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千葉県立関宿城博物館 平成17年度企画展 「高瀬船物語」 図録

 事業名 海と船の企画展
 団体名 関東海事広報協会 注目度注目度5


高瀬船と舟運の発達
香取の海
 中世あたりまで、霞ヶ浦や北浦、印旛沼・手賀沼等々はひと続きとなっており、そこには広大な内海が展開していた。この内海のことは、その一部をさして香取の海、あるいは香取の浦・香取潟などと、時代によってさまざまに呼ばれてきたようで、それ全体を示す呼称はなかったとみられる。香取の海とするのは汎称である。
 一二世紀前半の成立と推定される『今昔物語集』巻第二五では、この内海について「衣河ノ尻、ヤガテ海ノ如シ」と記している。衣河とは現在の鬼怒川に相当するが、その注ぎ込むあたりをまるで海のようだというのである。そしてさらに、下総国と常陸国の境をなすこの海を「内海」とも「人海」とも表現し、「此ノ海ノ中ニ、浅キ道ノ有リケル」と括っている。ここは海とはいいつつも、諸所に人の渡れる浅瀬があるような、水深の浅い海だった。
 一二世紀後半以来、香取神宮の支配下には海夫がおかれていた。海夫は、この香取の海に散在した津(港)に集住し、専門的な漁撈活動を生業としていた人びとで、応安七年(一三七四)頃に書かれた「海夫注文」には、すでに津の数が下総国で二四か所、常陸国で五〇か所以上あったことが記されている。海夫は、各津の地頭を通して浅海で獲れた魚介類を香取神宮に供菜料(神祭物)として貢進し、そのことによって香収の海での漁撈と船の運航の特権を保証されていたのである。そして、次第に彼らは人や物資を運ぶ廻船などの水上輸送も活発に行うようになっていった。近世の利根川水運以前に、佐原・潮来・神崎・石岡・大船津・古渡津(江戸崎)などといったところは、早くから商業集落として成り立っていたのである。
 
利根川の東遷
 近世初頭、幕府は水運・治水・新田開発、あるいは軍事的防備などの目的から、約六〇年の歳月をかけ、利根川をはじめとする隣接河川の流れを変える大規模工事を行った。その結果、利根川は現在のように銚子で太平洋へと注ぐようになり、並行して香取の海は堆積、干拓されて陸地化していった。それ以前の利根川は、直接江戸湾(東京湾)へと流れ込む河川だったのである。今日では、これを利根川の東遷(とうせん)と呼んでいる。そして、これを端緒として、利根川水系各所には多くの河岸(かし)が新たに生まれ、やがて関東地方の経済を支える一大流通網が形成されていった。もちろん、その主役となったのが大型輸送船、利根川高瀬船であった。
 利根川の東遷は、おおまかにいうと(1)現在の古利根川筋を流れていた利根川本流を渡良瀬川の下流だった太日川へと流す、(2)新川通と赤堀川を開削して利根川を常陸川筋へとつなげる、(3)江戸川を開削して利根川本流を庄内古川の流路からさらに東へと遷す、という段階を踏んだ流れとなっている(図表3)。ただし、近年の研究では、江戸川の開削は寛永一七年(一六四〇)開始説が有力である。いずれにしても、文禄三年(一五九四)会の川の締め切りにはじまった“瀬替え”は、承応三年(一六五四)の赤堀川の増削・通水をもって完了した。こうして利根川水系の舟運の舞台が整ったのである。
 
にぎわう河岸
 当初の利根川水運は、年貢米輸送を契機として発展していった。そして、それはやがて河川交通の発達を促し、さらなる流通網を生み出した。流域の各所には、積荷の揚げ下ろしをする輸送の中継地が求められ、搬送や積み出しを請け負う問屋が登場するようになって、河岸と呼ばれる新たな町場が次々と誕生していったのである。江戸時代も半ば頃になると、こうした輸送の仕組みも整い、かつてない舟運の全盛期を迎えていった。
 各地の河岸問屋は、もとより公的に認められることで、幕府による管理下におかれていた。しかし、江戸が大消費地として発展してくる江戸中期を過ぎると、流域各地では輸送運賃の値上げ要求や、積み荷の奪い合いなどの争い事が起こってくる。このことは、すでに河岸問屋が把握しきれないほどあって、多くの商品貨物の流通や、それを担う川船が存在していたことを物語っていた。
 江戸へと向かう高瀬船は、米穀類をはじめ、酒や醤油、干鰯やたばこなど、流域各地の特産物を運び、帰りには塩や砂糖など、上方からの物資を運んでいった。舟運は、地場産業をも育んだのである。そして、これら商品貨物は河岸を窓口として、関東各地の農村にも浸透してゆき、自給自足を建前としていた江戸時代の農村を、やがて経済流通網に組み込んで行く結果となった。しかし、江戸時代も末になると、輸送貨物の増加などから運送業界は過当競争の時代を迎える。その結果、あらたに船を持つ者や問屋を開業する者などが現れ、それまで河岸問屋を通してまとまつていた体制も崩落の一途をたどったのである。
 
図表3 利根川の東遷
(拡大画面:329KB)


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