(5)日本の海辺の漂着物量及び処理コストの推定について
日本の海岸に打上げられている人工廃棄物(漂着物)の量及びそれらの処理コストについて概算したところ、日本の海辺の漂着物量は146,208t/年、それらを市町村等の一般廃棄物処理施設で処理すると、約55億円あまりの処理コストが算出される。
なお、この数字の算出に当たっては、漂着物を取り集める経費は含まれておらず、また、離島での漂着物処理を実際に行う場合は、大型重機の調達や回収した漂着物の本土までの収集・運搬コスト等が必要となるなど、これら実態を踏まえた的確な漂着物処理コスト算出には様々なファクターを考慮する必要がある。
このようなことから、今後、これら日本の海辺の漂着量や漂着物処理コストを適正に算出するための、漂着物の知見等の集積及び関係機関との連携・協力をした合理的かつ適正な算出方法を開発する必要がある。
●日本の海辺の漂着物量(1ヶ月)
3.5kg/100m2×(10m×34,812km×103)÷103≒12,184t/月
※NPECが提唱し実施している調査は、海水浴シーズンが終了し、清掃活動が終了した後の9月から10月にかけて調査を実施している。このため、調査で採集された漂着物は、ある程度の期間に漂着した漂着物量と考えられるため、それら期間を1ヶ月程度と仮定した。
・調査地点:日本海・黄海沿岸の国内の砂浜海岸約25地点
・2000から2004年度までの国内調査地点の平均重量:3.5kg/100m2
・漂着物の散乱範囲:砂浜の奥行き10m
・日本の海岸線延長:34,812km
2000から2004年度までの海辺の漂着物調査結果の推移
|
調査結果(国内) |
調査結果(全体) |
平均重量
(kg/100m2) |
平均重量
(kg/100m2) |
平均個数
(個/100m2) |
2000 |
2.1 |
1.9 |
242 |
2001 |
4.0 |
3.3 |
258 |
2002 |
4.3 |
3.2 |
255 |
2003 |
2.6 |
2.1 |
427 |
2004 |
4.5 |
2.9 |
402 |
平均 |
3.5 |
2.7 |
317 |
|
●年間漂着物量
12,184t/月×12ヶ月=146,208t/年
●漂着物の処理コスト
146,208t/年×103×38円/kg÷104=555,590万円
処理料金:50円/kg(出典:「環境省一般廃棄物処理料金」)
(※(1兆9,600億円(平成15年度ごみ処理事業経費)×108)÷(5,160万t(平成15年度ごみ総排出量)×104×103)≒38円/kg)
【参考文献】
《平成15年度の清掃で回収された廃棄物量の推移》
・調査主体:(社)海と渚環境美化推進機構(マリンブルー21)
・清掃回数:延べ18,886回/年
・清掃活動実施自治体数:40自治体
・清掃参加人数:157万人
・回収量:16万t(54万m3) ※嵩比重0.3
・人工ごみと自然ごみの割合=55%+45%
年度 |
H6 |
H7 |
H8 |
H9 |
H10 |
H11 |
H12 |
H13 |
H14 |
H15 |
平均 |
ごみの量 |
ごみ千m2 |
238 |
302 |
219 |
241 |
421 |
536 |
142 |
185 |
169 |
542 |
300 |
ごみ万t(嵩比重0.3) |
7.1 |
9.1 |
6.6 |
7.2 |
12.6 |
16.1 |
4.3 |
5.6 |
5.1 |
16.3 |
9.0 |
人工ごみ万t
(全体の55%) |
3.9 |
5.0 |
3.6 |
4.0 |
6.9 |
8.8 |
2.3 |
3.1 |
2.8 |
8.9 |
4.9 |
|
海岸埋没物調査は、平成16年9月3日から12月15日までの間に3カ国10自治体11海岸で実施され、調査地点数は、日本27地点、ロシア3地点、韓国3地点の合計33地点であった。調査地点の列数と地点数を表4-1-1に示す。
表4-1-1 海岸埋没物調査地点数
海岸における埋没物の採集は、昨年度と同様、北海道大学の小城名誉教授の海岸埋没物調査法に準じた。まず、日本海に面する各砂浜海岸域において、海岸線に垂直に調査ラインを設定して、採集地点を定め原則として表層の漂着物を取り除いた後、40×40×7cmのサイズのステンレス方形枠を砂浜に埋め、長さ40cm、深さ5cmのならし器を使用して、枠内の深さ5cmまでに埋没しているプラスチック類を採集した。採集した地域と標本数は以下のとおりである。
日本:北海道(3)、秋田県(3)、富山県(6)、石川県(3)、兵庫県(3)、山口県(3)、佐賀県(3)、長崎県(3)
ロシア:沿海地方(3)
韓国:江原道(3)
合計採集標本数は、日本27、ロシア3、韓国3で全体では33標本であった。
本年度の採集物の選別と解析は、すべて富山県立大学短期大学部環境システム工学科と漢陽大学校工科大学応用化学工学科にて行われた。
全てのプラスチック類は、表4.1-2に示す33種類に分類し、個数と重量(精度0.0001g)を測定した。
プラスチック類の大きさの区分は、1: 1×1mm未満の粒子、2: 1×1mm≦<2×2mm、3: 2×2mm≦<3×3mmというように以下10×10mmまでと、さらに11: >10×10mmと11段階に分類した。なお、大きさの区分は、付属資料に示してあるサイズのことをいう。
海岸埋没物の中では、発泡スチレン、プラスチック製品破片が、それぞれ、数的、量的に最も卓越する項目であり、本年度の採集標本の分類では、プラスチック製品が「パイプ」、「ロープ」、「円板状プラスチック」、「キャップ」、「プルタブ、キャップパッキン」、「球状Pla.ビービー弾」、「漁具」の7種類、プラスチック製品破片では「製品破片」、「管状プラスチックストロー」、「水色の削りかす」、「管状プラスチックチューブ」、「管状プラスチックコード」、「硬質テープの破片」、「球状のプラスチック粒子」の7種類、その他のゴミでは「紙片」、「爪楊枝」、「蝋」、「粘着剤」の4種類などが出現しており、計34種類であった。
平成14年度の調査から採集標本の分類項目に出現した「被覆肥料の殻」は、本年度の調査においても確認された。
また、昨年度の採集標本の分類は、プラスチック製品では「硬質の荷造り用テープ」、「ロープ」、「プラスチック板」、「食品容器」、「キャップ」、「球状Pla.ビービー弾」、「管状プラスチックストロー」の7種類、プラスチック製品破片では「製品破片」、「水色の削りかす」、「菓子容器破片」、「管状プラスチックチューブ」、「硬質テープの破片」の5種類、その他のゴミでは「紙片」、「アルミ箔」、「蝋」、「粘着剤」、「ダンボール破片」の5種類などであり、計33種類が出現しており、本年度の採集された標本分類は昨年度と同程度の項目数であった。
表4.1-2 埋没物の採集標本の分類項目一覧
No. |
分類番号・項目名 |
種番 |
埋没物種類名 |
1 |
1 原材料 |
1 |
原材料(レジンペレット) |
2
3
4
5
6
7
8 |
2 プラスチック製品 |
15
16
21
22
24
26
44 |
パイプ
ロープ(撚りのかかった物)
円板状プラスチック
キャップ
プルタブ、キャップパッキン
球状Pla.、ビービー弾
漁具 |
9
10
11
12
13
14
15 |
3 プラスチック製品破片 |
3
27
30
36
46
114
300 |
製品破片
管状プラスチックストロー
水色の削りかす
管状プラスチックチューブ
管状プラスチックコード
硬質テープの破片
球状のプラスチック粒子 |
16
17 |
4 ゴム |
4
40 |
ゴム
輪ゴム |
18
19
20 |
5 繊維 |
5
13
130 |
テグス
紐、軟質のテープ(スズランテープ)
化学繊維の糸、綿、不織布 |
21
22 |
6 発泡スチレン
|
6
60 |
発泡スチレン
発泡スチレンコーティング加工有 |
23 |
7 スポンジ |
7 |
スポンジ |
24
25 |
8 薄膜状プラスチック
(厚0.2mm以下軟質) |
8
35 |
薄膜状プラスチック
ポリ袋、ポリ袋破片 |
26 |
9 オイルボール |
|
|
27 |
10 ペンキ破片 |
|
|
28 |
11 タバコフィルター |
50 |
タバコフィルター |
29
30
31
32 |
12 その他のごみ |
102
104
108
161 |
紙片
爪楊枝
蝋
粘着剤 |
33 |
13 不明物 |
|
|
34 |
|
|
被覆肥料の殻 |
|
|