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千葉県立関宿城博物館 平成17年度企画展 「高瀬船物語」 図録

 事業名 海と船の企画展
 団体名 関東海事広報協会 注目度注目度5


高瀬船と船大工
船大工の技
 かつて、川船大工は流域の各所にいた。江戸中期の「明細帳」などをみてみると、村々には船大工を職業とする者の名が記されており、少なくともこの頃にはすでに存在していたことが確認できる。経営形態としては、通常は家族経営で、二、三人の職人を伴うことが多かった。ただ、高瀬船を一艘造るには、最低でも四、五人の職人が必要だったとされている。船大工にとって、高瀬船の注文を受けることは、何よりも誇りであった。しかし、昭和四〇年代以降になると、FRP船といって、強化プラスチックによる造船技術が定着し、和船大工は急速に姿を消していったのである。
 船大工になるのには、家大工などと同様、親方について技術を学び、年季や年季奉公といった修行を積んだ。ことに年季奉公では、親方の家に住み込み、仕事や家事の手伝いをしながら、無給で働いた。弟子にとって、仕事は「見て覚えるもの」「体で覚えるもの」だったのである。かくして「年明け六年」とよくいったように、六年間ほど修行を積み、明ければ親方から一人前の証として、大工道具や紋付き袴などを祝いに戴いた。一人前の目安としては、もちろん一人でも造船可能となったときであったが、なかでも、板図の図面引きと材への墨差しは重要視されていたのである。
 船大工は、ツバの付いたノミなど特殊な道具を使い、木殺し・すり合わせといった独特の技法をもって、板と板とを接ぎ合わせ、造船していった。そして、このとき使用したものに、船板図がある。板図は、船大工が造船する際、留意点がわかるように板に描いた図面のことで、船大工はこれを目安とし、見ながら造っていったのである。そのため、必ずしも正確な縮尺図というわけではなく、しかも側面図一枚だけであることが一般的だった。しかし、船大工はこれをみただけで理解できた。つまり、木取りといって、長さ幅をもとにした各部の位置関係などの対比率はほぼ決まっており、それを覚えていることが前提でなければ、図面は引けなかったのである。船大工にとって、船体構造を知っているか、いないかは根本的なことであった。
 
儀式をあずかる船大工
 造船工程の最終段階では、船下ろしといって、今日でいう進水式が行われた。しかし、それは単なる祝い事というわけではなく、船大工にとってはもっとも重要な儀式のひとつであった。そこで行われたのが、船に船霊(ふなだま)を入れ込むということだった。
 船霊とは、船に宿ると信じられていた神霊のことで、賽子(さいころ)や銭、男女の人形、髪の毛、五穀など、これらそのものを一括して御神体とする。伝統的工法による造船技術では、船大工が船下ろしに先立って埋め込むもので、秘伝相伝とされ、最終段階で行われる儀礼のひとつである。筒柱などの根元に埋め込むことが多いが、それは海船の場合であって、川船ではほとんど知られていない。しかし、利根川高瀬船の場合は例外であった。利根川高瀬船が川船とされつつも、海船と共通点があるとされるのは、その船体構造のみならず、このこともその理由のひとつである。船霊を文化要素のひとつとして位置づけ、香取の海の時代から継承されてきたものとすれば、利根川高瀬船の前身は、もともと海船からの派生であって、しかも大きな船であったとの推論も可能である。
 
No.39 船下ろし
森栄一氏蔵
 古写真。昭和元年(1926)頃。境河岸付近の堤防上。これから新造船の船下ろしをするというところ。筒(つつ)には五色の吹き流しが立てられ、前倒しにした幟が括り付けられている(→No.41)。幟にはの印もみえる。そのツツの前で右手を掲げ、拍子木を叩いているのが船大工棟梁の森万蔵である。船主は同じく境河岸の山下福蔵で、船は400俵積み程度のものとみられる(→No.43・44)。
 
No.40 祝進水式
当館蔵
 古写真。昭和二年(一九二七)一二月。関宿桐ヶ作(現・野田市)の上原造船所(→No.45)にて。進水式(船下ろし)を祝って記念に撮す。たくさんの人々の後ろには高瀬船のモギがみえる。暗がりのなかに吹き流しも垣間見える。
 
No.41 進水船図奉納額
101.4×57.7×3.0cm
大王寺蔵
 奉納額。板絵部分。明治14年(1881)4月。奉納者は渡辺長蔵。長蔵は、西親野井(庄和町)で船大工を営んでいた者。「心願成就」を祝って奉納したこの船絵馬は、船下ろしの図である。船はNo.39と同様の飾り方をしており、幟を前倒しにするのは、このときの作法であったらしい。船上には5名、後方からは3名が船を押している。うち、ツツの前で拍子木を叩いているのが棟梁かと思われる。舵をはずしてあるところが写実的である。
 


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