を住民が共同して負担しあう地方税の性格を踏まえ、さらに全国的にコンビニ収納が普及する中で業界の理解を得つつ、さらにこうしたコストが低減されていくことを期待したい。
 
(ウ)受付期限の設定
 
 コンビニ収納を納期限との関係でいつまで許容しているかについては、まず自動車税では、3県が「納期期日まで」、13県が「納期期日経過後、一定の期間まで」、2県が「期限を定めていない」と回答している。
 軽自動車税については、32団体が「納期期日まで」、48団体が「納期期日経過後、一定の期間まで」、7団体が「期限を定めていない」と回答している。
 通常5月末の納期期日を過ぎても、自動車税や軽自動車税では延滞金が発生するのは相当先であることから、一定期間はコンビニ収納を受け付けている団体が多いことがわかる。
 
(2)マルチペイメントネットワークの活用
 
 マルチペイメントネットワーク(以下、「MPN」という。)とは。「収納企業と金融機関との間をネットワークで結ぶことにより、利用者はATM、電話、パソコン等の各種チャネルを利用して公共料金等の支払ができ、即時は消し込み情報が収納企業に通知」される民間の決済基盤である。Pay-easy(ペイジー)とは、このMPNを活用して提供される収納サービスを指す。
 このMPNに地方団体の公金収納システムが接続・対応することにより、携帯電話や金融機関のATMなどを通じ、納税者が時間や場所を選ぶことなく地方税を含む公金の納付を可能とすることは、納税者の利便性が著しく向上するものと考えられる。
 現在、Pay-easy(ペイジー)による地方税の収納を導入している団体は、都道府県で10県、市区町村では3団体となっており、具体的に予定している団体は、都道府県で9団体、市区町村で8団体である。
 MPN接続のためのシステム改修などのコスト面での問題もあろうが、「いつでもどこでも納税できる」環境を整備する上では納税者の利便性向上に資する効果は大きく、さらに、自動車保有関係手続きのワンストップサービスに関しては、MPNを通した自動車税・自動車取得税等の納付が必須条件となっていることや金融機関によるモバイルバンキングのサービスが広く普及していることなどを踏まえると、今後その拡大が期待される。
 また、MPNに接続するためには、各団体で定めている地方税の納付書について、ネットワークが定めるMPN標準帳票に準拠する必要がある。当面、MPNへの接続について具体的な予定がない団体であっても、数年ごとに地方税や公金収納に関するシステム改修は行われており、そうした機会を活用しMPN標準帳票に準拠した納付書様式に変更することは、将来における二重投資防止の観点から重要である。
 この点について、平成18年4月1日付け総務省自治税税務局企画課長通知「地方税の収納に係るシステムを改修する際の留意点について」(総税企第88号)が示されているところである。
 
地方税の収納に係るシステムを改修する際の留意点について(通知)
 
 地方税など地方団体の徴収金(地方税法1条14号に定めるものをいう。以下、「地方税等」という。)の収納については、納税者等が選択できる方法を拡大し、利便性の向上や納期内収納率の向上等を図る観点から、各地方団体において、収納代理金融機関の指定の拡大や口座振替納税の推進などに加え、コンビニエンスストア等への収納事務委託(いわゆるコンビニ納税)の導入、クレジットカードを活用した収納方法の検討など、地域の実情に応じて、多様な取り組みが行われているところです。
 また、金融機関等が構築しているマルチペイメントネットワーク(MPN)を活用した収納力法についても、指定金融機関や収納代理金融機関等が提供するインターネットバンキングのサービスを利用した電子納付が可能となることや、金融機関や郵便局の現金自動預払機(ATM)で現金やキャッシュカードによる納付が可能となるなど、収納方法の拡大や納税者等の利便性の向上の観点から、有意義なものと考えられます。
 地方団体がMPNを活用して地方税等の収納を行う場合には、納付書の様式をMPN標準帳票に準拠したものとする必要がありますので、地方団体におかれては、地方税等の収納に係るシステムの更新や改修(市町村合併に伴うシステムの改修など)の機会をとらえてMPNを活用した収納サービスを導入することや、当該更新・改修の機会に納付書様式の変更(MPN標準帳票に準拠した様式への変更)を行っておくこと等について、電算システムを合理的に更新・改修していく観点から、指定金融機関等と協議しながら、十分に検討していただくことが適当と考えられますので、ご留意願います。
 また、貴都道府県内の市区町村に対しても、この旨をご連絡くださるようお願いいたします。
 
 今回の調査結果では、この標準帳票の利用について、都道府県では9県、市区町村では20団体が対応済み、今後具体的な予定がある団体は、都道府県で5県、市区町村で24団体となっており、必ずしも十分な状況ではない。
 
(3)電子申告(eLTAXの導入)
 
 eLTAXとは、地方税の電子申告等を行うためのポータルシステムの相性である。行政手続きの電子化が進められる中、国税・地方税に関する手続き、特に申告についての電子化は重要な課題である。地方税の電子申告については、平成17年1月から、岐阜県、大阪府、兵庫県、和歌山県、岡山県、佐賀県の6県が先行して法人2税の申告受付を開始、順次残りの都道府県・政令市に運用が拡大しつつある。
 この調査時点では、電子申告を導入している団体は、都道府県で46県、市区町村で13政令指定都市となっていたが、現在は、既に全ての都道府県及び政令指定都市、一部の一般市町村において法人事業税、法人住民税、固定資産税(償却資産)について運用が開始されているところである。
 地方税の電子申告については、納税者が窓口に赴くことなく、オフィスなどから申告手続きを行うことが可能であり、さらに項目の自動入力や税額の自動計算などを通じて、正確かつ簡易な申告書作成が可能となる。また、ポータルシステムを採用しているため、複数の申告先にそれぞれ提出する必要なく、システム側で自動的にそれぞれの地方団体へ振り分けて送信することが可能であるなど、納税者の利便性向上に資する効果は大きい。今後は市区町村において順次運用団体が拡大し、全国的に地方税の電子申告が可能となる環境整備が期待される。


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