ごあいさつ
房総の漁業は、江戸時代以来発展を続け、明治・大正時代は漁具や漁法の改良をもとに近代化が行われた時期でした。その一方でこの時代、歌川広重等の浮世絵師や浅井忠などの画家が房総に滞在し風光明媚な海辺の風景とともに、当時の漁村や漁業の様子を描写しました。これらの作品は、当館の収蔵する漁撈民俗資料が使われていた状況を具体的に知る上で参考になり、美術的な価値のみならず房総の海辺景観の変遷や漁業の実態を示す貴重な資料といえます。
今回の展覧会では、浮世絵、絵画を鑑賞していただくとともに、当館が収蔵する漁撈民俗資料をもとに江戸時代から大正・昭和にかけての漁業に携わる人々の様子や海辺の風景について御紹介します。この展示を通して房総の自然と漁業の歴史について理解を深めていただき、今後の発展を模索する上での一助となれば幸いです。
平成17年7月
千葉県立安房博物館長 御園生 光江
1. 本図録は、千葉県立安房博物館において、平成17年7月8日(金)から9月4日(日)まで開催する平成17年度企画展「描かれた海辺の風景」の展示解説図録です。
2. 展示資料の一部については写真の掲載を省略しました。
3. 本図録の展示資料一覧と実際の展示品は、展示替えのため一致しない場合があります。
4. 本展覧会及び図録の編集は、当館上席研究員丹羽敏之が担当し、学芸課職員が補佐しました。
5. 本図録の図版に付した数字の番号は、展示資料一覧の番号と一致します。
[表紙]浅井忠 漁婦(千葉県立美術館蔵)、左下 ドビンカゴ(本館蔵)
[裏表紙]葛飾北斎 千繪の海 総州銚子(千葉県立上総博物館蔵)
二曲一双の屏風で昭和26年の作品です。ジュバンやサルマタを着用した若い潜り海女で、ヒトツメガネやイソガネ、ウキダル、タマリなどが描かれています。
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