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3. 中国内陸河川航運企画
3.1 中国における内陸河川航運発展計画
 
図14 中国内陸河川航運主要発展計画概況
 
3.1.1 国家レベル―「中国内陸河川航運発展の長期計画」
 2001年、中国政府は内陸河川航運発展の長期計画を制定し、中国内陸河川航運業の近期、中期、長期の発展目標を明確にして、各段階に分けて内陸河川航運事業の発展を促進する。
 「中国内陸河川航運発展の長期計画」の主要内容は次の表33のようにまとめる。
 
表33 中国内陸河川航運発展の長期計画
発展目標 期間 計画内容
短期 2010年までに
・基本的に揚子江、珠江及び京杭運河を核心とする水運の主要通路及び揚子江デルタ、珠江デルタの水上網に「2横1縦2網」という航路体系をつくる。70%以上水運の主要通路(河川20本、総距離15,000キロメートル)は計画の通航基準に達する。
・揚子江水系、珠江水系など港のコンテナ、ばら積み雑貨の専門化した運送システムをつくる。運送船舶の現代化、大型化を強力に推進し、初歩の船型標準化を実現する。
・揚子江口の深水航路整備工事を完成する。
中期 2010年から2020年までに
・基本的に15,000キロメートルの水運主要通路、水網地域には500DWT以上の船舶が通航できる主要航路ネットワークを作る。港には基本的に機械化を実現し、専業化運送系統を形成する。
・港と航路との相互サポート可能の保障システムを構築する。
・運送船舶は基本的に現代化、大型化と標準化を達成する。
・揚子江、珠江など主要河川の運送現代化の発展段階に入る。
長期 2020年から2050年までに
・中国全国の水運主要通路を建設し、航路システムを一歩進んで整備する。
・港の生産、管理の現代化を実現し、地域の総合的な物流基地となる。
・合理的な分布、科学的な管理、先端な技術、港、航路、船舶の協調的な発展、その他運送方式と互いに繋がり、障害のない近代的な内陸河川の水上運送システムを形成し、国民経済及び社会発展に対し、徐々に内陸河川運送環境の改善を進めていく。
出典:MIRU調べ
 
3.1.2 地域性
3.1.2.1 「揚子江デルタ地域における現代化道路水路の交通計画要綱」
 2005年3月、中国交通部は「揚子江デルタ地域における現代化道路水路交通計画要綱」を発布した。要綱の概要は以下のとおりである。
 
(1)2010年までの発展目標
●沿海港の建設と整備について
A. 上海市国際航運センターコンテナ幹線港等の大規模なコンテナ港の建設を優先し、連云港港、南通港、南京港、鎮江港、温州支線港の大規模なコンテナバースの建設を加速させ、それらの港建設に応じて関連のフィーダー港の建設を実施し、コンテナ取扱能力を4,700万TEUにする。
B. 舟山港大型鉄鉱石中継バースの規模と能力を引き続き拡大し、揚子江入口の上海港、南通港、蘇州港などの大型船の減容積卸しバースを引き続き整備し、南京港、鎮江港など二次運送港を建設し、鉄鉱石積卸し能力を10,500万トンに達成する。
C. 寧波港、舟山港の20万トン級以上の大型原油バースを拡大し、原油積卸し能力を5,700万トンに達成する。
D. 発電所所有バースの建設を主として5万トン級以上の石炭埠頭の積卸し能力を高める。
E. 揚子江入口航路の整備工事(三期)を完成し、水深を12.5メートルにする。
 
●内陸河川航路の建設と整備について
 京杭運河の蘇北区間の通航能力を高め、江南区間の一部航路の通航条件を改善し、取扱能力を高める。
 上海市国際航運センターのコンテナ運送をサポートできる通路を建設し、京杭運河、杭甬運河、趙家溝、大芦線、大浦線、蘇申外港線、蘇申内港線、錫漕河、湖嘉申線、楊林塘などの航路を重点的に建設し、同時に運送需要の高い航路区間に対し整備を行なう。
 
(2)2020年までの発展目標
●沿海港の建設と整備について
 上海港を中心とし、寧波港と蘇州港及び揚子江幹線の南京以下の港を合わせて、上海市国際航運センターコンテナ運送システムを構成し、寧波港、舟山港の深水海岸線及び揚子江南京以下の港の岸壁を利用して、海から揚子江に入る対外貿易の大口ばら積み貨物の中継運送システム及び河川・海域物資中継運送システムを構成する。
 
●内陸河川航路の建設と整備について
 揚子江幹線と京杭運河を中核とし、三級航路を主とし、四級航路をサブとする高等級航路ネットワークを形成し、近代化した内陸河川航運システムを実現し、大口ばら積み貨物及び上海市国際航運センターに円滑に接続できる内陸河川運送航路を提供する。
 
3.1.2.2 「揚子江デルタ地域における高等級航路ネットワーク計画」
 交通部は江蘇省、浙江省及び上海市の交通主管部門の意見を求めた上で、2004年9月に「揚子江デルタ地域高等級航路ネットワーク計画」を公布した。同計画の内容は主に揚子江デルタ地域における内陸河川航運の現状、高等級航路ネットワークの分布計画、実施準備、具体的な措置などがある。
 
表34  「揚子江デルタ地域高等級航路ネットワーク計画」の主要内容
期間 主要内容
2009年末までに 約150億元を投資し、主要港と繋がっているコンテナ運送通路を建設し、主要区間及び「ボトルネック区間」航路の改造を行って、船舶通航の渋滞問題を緩和し、主要航路の通航を妨げる橋の改造を加速する。京杭運河、長湖申線、杭甬運河などの航路を重点に建設する。
2010年 内陸河川航路の基礎施設は基本的に運送発展の需要に適応し、良性的な発展段階に入る。
2011年〜2019年末までに 揚子江デルタ地域高等級航路ネットワークの計画目標を実現するため、高等級航路建設工事を引き続き行ない、航運サポート保障システムを整備し、揚子江デルタ高等級航路ネットワークをカバーする航運情報管理システムを構築する。
2020年 計画の目標を全面的に達成し、内陸河川航運の近代化を基本的に実現する。
出典:MIRU調べ
注:「揚子江デルタ地域高等級航路ネットワーク計画」の目標を実現するため、総投資額は約400億元で、うち2010年までに約150億元を、2011年〜2020年までに約250億元を投資する計画である。
 
3.1.2.3 「揚子江幹線航路の発展計画」
 「計画」の実施範囲:上は云南の水富から、下は上海の揚子江入口まで、全長は2,838キロメートルであり、工事総投資額は160億元を超え、うち120億元余りは航路の整備に使用される。
 
 「計画」の指導理念:全面的、協調的、持続可能な発展観を指導として、統一して各方面まで配慮し、高等級幹線航路の建設を行ない、支流の開発を加速し、揚子江幹線及び京杭運河を主軸とし、その他の主要航路を骨組とし、地域の重要航路をべースとし、その他の航路を補充としての航路ネットワークを作り、幹線と支線間の円滑な運送、河川・海域直航と水陸連結輸送を基本的に実現し、揚子江流域の経済発展を後押し、全面的な小康社会(国民生活がまずまずの水準に達した社会)の構築に適応する。
 
 「計画」の全体的な目標:2010年までに、千トン級のはしけ船隊が水富まで直接航行することができるように、万トン級の油送船隊は城陵磯まで、1万トン級のその他の海域航行船は銅陵まで航行することができるようにする。2020年までに、万トン級の船隊が重慶まで直接に到達することができるように、4万トン級の船隊が武漢まで直接到達することができるように、5万トン級の海域航行船が南京まで直接に到達することができるようにする。それと同時に、揚子江水系における主要航路の建設目標を達成し、地域重要航路の建設目標を基本的に実現し、三級以上の航路は7,000キロメートル以上を整備し、五級以上の航路は1.5万キロメートル以上を整備する目標である。
 「計画」の全体的な考え方:「深下流、暢中游、延上流」。
 「深下流」:「三沙」水路の整備を加速することを重点とし、南京以下航路の水深を深め、揚子江入口の深水航路整備工事と繋げる。2010年までに、南京以下航路の水深を全て10.5メートルにし、揚子江入口の三期工事が竣工後、揚子江の南京以下航路の水深を12.5メートルにする。
 「暢中游」:揚子江中流航路の主要のネック河川区間の整備を重点とし、同時に三峡工事の影響を真剣に分析し、タイムリーに控導工事を実施する。城陵磯から武漢までの通航妨害及び危険な早瀬の治水工事を行ない、航路の基準を高め、万トン級の油送船隊は満載で城陵磯まで直接到達することができるようにする。
 「延上流」:重慶以上の航路を系統的に整備し、航路の等級を三級まで高め、水富から重慶区間までは千トン級のはしけ船隊を通航できる建設目標を実現する。三峡工事期間の回水区変動の通航妨害及び危険な早瀬の治水工事を行ない、万トン級船隊が重慶まで直接航行できるようにする。


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