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3. FEMによる溶接変形解析
 解祈には熱弾塑性解析用ソフトQuick Welder4)5)を用いた。まず,造船所で実際に溶接作業を行っている現場に行き,CO2半自動アーク溶接での入熱量(溶接速度,電圧,電流)のデータを収集し,この溶接条件を解析時に使用した。ここでは隅肉溶接の代表であるT型ビルトアップ材を対象に溶接変形の解析を行った。計算モデルをFig. 4に示す。部材長さは1,000mmと2,000mmの2種類,面材の板厚は12mmと20mmの2種類とした。溶接は両側同時溶接(ツイン)としている。溶接入熱は熱効率を0.8とした。解析に用いたデータをTable 1に示す。
 
Fig. 4 FEM model
 
Table 1 FEM analysis data
Case Voltage (V) Current (A) Speed (mm/min) Heat input (J/mm) Length (mm) Thickness (mm)
1 42 280 640 882 1000 12
2 32 280 424 1014.5 1000 12
3 44 320 630 1072.8 1000 12
4 40 300 520 1107.7 1000 12
5 34 280 409.7 1115.3 1000 12
6 34 260 346.4 1224.9 1000 12
7 42 280 640 882 2000 12
8 40 300 520 1107.7 2000 12
9 34 260 346.4 1224.9 2000 12
10 32 280 424 1014_5 1000 20
11 44 320 630 1072.8 1000 20
12 34 280 409.7 1115.3 1000 20
 
 また,材質は降伏点30kgf/m2クラスの高張力鋼の値を使った。材料物性値はFig. 5,Fig. 6のように温度依存性を考慮しているが6),以下のものは温度依存性を無視して一定値とした。
密度:78×10-6(kg/mm3
比熱:0.13(J/g/℃)
ポアソン比;0.3
線膨張係数:1.5×10-5(1/℃)
 
Fig. 5 Mechanical properties
(a) Young's modulus
 
(b) Yield stress
 
Fig. 6 Physical property
 
 解析は,まず想定した熱入力に対し,非定常熱伝導解析によって温度分布を求め,次に非線形構造解祈を行った。
 隅肉溶接による組立鋼の変形は縦収縮,横収縮および角変形の3種が代表的なもので,過去に実験的にも理論的にも多く研究がなされている。ここで,縦収縮はビルトアップロンジのような単一材の変形には重要であるが,スキン材同士の継ぎ手やロンジとスキン材を隅肉溶接するパネル材を考えると,縦収縮は溶接部近傍の局部に限定され,パネル全体の縦収縮には影響が少ないため,以下では考慮しないことにする。
 横収縮と角変形については文献7)が代表的なものである。日本造船研究協会第237研究部会ではこれら一連の研究について検討し,各種溶接法や高張力鋼および長さ影響などを盛り込んだ計算式を提案している8)。ここでは計算精度を比較するため,FEM解析結果を文献7)の図の上に重ねFig. 7(a)(b)に示した。ここでQ(J/mm)は入熱量のネット値,h(mm)は板厚,S(mm)は横収縮量を表す。ただし,文献7)の図でば溶接長さを200mmとしているので,解析によって得られた値を(7),(8)式8)で修正しプロットしている。これらの式中Sとθに付けたサフィクスは,200が200mmに対する値,Lが任意の長さに相当する量である。
 
溶接長さ影響(横収縮)
SL=aS200
A=[4tan-1(L/200)+(L/100)log(1+40000/L2)]/3.74
(7)
溶接長さの影響(角変形)
θL=bθ200
b=[8tan-1(L/120)+(1+ν)(L/60)log(1+14400/L2)]/8.82
(8)
ν: ポアソン比
 解析結果(図中の◆)は,ほぼよい精度で計算されていることが分かる。
 
Fig. 7  Comparison between experiments and calculations
(a) Transverse shrinkage
 
(b) Angular distortion


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