1.3 中国における主要港の物流現状
現在、中国における港の勢力を地域的にまとめると、以下の三大主要港グループを構成する。(1)深  港、広州港を代表とする華南珠江デルタ港グループ、(2)上海市、寧波港を代表とする華東揚子江デルタ港グループ、(3)天津市、大連、青島を代表とする華北環渤海港グループである。この三つの港グループは中国の主な沿海港と内陸河川港をカバーする。
表5 中国三大港グループ及びその経済波及地域
港グループ |
代表的な港 |
カバーする主要港 |
経済波及地域 |
環渤海 |
天津港
大連港
青島港 |
天津港、大連港、青島港、秦皇島港、黄 島港、唐山島港、烟台港、錦州港、日照港、威海港 |
東北三省、内モンゴル、河北省、天津市、北京市、山東省、山西省、寧夏など |
揚子江デルタ |
上海港
寧波港 |
上海港、寧波港、温州港、舟山港、南京港、鎮江港、南通港、連云港、張家港港 |
江蘇省、浙江省、上海市及び揚子江中下流地域のその他省市 |
珠江デルタ |
深 港
広州港 |
深 港、広州港、アモイ港、福州港、泉州港、北海港、湛江港、汕頭港、三亜港、珠海、 州港、防城港港 |
福建省、広東省、広西、海南省、江西省、華南地域、湖北省、云南省、貴州省及び四川など |
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●コンテナ運送システム
中国におけるコンテナ運送は港貨物運送方式の中において決してウエイトは大きくないが、発展が最も速く、経済収益も高い。2003年末まで、沿海の「規模以上の港」 6のコンテナ総取扱能力は4,452万TUEに達していた。うちコンテナ専用取扱能力は3,400万TUEである。現在、中国コンテナ運送システムにおいては、大連港、天津港、青島港、上海港、寧波港、アモイ港、深  港、広州港八つの港を幹線港とし、その他の主要中枢港を支線港とし、地方中小型港を「フィーダー港」としたコンテナ港の構成となっている。
6「規模以上の港」というのは年間貨物取扱量1,500万トン以上の沿海港、年間貨物取扱量1,000万トン以上の内陸河川の港である。以下同じ。
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●石炭運送システム
中国では石炭の産出地と使用地に関して「北石炭の南への運送」と「西石炭の東における調達」という言い方がある。北には秦皇島港、京唐港、天津港、黄  港、青島港、日照港、連云港港七つの石炭積載港があり、南には上海港、寧波港、温州港、福州港、アモイ港、汕頭港、深  港、広州港、珠海港、海口港などの石炭卸し港がある。
表6 
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2004年の中国における主要石炭積載港の石炭取扱量及び市場シェア
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名称 |
秦皇島港 |
天津港 |
黄 港 |
日照港 |
京唐港 |
連云港港 |
青島港 |
石炭取扱量
(百万トン) |
131.6 |
64.1 |
45.4 |
20.2 |
14.2 |
11.7 |
9.9 |
市場シェア(%) |
41.09 |
20.16 |
14.29 |
6.35 |
4.47 |
3.68 |
3.13 |
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●原油運送システム
2003年末時点で、沿海港には10万DWT以上の原油積卸バースが10基あり、積卸し能力は1億トンほどである。環渤海地域においては青島港、天津港、大連港三つの港を主とし、秦皇島と錦州二つの港をサブとする原油運送システムが構成されている。揚子江デルタ地域においては寧波港と舟山港の二つの港を中心とし、嘉興港、上海港、南京港などを中継港とする原油運送システムが構成されている。華南沿海地域においては泉州港、惠州港、広州港、茂名港、湛江港などを対外貿易原油の積卸港とする体制となっている。
2004年、中国における海運による原油輸入量は1.1億トンで、中国全体の原油輸入量の95%以上を占め、2003年に比べ37%増加した。
●鉄鉱石運送システム
2003年末まで、沿海港には10万DWT以上の大型鉄鉱石積卸バースが8基あり、積卸し能力は7,400万トンである。揚子江デルタには寧波港、舟山港、上海港と南通港など揚子江沿いの港で形成される対外貿易鉄鉱石運送システムがある。環渤海地域には青島港、天津港2港を主とし、秦皇島港、大連港、営口港と烟台港4港をサブとする鉄鉱石運送システムとなっている。特に大連港、営口港など港の専用バースの建設は環渤海地域の鉄鉱石運送システム港の分布を更に合理的なものとした。華南沿海地域においては、鉄鉱石運送への需要が少ないため、港の分布や埠頭・バースなどの建設が遅れている。
2004年、中国における沿海各主要港の鉄鉱石積卸量は前年比38%増の2.02億トンに達し、輸入鉄鉱石の港滞留現象が見られた。例えば、2004年7月の主要港鉄鉱石の港貯蔵量は3,400万トンと非常に高いレベルとなった。
2004年、中国の「規模以上の港」の貨物総取扱量は前年比25.2%増の33.03億トンを実現した。うち沿海の「規模以上の港」の貨物取扱量は前年比24.0%増の24.6億トンに達し、中国全体の「規模以上の港」の貨物総取扱量の74.5%を占めている。内陸河川の「規模以上の港」の貨物取扱量は前年比28.9%増の8.43億トンに達し、中国全体の「規模以上の港」の貨物総取扱量の25.5%を占めている。「規模以上の港」の取扱貨物種類別の構成を分析してみると、乾貨物は貨物総取扱量の87%を占め、液体貨物は貨物総取扱量の13%を占めている。大型乾ばら積み貨物の中では、石炭及びその製品、石油天然ガス及びその製品、金属鉱石、鉱石建築材料、鉄綱などのウエイトが特に高い。
図6 |
2004年の中国における「規模以上の港」貨物取扱量の種類別の割合 |
2004年、中国全国港の貨物総取扱量は前年比26.6%増の41.72億トンを実現した。うち沿海港の貨物取扱量は前年比23.0%増の25.38億トンに達し、中国全国港の貨物総取扱量の60.9%を占めている。2004年末まで、中国は8つの貨物取扱量1億トン以上の大型港(上海港、寧波港、広州港、天津港、青島港、秦皇島港、大連港、深  港)を擁し、うち上海港の貨物取扱量は3億トンを突破し、寧波港、広州港、天津港3港の貨物取扱量は2億トンを突破した。上記8つの貨物取扱量1億トン以上の港の貨物取扱量は計16.19億トンで、沿海港貨物取扱量の63.8%を占めている。
表7 2003年と2004年の中国における沿海港の貨物取扱量
データ項目 |
2003年 |
2004年 |
増加率
(%) |
中国全国港 |
(1)港貨物取扱量(億トン) |
32.96 |
41.72 |
26.6 |
うち対外貿易貨物取扱量(億トン) |
9.71 |
11.55 |
19.0 |
コンテナ取扱量(万TEU) |
4,867 |
6,160 |
26.6 |
(2)港旅客取扱量(百万人回) |
183.27 |
199.69 |
9.0 |
沿海港 |
(1)港貨物取扱量(億トン) |
20.64 |
25.38 |
23.0 |
うち対外貿易貨物取扱量(億トン) |
8.84 |
10.56 |
19.5 |
コンテナ取扱量(万TEU) |
4,455 |
5,662 |
27.1 |
(2)港旅客取扱量(万人回) |
6,450 |
7,634 |
18.4 |
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2004年、中国における沿海の「規模以上の港」の主要貨物取扱量を分析すると、食糧の取扱量だけが2003年より下がったが、その他の貨物の取扱量は上昇した。特に、金属鉱石と鉱石建築材料の増加幅が大きい。最近5ヵ年の中国における沿海の「規模以上の港」の主要貨物取扱量はこれらの港における貨物総取扱量のうち60%以上と高いウエイトを占めているが、近年小幅ながら下がってきている(以下表8を参照)。
表8 
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最近5ヵ年の中国における沿海の「規模以上の港」の主要貨物取扱量
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取扱貨物種類別 |
2000年 |
2001年 |
2002年 |
2003年 |
2004年 |
2004年増加率(%) |
石油及びその製品 |
234.0 |
244.1 |
257.8 |
304.4 |
350.5 |
15.2↑ |
石炭 |
325.4 |
372.0 |
402.8 |
468.7 |
571.1 |
21.8↑ |
金属鉱石 |
118.9 |
146.1 |
182.4 |
242.9 |
317.7 |
30.8↑ |
非金属鉱石 |
25.8 |
25.6 |
31.6 |
32.0 |
33.4 |
4.3↑ |
鉱石建築材料 |
72.6 |
96.6 |
125.7 |
146.9 |
185.3 |
26.1↑ |
食糧 |
56.2 |
53.4 |
55.6 |
74.7 |
71.6 |
-4.0↓ |
主要貨物合計 |
832.9 |
937.8 |
1,055.9 |
1,269.6 |
1,529.6 |
20.5↑ |
貨物総取扱量に占める割合(%) |
66.3 |
65.7 |
63.4 |
63.2 |
62.2 |
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図7 
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2004年の中国における沿海の「規模以上の港」の取扱貨物品種別の割合
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