4. 曳き波に関する試験結果
4.1 縦切り波形
Fig. 7に,アウトリガー配置(5)におけるFnpp=0.3,0.4,0.5,0.6の4つの縦切り波形の比較を示す。比較のため,三胴船主船体部の縦切り波形を図示している。図中,横軸は水槽試験における実時間を表している。三胴船の波形は,主船体部によって造られた波に,アウトリガー部によって造られたと考えられる波長の短い波が重なったものとなっていることを特徴とする。このような特徴は,Kennellの行った水槽試験結果8)にも見られる。アウトリガー位置によって,この短い波の位相が変化し,縦切り波形に変化をもたらす。その実例を示すため,Fnpp=0.3において,アウトリガー配置を(2)(5)(8)と変化させたときの縦切り波形の比較をFig. 8に示す。配置(8)では船から離れたところでの波高が単胴のそれと比較して大きくなっているのに対し,配置(2)では,船から離れたところでの波高がほとんどゼロになるという結果を得ている。これは,大型高速船においてしばしば問題となる曳き波問題の解決のために,三胴船という形態が有効であることを示唆するものである。ただし,今回の計測では,Fnpp=0.3以外には,曳き波波高の大幅な低減は得られていない。遠方場での曳き波を小さくするためには,設計スピードに対して,最適なアウトリガーの大きさがあり,今回は偶然にもFnpp=0.3にてほぼ最適であったと考えられる。
Fig. 7 |
Wave longitudinal cuts for different Froude numbers (Trimaran No.5) |
Fig. 8 |
Wave longitudinal cuts for different outrigger positions (Fnpp=0.3) |
4.2 波高の比較
曳き波の問題を考えるとき,高速船が造った波の近くを偶然に航行した小型船舶が転覆するような場合と,高速船が造った波が津波のように遠くまで伝搬して港湾等に被害をもたらす場合の2つに大別できると考えられる。前者は,船から比較的近い場所での波であり,後者は船から遠い場所での波である。それぞれを対象とするため,Fig. 9に示すように,縦切り波形の計測結果の最低点から最高点までの高さを最大波高zmax,さらに船から離れたところでの波高(いわゆる自由波の波高)zfarを求め整理した。
Fig. 9 Maximum wave height and far field wave height
Fig. 10に最大波高の比較を示す。最大波高はフルード数の増加とともに大きくなる傾向がある。フルード数によるばらつきはあるが,三胴船とすることによる最大波高の低減は最大で15%程である。しかし,最大波高を小さくするアウトリガー配置が,必ずしも剰余抵抗を小さくするわけではない。
Fig. 11に遠方場での波高の比較を示す。遠方場での波高はFnpp=0.5付近において最も大きくなり,最大波高の傾向とは異なる。三胴船とすることにより,Fnpp=0.3,0.4で波高が小さくなるが,Fnpp=0.5以上ではむしろ大きくなる傾向がある。Fnpp=0.5を越えるような高速域においては,今回の水槽試験に用いた三胴船では,遠方場における曳き波の低減は困難なように思える。また,遠方場での波高を小さくするアウトリガー配置が,必ずしも剰余抵抗を小さくするわけではないようである。
Fig. 10 Comparison of maximum wave heights
Fig. 11 Comparison of far field wave heights
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