5. 改良ウィスカーウィービング法による六面体メッシュの生成
提案する自動六面体メッシュ生成プロセスにおいては、自己交差のない表面四角形メッシュの生成後、本研究で開発した改良ウィスカーウィービング法を用いてメッシュを生成する。
5.1 改良ウィスカーウィービング法
ウィスカーウィービング法では、Fig. 2で示したように、ウィスカーシートと呼ばれる2次元空間上で六面体要素間の位相的つながり具合の情報を生成する。具体的には、主に、物体形状のコーナー部での六面体要素生成(Fig. 18)、形状の表面上での要素配置、形状内部の要素配置の順にウィービングが行われる。その後、Primal Constructionと呼ばれる手法により、完成シートから実際の3次元要素データを生成するとともに、内部節点座標を決定する11,12)。このように、従来のウィスカーウィービング法では、ウイービングプロセスにおいて3次元実空間は考慮されないため、位相的に正しい六面体メッシュが生成されたとしても、最終的に形状の悪い六面体ができてしまうことがあった。本研究では、このような問題を緩和するために、下記のような改良ウィスカーウィービング法の開発を行った。
(1)Primal Constructionを行う代わりに、要素と節点のデータを、ウィービングプロセスの間に生成するようなプログラムの開発を行った。具体的には、ウィービングプロセスにおいてSTC-Vertexが生成される度に、新しい1つの要素と、関連する節点・要素面のデータを3次元空間上に作成できるようにした。また、このような要素・要素面・節点とその間の関係を表現するために、C++言語を用いてオブジェクト指向型のプログラムを開発した。ここでは、例として3つのシート上におけるSTC-Vertex生成ステップにおける改良点を記す(Fig. 18)。図のように、ウィスカーウィービングの最初のステップとして、3つのシート上でのSTC-Vertex生成が行われる(Fig. 18(a))。これは、実空間上ではFig. 18(b)のように(2)(5)(12)の3つの面を元に、1つの六面体を生成することに相当する。よって、改良型ウィスカーウィービング法では、既存の節点情報(図中N0〜N6)より、新たに生成する節点座標を決定し、節点N7を生成する。そして、新しい要素及び要素面情報を関連する節点情報より作成することができる。なお、ここでは、コーナー部からの要素生成の際の節点座標決定法を示したが、物体表面・または内部における要素配置や要素どうしの結合(Invalid Connectivityのチェック11,12))の際等にも上記と同様に節点要素の3次元配置が考慮されている。
Fig. 18 Arrangement of a Hexahedron from Corner
(a) Sheet Status
(b) Arrangement of a Hexahedron in 3D-space
(2)改良ウィスカーウィービング法では、ウィービングプロセスと3次元の六面体要素生成を同時に行うため、要素生成中における要素形状の質のチェックを行うことが可能となる。これにより、従来のウィスカーウィービング法でしばしば生成される、物体表面付近における悪い形状の要素の生成を避けることができる。具体的には、アスペクト比が0に近い、または(有限要素のヤコビアンが負になる)反転した要素が生成される場合には、要素生成を後回しにすることにより、悪形状の要素生成をある程度防止することが可能となる。なお、ウィスカーウィービング法のアルゴリズム詳細については、文献11)12)を 参照されたい。
5.2 改良ウィスカーウィービング法による要素配置
Fig. 19に改良ウィスカーウィービング法により、3次元空間上への要素配置を行った例を示す。本論文で提案する手法により、ウィービングプロセス中に適切な形状の要素配置が可能となったことがわかる。またFig. 20に、同じ表面四角形メッシュ(Fig. 20(a))に対して、本研究で開発した改良手法と従来の方法 12)とによるメッシュ生成結果を示す(Fig. 20(b)(c))。改良手法により、有限要素解析に用いることのできないダブレット要素(Fig. 23(b) 参照)の生成を防ぐとともに、生成される六面体要素数(Hex)も少なくメッシュ生成時間(Windows Xeon3.2GHz)が短縮されたことが確認された。このように貫通穴の無い凸形状に対しては、本研究で開発した六面体メッシュ生成手法により形状の良い要素を効率的に配置していくことが可能となった。
Fig. 19 |
Hexahedral Mesh Generation by Improved Whisker-weaving Method |
Fig. 20 |
Comparison of the Generated Mesh between the Conventional Whisker-weaving Method and the Improved Method |
6. 六面体メッシュ生成例
本節では、3節で提案した六面体メッシュ生成法の有効性を示すためにいくつかのメッシュ生成例を示す。
Fig. 21は、立方体の表面に円状のラインが存在するために、不規則な242個の四角形から成る四角形表面メッシュが入力データとして与えられた例である(Fig. 21(a))。このデータには90個の自己交差する四角形が存在するためこのままでは、内部を六面体で満たすことができない。そこで、本論文で提案した表面四角形メッシュの修正を行うと、自己交差のない928個の四角形から成る表面メッシュが生成された(Fig. 21(b))。さらに改良ウィスカーウィービング法を適用することで、Fig. 21(c)のような2339個の節点で1880個の要素から成るメッシュが生成された。Fig. 19〜Fig. 21の例で示したように、本提案手法により、比較的単純な凸な立体については適切にメッシュ生成が行えることがわかった。
Fig,22に、溶接構造を想定したソリッドモデルに対するメッシュ生成例を示す。入力データ(Fig. 22(a))は、514の四角形表面メッシュであり、4っの自己交差面が存在する。本研究で開発された手法により、これが自己交差のない四角形メッシュに変換され、最終的に4945節点・3856要素の六面体メッシュが生成された(Fig. 22(b))。また、Fig. 22(c)に、このモデルを用いて前面(Face: A)に-y方向の引張り荷重σを与え、奥面(Face: B)に対称条件を与えた場合の有限要素解析例(σy/σの分布)示す。このように、本提案メッシュ生成手法により、解析に用いることが可能なメッシュ生成が行える。
Fig. 21 Mesh Generation for Cube Model
Fig. 22 Mesh Generation for Welded Plate Model
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