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3.3 船体応答長期予測による比較検討
 統計データベースは、主に船体応答の長期予測法20)の入力として用いられる。ここでは、各種統計データベースに対する長期予測結果の比較検討を行う。
 本来は複数の船種、船型、応答の種類について計算し、検討するべきであるが、参考文献9)〜12)でも同様のことが調べられていることから、今回は一例として、1軸コンテナ船(SR108船型、垂線間長Lpp=175m、幅B=25.4m)、フルード数Fn=0.275について、船体応答を船体中央部の縦曲げモーメントMVとして調べる。この周波数振幅応答関数をFig. 8に示す。ここで、λ: 波長、ζa: 波振幅、ρ: 海水密度、g: 重力加速度である。
 
Fig. 8  Response amplitude operators of vertical bending moment (Fn=0.275)
 
 船体応答の短期予測では、周波数スペクトラムにISSCスペクトラム、方向分布関数にコサイン2乗型分布を使用し、長期予測では、主波向は全方向一様に分布するとして計算している。
 GWS29海域とGWS18海域での長期予測結果をFig. 9、10に示す。Fig. 9より、GWS29海域では、WSNPOA及びWWNPO Iの結果が他と傾向が異なること、そして他よりも縦曲げモーメントを小さく推定していることが分かる。Fig. 10より、GWS18海域では、使用データにより長期予測値がばらついていること、そしてWSNPOA及びWWJAPANの結果が最小となっていることが分かる。
 
Fig. 9  Long term predictions of vertical bending moment at midship in GWS29.
 
Fig. 10  Long term predictions of vertical bending moment at midship in GWS18.
 
 これまでに、発現確率のフォーマットが船体応答の長期予測値に及ぼす影響が調べられ、表示桁数が少ない場合、その船体応答長期予測値は小さく推定することが示されている11)。今回使用したデータベースの中では、WSNPOAのみ確率表示が3桁に丸められており、これがGWS29及びGWS18海域でWSNPOAによる長期予測値が小さく推定される理由と考えられる。次に、WWNPO IはTable 1に示す通りデータ数が約2万件と少ないこと、また、Fig. 4に示す通り波周期の分布形状が他データベースと大きく異なっていることから、これらにより長期予測値を小さく推定したと考えられる。GWS18海域でWWJAPANによる長期予測値が小さく推定される理由は、Fig. 6に示す通り、他データベースに比べ同一超過確率を与える波高が小さく推定されているためである。
 一方、GWS18海域での長期予測結果で、WWNPO IIを使用したものが最大となっているが、Fig. 6に示す同一超過確率に対する波高はWWNPO IIが最大となっていないことから、これは、波周期の頻度区分が6区分と他のデータベースのll区分以上に比べ粗く、波周期5s以下の観測が多いことによるものと考えられる。
 
4. 日本近海の波と風データベースによる気象海象評価
4.1 等値線による気象海象評価
 日本近海の波と風データベースを用いて平均的傾向、荒れた状態での傾向を空間分布を作成することにより知ることができる。
 平均風速及び有義波高について通年平均値の等値線をFig. 11、12に示す。
 
Fig. 11 Contours of annual mean of mean wind speed.
 
Fig. 12  Contours of annual mean of significant wave height.
 
 Fig. 11から、平均風速の通年平均値は、房総半島東方海域で8m/sを超え大きいこと、日本海では北海道西方で約7m/s、東シナ海では台湾北方海域で約7.5m/sの空間的ピークを有することが分かる。Fig. 12から、有義波高の通年平均値は、房総半島東方海域で2.5m程度と沖合に行くに従い大きくなること、日本海では津軽海峡西部で約1.75mのピークが存在することが分かる。なお、有義波高の平均的傾向は、第三世代モデルWAMによる波浪追算でも調べられており、同等の結果が示されている21)
 次に、気象海象の荒れやすさの状態は、超過確率Qを用いて表すことができる。超過確率Q=10-2となる平均風速及び有義波高の値を各地点で求め、その等値線をそれぞれFig13、14に示す。
 
Fig. 13  Contours of mean wind speed at excess probability 10-2 (annual).
 
Fig. 14  Contours of significant wave height at excess probability 10-2 (annual).
 
 Fig13から、三陸東方から房総半島東方にかけて平均風速20m/s程度の強風海域が広がっていることが分かる。これは冬季季節風によりこの海域の風速が大きくなることから、その影響と考えられる。
 Fig. 14から、沖縄南東海域が荒れやすい海域であり有義波高6m程度であることが分かる。これは台風の影響と考えられる。


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