4.2 クロアチア
(クロアチア経済概況)
人口440万人(2002年)のクロアチアの経済規模は比較的小さく、2004年の1人当たりGDPは7,795ドル(2003年は6,486ドル)である。1992年のユーゴスラビアからの分離独立以後、クロアチアの工業は衰退したが、他の東欧諸国に比べてその度合いは少なかった。EUは、クロアチアの経済成長率は2005年、2006年とも回復すると予測している。2005年予算案では、財政赤字を3.7%と予測している。財政赤字は2007年には3%以下に収まり、対外債務は80%以下になると期待されている。2004年の消費者物価上昇率は2%に抑えられている。(表4-2-1)
表4-2-1 クロアチアのGDP成長率(2000〜2005年第1四半期)
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2000 |
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
2005(Q1) |
前年比% |
2.9% |
4.4% |
5.2% |
4.3% |
3.8% |
1.8% |
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出典:
Candidate Countries'Economies Quarterly.EU
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クロアチアは伝統的にEU諸国との貿易関係が深く、輸出入ともEUのシェアが50%を超えている。EU内では、イタリア、ドイツ、オーストリアが主要貿易相手国である。2000年以来、クロアチア−EU間で2つの貿易協定が締結され、貿易量は倍増した。2000〜2004年に、クロアチアからEUへの輸出は37%増加した。これはクロアチアの貿易赤字削減にも寄与し、2003〜2004年には同国の貿易赤字は対GDP比27.4%から24.3%に減少した。また、同時期に経常赤字は対GDP比7.0%から4.7%に減少した。
クロアチアの貿易赤字は1997年以降順調に減少しているが、輸入が増加、輸出は減少傾向にある。クロアチアの主要輸入品目は、石油製品、自動車、船舶、IT機器及び医薬品である。一方、主要輸出品目は、船舶・ボート、石油製品及び繊維・アパレルである。農業、漁業がGDPの8.1%、食品・飲料製造、タバコ産業が20.2%を占めている。クロアチアの輸出は95%が工業製品で、造船、食品・飲料製造、金属及び電気が主要産業である。
表4-2-2 クロアチアの対内直接投資(2000〜2005年第1四半期)
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2000 |
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
2005(Q1) |
対GDP比直接投資% |
5.7 |
5.9 |
2.7 |
6.9 |
2.6 |
2.3 |
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出典:
Candidate Countries' Economies Quarterly. EU
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クロアチアヘの外国からの直接投資は2003年のピーク後、減少している。(表4-2-2)EU加盟候補国として、クロアチアはEU援助プログラムPhare、SAPARD、CARDSからの援助を享受している。2005年のEUからの加盟準備補助金総額は約1億500万ユーロに上る。
東欧地域の他の市場化移行経済の中では、クロアチアへの投資額は中間に位置し、特に工場設立型投資が伸び悩んでいる。クロアチアの独立後の主な財源は、戦略的国営企業の民営化への外国からの対内投資であった。売却された「戦略的」資産とは、国営の公益企業、保険会社及び銀行等である。2005年初めの時点で、国営企業民営化を担当するクロアチア民営化基金は、ホテル、農業関連企業、アルミ工場、製鉄所2社、造船所等、計1,035社の株式を所有している。
1993〜2003年の10年間のクロアチアへの対内直接投資額は101.1億ドルで、その半分以上が、通信(20.9%)、金融(19.6%)、医薬品(11.3%)及び石油製造(7.8%)に投資された。国別では、オーストリア(25.7%)、ドイツ(20.7%)及び米国(14.7%)が主な投資国である。一方、クロアチア企業による1993〜2004年第3四半期の国外投資額は、12.7億ドルで、主な投資先は、スイス、ポーランド及び旧ユーゴ(ボスニア・ヘルツェゴビナ及びセルビア・モンテネグロ)である。
クロアチアに投資を行った主な外国企業は、MOL(ハンガリー)、Deutsche Telekom(ドイツ)、Banca Commerciale Italiana(イタリア)、Erste und Steiermarkische Bank(オーストリア)、Unicredito Italiano(イタリア)、Austria Creditanstalt Group(HVB Group)(オーストリア)及びHeineken N.V.(オランダ)である。66
(クロアチア運輸セクター)
クロアチアの運輸セクター(鉄道、道路等陸上交通を含む。)は、1990年代の政治情勢不安で大打撃を被り、国内の港湾はイタリアのトリエステ港やスロベニアのコペル港等、近隣諸国の港湾にビジネスを奪われた。現在、クロアチアの海運業は回復基調にあり、貨物取扱量を増やすための港湾開発計画が進められている。
欧州復興開発銀行(EBRD)と欧州投資銀行(EIB)は、クロアチアの港湾からハンガリー等の近隣諸国までの陸路整備プロジェクトを支援している。また、クロアチア国営鉄道は、リエカ、プロツェ等の国内港湾を鉄道で結ぶプロジェクトに20億ユーロを投資している。この2つのプロジェクトは、今後のクロアチアの港湾開発に不可欠である。
(クロアチアの主要港)
リエカ港:クロアチア最大の港湾で、同じく北アドリア海港湾連合(NAP)のメンバーであるスロベニアのコペル港、イタリアのモンファルコーネ港、トリエステ港と競合している。2010年にはコンテナ貨物量が処理能力を超えると予想されており、設備投資が必要である。リエカ港は年間272.6万トンの貨物を取り扱い、売上高は2,500万ユーロ、従業員数は約1,400人である。
プロツェ港:クロアチア第2の貨物港で、近隣には競合する港湾がなく、クロアチア国内及び近隣諸国向けに年間約110万トンの貨物を取り扱っている。従業員数は約600人。同港の貨物の23%はハンガリー向け、16%はオーストリア、スロバキア、チェコ向けである。
ザダル港:クロアチア第2位の旅客港で、年間貨物取扱量は約36万トンであるが、今後輸出業者向けの貨物取扱が増える可能性がある。
シベニク港:1834年以来、Drnis-Severic地方からの石炭の輸出港。その後、燐酸の主要輸出港となった。年間貨物取扱量は約57万トン、従業員数は約180人である。
スプリト港:バルカン戦争中に輸送量が激減した港であるが、現在はクロアチア最大の旅客港として、行楽客の多い近隣の島々への出発点となっている。年間貨物取扱量は約11万トン、従業員数は約220人である。
プーラ港:年間貨物取扱量は約49万トン、従業員数は44人である。
オミサリ港:原油輸入の専門港。
(クロアチア港湾政策)
2001年4月、クロアチア政府は、リエカ港湾局向けにSamsungの貨物取扱設備3,450万ドル相当の輸入に関する契約を韓国経済開発協力基金と交わした。7年間の支払い猶予期間付の25年契約である。
また、イタリア政府はクロアチアのドブロブニク港湾局にインフラ整備の援助を行い、カナダはクロアチアの鉄道網整備プロジェクトに援助を行っている。67
Rotterdam Maritime Groupは、国際復興開発銀行(IBRD、世界銀行(以下「世銀」))から150万ドルのコンサルタント資金を受け、リエカ港の戦略的開発計画を作成した。また、2003年7月には、世銀は「リエカ・ゲートウェイ・プロジェクト」向けの1億5,650万ドルの融資を承認した。同融資は支払い猶予期間5年付きの15年返済で、リエカ港湾局(5,510万ドル)、クロアチア道路事業社(7,620万ドル)、クロアチア高速道路事業社(1,570万ドル)が、リエカ港設備の構築または拡張を担当する。
同プロジェクトの概要は以下の通りである。
●コンテナ・ターミナルの貨物取扱及び保管設備の拡張。
●一般貨物ターミナルの再建とクレーンの新規購入。
●内陸倉庫スペースの追加建設。
●サイロの再建。
●冷凍ターミナルの拡張。
プロジェクトの総コストは2億6,400万ドルで、世銀による1億5,650万ドルの融資は、世銀のクロアチアへの融資総額の22%に相当し、同国最大の世銀融資プロジェクトとなっている。68
ドブロブニク港は、EBRD、イタリア、オランダ、スペイン、英国、米国からの融資を受け、大型化するクルーズ船の寄港増加に対応する港湾設備の大幅拡張プロジェクトへの準備作業を行っている。これに加え、将来的には民間企業による港湾地域開発が予定されている。プロジェクト準備作業には、国際会計基準の採択、マーケティング戦略の構築、ビジネス・プランニング等が含まれている。
(クロアチア造船業及び関連産業)
クロアチアの造船、海運及び関連産業は、18世紀半ばから20世紀初頭に創立された多くの造船所とともに、同国経済の歴史における大きな役割を担ってきた。近年、これらの造船所は伝統的な艦艇建造から商船建造にビジネスを移行している。クロアチアの輸出に占める造船業(関連サービスを除く)のシェアは12%である69。造船所の受注状況は好調で、大手造船所は設備と工程の近代化による生産性と競争力の向上をめざしており、今後のシェア拡大が予想される。
クロアチアの造船業は伝統的に輸出に主眼を置いており、20世紀半ばから世界70カ国に船舶を輸出していた。クロアチア造船工業会Jadranbrodは、50年以上前に設立され、造船所と舶用企業を結ぶ役割を果たしている。また、Croatian Shipbuilding Corporation(CSC)はクロアチア政府が設立した機関で、新造船建造と融資の管理を行っている。1997年には両機関がHrvatska Brodogradnja d.d. (CSC)として統合され、以下の6大造船所の企業団体となっている。
●ULJANIIK SHIPYARD−新造船建造専門
●3. MAJ Shipbuilding Industry−新造船建造専門
●BRODOSPLIT Shipyard Ltd−新造船建造専門
●TROGIR Shipbuilding Industry−新造船建造及び修繕
●KRALJEVICA Shipbuilding Industry−新造船建造及び修繕
●VIKTOR LENAC Shipyard−修繕、改造、オフショア(再建中)
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