資料番号5は安全航過を確保するための新しい空間モデルの提案である。従来のTCPA/DCPAおよびPADの計算に用いられていた円型のものではなく、目標の速力や前方通過や後方通過に応じて空間を変化させたものとして定義されている。
資料番号6は新しい空間モデルを用いた自船および他船の衝突危険度の定義を図示したものである。自船および他船の時間に関する存在確率の積をある時間範囲で積分した値をもって衝突危険度とする。
資料番号7は衝突危険度の定義に従った自船と他船の衝突危険領域算定法に関する概念を図示したものである。相手船の予測経路上において自船が変針したと仮定した場合の、各位置における衝突評価円内における誤差を考慮した両船の同時占有確率を計算して衝突危険度を求める。そしてその評価値があらかじめ設定した値を越えた場合に衝突危険有りとし、これをOZTと命名することが示されている。
今津教授による情報統合化表示に加え、OZTをそれに重畳表示した提案例が資料番号8に示されている。同資料でレーダ映像範囲内に示された幾つかのエリアが、それぞれ対応する相手船との衝突危険エリアすなわちOZTである。また、それらまでの距離を自船速で割ったものが到達時間であり、それぞれのOZTに対するTCPAとなる。
以上が今津教授の提案された「目標情報の統合と提供」の概要である。
本提案の内容に関しては、同一画面内における各種情報の統合化により相手船の特定が容易になること、またOZTの表示により衝突危険エリアが直感的にかつ正確に把握できる様になることなどが大きな特長である。
なお本文中では説明を省略したが、本提案による情報表示方法では自船に対して相対的に方位変化のない相手船はまっすぐに下に向かって接近することになる。この様に相手船の方位変化を画面上で容易に捉え、それにより衝突の危険性が簡単に判断可能であることも本表示方法の大きな特長である。
これらにより相手船の特定や衝突危険箇所の推定など従来から操船者の知的作業で判断されていた過程が削減され、従って操船者のヒューマンエラーや心理的負担がそれぞれ低減される事が期待される。
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