1-6 事業内容
本事業の内容は、(1)人間の目で把握した相手船情報と、(2)ARPAレーダならびに(3)AISによる相手船情報、これら3種類の相手船情報を統合判断することができ、さらに衝突危険評価に関する情報が示されるようにした表示機能を持つシステムのプロトタイプを実際に開発し、必要な評価実験を行いつつ改良を加えて、その機能を実用に結びつくレベルにまで完成させることが基本である。
平成16年度事業としては、そのプロトタイプを製作し、さらに陸上(工場)における評価・改善を行い、その機能の実用性を確保し高めることを目標とし、これを実現した。平成17年度事業では、主に、実船に搭載しての実験と評価を主たる目標とした。
(1)開発項目
基本的な開発内容は、景観をビデオカメラで撮影する機能を備え、システムの表示画面にその景観映像を表示すると共に、それと横軸(船首方位を中心にした方位角)を共通に、縦軸を自船からの距離とする座標を構成し、そこに相手船の位置や予測航路に加えてOZT情報を表示し、運航に関係する相手船情報を識別判断でき、またその相手船との衝突危険について位置的・時間的な情報を提供するシステムを開発することである。
主な開発項目は以下のとおりである。
・3種類の情報収集手段すなわち運航者自身の視覚、レーダ、およびAISによって収集した相手船情報を、景観映像に対応した座標上でその位置関係を確認しながら、運航者の判断にもとづいて容易かつ効果的に情報を統合するシステムの基本設計(機能を実現するハードウエア基本設計およびソフトウエアアルゴリズム設計)を行う。
・基本機能の検証の後に、マンマシンインターフェースの側面での開発(利用者が見やすく正しい情報把握ができるための表示方法等に関し、評価と改良を経ての決定)を行う。
・自船周囲の景観と対応させるためのビデオカメラに関して、その性能(試写映像を含む)を評価して必要な仕様を明らかにする。また必要な対動揺ならびに対振動性能を検討し、安定台の開発設計(要否の決定を含む)を行う。
・OZT理論にもとづく衝突危険評価の演算方式の検討および決定(評価円の大きさ、演算周期、その他詳細パラメータの選定)、ならびにOZT情報の表示に関するマンマシンインターフェースの側面での開発(衝突危険域またはその危険度合いを表示する方式に関し、評価と改良を経ての決定)を行う。
・同一対象に関して別種の情報収集手段による情報を統合する際の、誤差もしくは情報の不良に関する処理方法を開発する。
・実航海データの収録およびその再生方法の開発(各種情報の蓄積方式、再生方式、タイミング同期方式等)。
(2)実施事項
・平成16年度の実施事項
(1)相手船動静監視システム本体の設計
相手船動静監視システム本体を構成するハードウエアの要件および採用機材を決定してシステム仕様書としてまとめ、またシステム制御のためのソフトウエア仕様書を完成させた。
(2)カメラ部の設計
景観画像に対応させるために、画面の景観座標上に表示するカメラ映像を実現するためのカメラ部を構成するハードウエアの要件および採用機材を決定してハードウエア設計書としてまとめ、またカメラ部制御のためのソフトウエア仕様書を完成させた。
(3)プロトタイプの試作および評価
システムの各機能を完成させ、プロトタイプとして組合わせ、陸上(工場)におけるシステムテストを完了した。
(4)実験用小型艇による動作確認
海上での小型実験艇により、機能確認(予備的・部分的)と予備的評価を行なった。
(5)平成16年度事業成果報告書の作成
以上の成果内容を基にした事業成果報告書をまとめた。
・平成17年度の実施事項
(1)プロトタイプの機能評価および改良方針策定
平成16年度で開発したプロトタイプにつきプロジェクト内での評価に加え、適宜外部(ユーザ、学識者および関連研究機関等)に披露して屋内外での評価実験を行い、意見を求め改良方針を策定した。
(2)プロトタイプの部分改良を含む実船搭載実験計画と準備
実船搭載実験に備えた実験計画の立案と必要な部分改良を行った。
(3)実船搭載用取付台の設計・製造および実験機材の取付工事
カメラ、レーダ、AIS装備用の取付台(櫓)を製造し、実船に設置した。
(4)実船搭載による実航海評価
(東京−とまこまい」で実施)
実航海データを収集蓄積。これによる解析、再現シミュレーションを実施。必要に応じ可能な範囲でのプロトタイプの追加改造(ソフトウエア変更)も実施しながら再評価を行った。
(5)成果のまとめ、事業報告書作成
本件開発によりシステムが実用化された段階では、船舶の運航において次の効果が発揮され安全運航に大きく寄与するものと考えられる。
(1)相手船情報の統合の容易化と正確化
現在は、運航者が、レーダあるいはAISによって得られた相手船位置を、自身の頭の中で(知的能力に依存して)、その位置を極座標(レーダや電子海図画面)から景観座標に変換し、すなわち景観のどの位置に対応するかを判断することによって景観中の相手船と照合しているのに比較し、照合が格段に容易となる。これにより、輻輳域で発生しがちな照合ミス、すなわちレーダあるいはAISで判断した相手船が、景観中に見えているどの船であるかを取り違える危険も防止できる。
(2)輻輳海域における行動決定(危険回避)の支援
さらに、輻輳海域において自船行動空間のどこがどの相手船により妨害されているか、すなわちどこが危険域であるかを、OZT情報として景観画像と対応させながら知ることが可能になる。これにより、レーダやAISにより捕捉・追尾されていない目標についても、景観で確認しながらその関係を同時に考慮しつつ行動決定することが可能となる。
1-8-1 開発の実施者および作業分担ならびに実施場所
(1)実施者および主要作業分担
古野電気株式会社
(共同実施者担当範囲を除く本事業全般)
株式会社トキメック
(視覚情報収集装置開発ならびに視覚情報関連ソフトウエア開発)
日本無線株式会社
(仕様評価ならびにプロトタイプ評価試験全般)
(2)実施場所
兵庫県西宮市芦原町9-52 古野電気株式会社 社内
栃木県矢板市東町333-4 株式会社トキメック 社内
東京都三鷹市下連雀5-1-1 日本無線株式会社 社内
「さんふらわあ とまこまい」(商船三井フェリー株式会社)船上 他
1-8-2 開発関係者
(1)総括責任者
古野電気株式会社 常務取締役 飯野博司
総括責任者代理
古野電気株式会社 舶用機器事業部開発部
航海・通信機器担当部長 大島寿一
(2)主たる技術者
古野電気株式会社 舶用機器事業部開発部
航海・通信機器担当部長 大島寿一
株式会社トキメック 第1制御事業部船舶港湾事業
技術部第2技術課課長 梅野貢一
日本無線株式会社 海上機器事業部海上機器技術部
担当部長 高山 仁
(3)連絡者
古野電気株式会社 顧問 赤松秋雄
電話: 0798-63-1005 FAX: 0798-66-4975
Email: akio.akamatsu@furuno.co.jp
(4)他よりの指導者或いは協力者
東京海洋大学 教授 今津隼馬
株式会社エム・オー・マリンコンサルティング 並びに 商船三井フェリー株式会社
1-9-1 主要開発項目および期間
1)プロトタイプの開発:平成16年4月〜平成17年9月
2)評価実験(屋内・実船):平成17年4月〜平成18年2月
3)モデルの改良:平成17年5月〜平成18年3月
1-9-2 各項目別スケジュール
注)上記の破線矢印は予定計画に対する実工程を示す。
|
|