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5. 等価板厚評価式の適用
 本章では、2軸圧縮、1軸圧縮とせん断の組合せ荷重、2軸圧縮とせん断の組合せ荷重、面内曲げ、及び、面内曲げと1軸圧縮を受ける円錐形の腐食ピットが発生している鋼板の最終強度に対応する等価板厚を前章で提案した評価式により予測し、その適用性について検討した結果について述べる。
5.1 2軸圧縮を受ける板
 下式で示されるような2軸圧縮を受ける場合について解析を実施した。
 
σxy  ・・・(15)
 
 ここで、σx及びσyはFig. 1に示す圧縮応力である。Fig,14(a)、(b)及び(c)にそれぞれの板厚(t0=10、13及び16mm)における腐食ピットが存在する場合の等価板厚比te/t0とピット面積率DOPの関係を示す。これらの図には、式(10)による予測結果を合わせてプロットしてある。これらの図から、式(10)は2軸圧縮を受ける場合の最終強度に対する等価板厚を精度良く予測可能であることが分かる。
 
Fig. 14  Relationship between equivalent thickness and degree of pitting intensity under bi-axial compression
(a) t0 = 10mm
 
(b) t0 = 13mm
 
(c) t0 = 16mm
 
5.2 1軸圧縮とせん断の組合せ荷重を受ける板
 下式で示されるような1軸圧縮とせん断の組合せ荷重を受ける場合について解析を実施した。
 
 
 ここで、τxyはFig. 1に示すせん断応力であり、また、σxuo*及びτxyu0*はそれぞれ、圧縮あるいはせん断のみが負荷された条件における腐食ピットが発生していない場合の最終強度である。Fig. 15に板厚t0=10mmにおける腐食ピットが存在する場合の等価板厚比te/t0とピット面積率DOPの関係を示す。この図には、式(10)による予測結果を合わせてプロットしてある。これらの図から、式(10)は1軸圧縮とせん断の組合せ荷重を受ける場合の最終強度に対する等価板厚を精度良く予測可能であることが分かる。
 
Fig. 15  Relationship between equivalent thickness and degree of pitting intensity under uni-axial compression and shear (t0 = 10mm)
 
5.3 2軸圧縮とせん断の組合せ荷重を受ける板
 下式で示されるような2軸圧縮とせん断の組合せ荷重を受ける場合について解析を実施した。
 
 
 ここで、σxu0**はそれぞれ、前節で説明した2軸圧縮のみが負荷された条件における腐食ピットが発生していない場合の最終強度である。Fig. 16に板厚t0=10mmにおける腐食ピットが存在する場合の等価板厚比te/t0とピット面積率DOPの関係を示す。この図には、式(10)による予測結果を合わせてプロットしてある。これらの図から、式(10)は2軸圧縮とせん断の組合せ荷重を受ける場合の最終強度に対する等価板厚を精度良く予測可能であることが分かる。
 
Fig. 16  Relationship between equivalent thickness and degree of pitting intensity under bi-axial compression and shear (t0 = 10mm)
 
5.4 面内曲げを受ける板
 面内曲げを受ける場合について、Fig. 17に板厚t0=10mmにおける腐食ピットが存在する場合の等価板厚比te/t0とピット面積率DOPの関係を示す。本解析は既報[13]で報告したものである。この図には、式(10)による予測結果を合わせてプロットしてある。これらの図から、式(10)は面内曲げを受ける場合の最終強度に対する等価板厚を精度良く予測可能であることが分かる。
 
Fig. 17  Relationship between equivalent thickness and degree of pitting intensity under in-plane bend (t0 = 10mm)
 
5.5 面内曲げと圧縮の組合せ荷重を受ける板
 面内曲げと圧縮の組合せ荷重を受ける場合について、Fig. 18に板厚t0=10mmにおける腐食ピットが存在する場合の等価板厚比te/t0とピット面積率DOPの関係を示す。本解析結果は既報[13]で報告したものであり、面内曲げと圧縮の組合せを表すバラメータφを式(19)のように定義した場合に、φ=1.0とした場合のものである。
 
 
 ここで、M及びMYはそれぞれ曲げモーメント及び降伏曲げモーメントであり、P及びPYはそれぞれ圧縮荷重及び降伏圧縮荷重である。Fig. 18には、式(10)による予測結果を合わせてプロットしてある。これらの図から、式(10)は面内曲げと圧縮の組合せ荷重を受ける場合の最終強度に対する等価板厚を精度良く予測可能であることが分かる。
 
Fig. 18  Relationship between equivalent thickness and degree of pitting intensity under in-plane bend and compression (t0 = 10mm)
 
 以上のことより、本報で検討した腐食ピット分布(均等分布、Fig. 4及びFig. 5参照)の場合、第4章で提案した圧縮最終強度に対する等価板厚評価式は、2軸圧縮、1軸圧縮とせん断の組合せ荷重、2軸圧縮とせん断の組合せ荷重、面内曲げ、及び、面内曲げと1軸圧縮の各荷重条件下における最終強度に対する等価板厚評価に対しても適用可能であることが分かった。


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