日本財団 図書館


吟剣詩舞だより
絲綢之路(シルクロード)敦煌を訪ねて
―漢と匈奴、そして敦煌―
敦煌の旅吟友会
 
千葉県・深澤吉翠
 今朝の最低気温は零度、最高気温十八度、無風快晴だそうです。中国甘粛省・敦煌市のホテル太陽大飯店で観光バスに乗車した私達は、現地観光ガイド、女性、史(し)さんの美声に一同ほっと一安心。
 時は平成十七年三月二十二日朝九時、何時の日かと、いつも心に画いていた西域の関門「陽関」、そして「玉門関」を目指してバスは出発しました。途中、時折見かける土で出来た「狼煙台(のろしだい)」、ガイドさんの談では、二千年前のものとのこと。さすが、中国の歴史の奥の深さに感心いたしました。
 紀元前一三九年、「張騫」は、漢の武帝の命により、匈奴を潰滅せんが為、西の大月氏国と同盟を結ばんと赴きましたが、目的を達成することはできませんでした。しかし、これによって、西域を通して、中国と西方諸国との間に交易の道が開けることになりました。人呼んでこれをシルクロード(絲綢之路・絹之路)といいます。
 更に紀元前一二一年、同じく武帝の命によって、衛青と霍去病は今の甘粛地方に出撃し、匈奴をはじめ、羌族を下して西域に通じる回廊(河西回廊)を確保、その西端「敦煌」を拠点として二つの関門「陽関」・「玉門関」が構築されました。
 バスは、その「陽関」に向かって走り続けます。やがて左手に、井上靖氏の映画のロケ地敦煌古城が見えてきました。更に千数百年前の西千仏洞を望みながら、砂漠に車を進めます。何処までも澄み切った青い空。年間の降雨量、僅か四十ミリとの事。爽快さが頷けます。
 
「玉門関」にて合吟する一行(中央が筆者)
 
 小高い丘の上に、一際大きい「狼煙台」が建っていました。その傍ら『山烽燧』と刻まれた石碑を目にしたとき、儚くも「陽関」「砦」の消えている寂しさに、私は胸痛む思いでした。
 
君に勧む更に尽せ
一杯の酒を
西の方陽関を出ずれば
故人無からん
 
 陽関を通り、都護として西域に派遣されてゆく友人を思う「王維」の気持ちが、よく分かるような気がいたします。石井胤憧、高橋謙憧両先生尺八の伴奏で、全員、漢詩「陽関」を合吟。
 昼食の後、「玉門関」へ向けて出発。渺茫、漠漠、砂、砂、砂。そして、現れては消え、また現れて、銀色に光る水や池の蜃気楼。往復行程約百七十キロ。昔の旅人としては『飲むに水無く、休むに木陰無し、ましてや宿泊、全く適わず』
 
今夜は知らず
何れの処にか宿せん
(今夜は何処へ泊まろうか、何のあてもない)
平沙万里 人煙絶ゆ
(砂煙は何処までも続き、人家すら見えない)
 
 岑参作「碩中の作」の詩の一節の意味を、私は心から深く痛感しました。
 やがて、夢にまで見た、古代の絲綢之路(シルクロード)玉貴石も通ったという『玉門関』に到着。
 王之渙作、漢詩「涼州詞」の一節。
 
羌笛何んぞ須いん
楊柳を怨むを
春光渡らず
玉門関
 
 羌族(少数異民族 匈奴・ウイグル等)の吹く笛の音、折楊柳の曲に、玉門関の任についてる兵上等の、遙かな故郷を、そして都を思う切ない気持ちが良く分かるような気がいたします。私達は、遠く二千年昔の漢の時代に思いを馳せ、会員一同「玉門関」に向かい、心から吟じました。
 敦煌市郊外にある世界文化遺産「漠高窟」内部の壁画、塑像の素晴らしさに目を奪われ驚嘆。有名な砂漠の山「鳴沙山」の優しい山波、そしてどんな砂嵐にも埋もれない泉「月牙泉(三日月・泉)」に感動し、新彊ウイグル自治区、ウルムチを経由し、飛行中、深雪に覆われた天山山脈を眺め心弾ませながら、三月二十四日、帰国の途につきました。
 
詩吟ライブ小さなコンサート
平成十七年四月十日
岡山県浅口郡鴨方町
酒蔵「丸本酒造」
 
 四月十日、岡山県浅口郡鴨方町の酒蔵「丸本酒造」で河田千春・木村岳尚両名出演による小さなコンサートライブNo14を開きました。
 
「祝賀の詞」を舞う河田千春氏
 
 ライブと銘打った本旨は(1)プレイヤーと観客が一体となって、楽しくくつろいだ雰囲気の中で聞いていただくこと(2)古典の詩吟枠からはみ出た曲も大胆に提供し、それに対する観客の皆さんの反応を大切にする、ということです。
 (1)については、美味しいお酒が飲み放題だったので、雰囲気は最高でした。(2)については、歌謡吟詠の中でも洗練された曲、ピアノ弾き吟じシリーズ、中国の詩吟の紹介など、聞いていただきました。
 詩吟を楽しむだけではなくて、「ハンセン病回復者支援事業協賛チャリティ」としても取り組み、五万円を寄付させていただきました。
(岡山県・河田千春)
 
全国吟詠コンクール石川県大会中部地区大会予選
平成十七年四月二十四日
石川県小松市民センター
 
 若葉の風もおだやかな四月二十四日、石川県小松市民センターにおいて(財)日本吟剣詩舞振興会・全国吟詠コンクール石川県大会(中部地区大会予選)が開催されました。
 石川県総連の出島将岳事務局長の開会の辞に始まり、二会場にて競吟をスタートしました。
 幼少年の部では、緊張した目を輝かせ、精一杯の吟をしてくれました。青年の部では、出吟者が少ないのが少々残念ではありましたが、前途有望な吟者の競吟でした。一般二部では、百四十七名と全体の五十八%を占めており、年齢を感じさせない中高年パワーがありました。日頃の練習の成果を伸びやかな吟で挑んでいました。
 審査が終わり、中屋岳舟・山下岳審査委員長の講評が語られ、態度などについて注意があり、続いて審査結果発表がありました。
 
コンクール表彰式典
 
 中部地区大会出場の方々には、真摯に取り組み心残りのない吟で大会に挑戦し良い結果が出ます事を祈っています。前濱錦城副理事長の閉会の辞をもって滞りなく大会を終了しました。
(石川県吟剣詩舞道総連盟 吟詠副部長・経田心岳)
 
平成十七年度春洋流吟剣詩舞道大会
平成十七年四月二十九日
八王子芸術文化会館
いちょうホール
 
 今年の企画吟詠は、「川中島物語」と題し、初代宗家の生誕地甲斐の国、武田信玄公の兵法と人間哲学を探究する、をテーマとしました。数年前からたびたび現地訪問を重ね、構想を練った石川春洋宗家の烈々たる想いが通じたのか、大会当日は快晴の中、気温三十二度の真夏日となる熱気あふれる絶好の環境が整いました。
 この宗家の熱き想いは、黒須隆一八王子市長にも届き、市長は開会式の冒頭よりご来臨くださいました。そしてご挨拶のはじめに、「わたしの父方のふるさとは、春洋宗家と同じ栃木です。日本の伝統芸能を面々と継承し、八王子市はもとより地域文化の向上に貢献されていることに敬服いたします」と、感謝と励ましのことばをいただきました。
 国歌斉唱に続き、わが流派の憲法に当たる「東洋吟詠会七訓魂」を唱和しました。
 プログラムの一番目は、毎年行う支部対抗合吟コンクールです。都総連加盟の宗家、会長の諸先生にご審査いただく、支部団体による競吟です。わたしたちの会には、吟詠錬磨の具体的な手段として、競う場面を意識的に多くしてあります。当会から少壮吟士や全国吟詠コンクールの優勝者がつぎつぎと生まれたり、武道館の合吟コンクールに、スタート時より、一回も休むことなく出場できていることなどは、錬磨の精神が深く根付いているからかも知れません。賛助吟詠では、八王子市の福祉の会や市民サークルの皆さんが、元気な姿で参加され、会場から温かい拍手をいただきました。
 
剣舞「巌流島の決闘」
 
 つぎに新師範の吟詠、会員の吟詠が披露されました。さらに会員が最も楽しみにしているご来賓の先生方の模範吟詠と剣詩舞の披露がありました。しめくくりとして、初めにご紹介しましたスライド吟詠の「川中島物語」を発表しました。
 今年も熱い想いの大会を、和やかなうちに終えることができました。
(春洋流 広報部)
 
財団法人 日本吟剣詩舞振興会関連行事予定表(平成17年8月)
時間 大会名 開催場所 責任者
7日(日) 9時30分〜
18時00分
平成17年度 全国吟詠コンクール近畿地区大会 尼崎市総合文化センター 3会場 近畿地区連協
7日(日) 10時00分〜
18時00分
平成17年度 日本壮心流全国剣詩舞道大会 アイプラザ豊橋 入倉昭山
13日(土)〜14日(日) 平成17年度少壮吟士夏季特別研修会 湘南国際村センター 財団本部
21日(日) 13時00分〜
17時00分
第16回岡山県吟剣詩舞青少年大会 御津町文化センター 大本旭章
28日(日) 9時00分〜
17時30分
平成17年度北辰神桜流 吟剣詩舞道大会 名古屋港湾会館 大ホール 竹内騎峰
28日(日) 9時00分〜
18時00分
第38回全国吟詠コンクール決勝大会 大府市勤労文化会館 和田箔峰
 
七月NHKラジオ
FM吟詠放送
「邦楽のひととき」
●放送日時
七月二十一日(木)午前十一時〇〇分〜同三〇分
●再放送
七月二十二日(金)午前五時二〇分〜同五〇分
●吟題と出演者
一、和歌・わが庵は (太田 道灌)
わが庵(いほ)は 松原(まつばら)つづき
海(うみ)近く(ちかく) 富士(ふじ)の高嶺(たかね)を
軒端(のきば)にぞ見る(みる)(繰返し)
海を望む (藤井 竹外)
〈吟〉山中 梅鈴
二、和歌・庭の面は (源 頼政)
庭(にわ)の面(おも)は まだかわかぬに
夕立(ゆうだち)の 空(そら)さりげなく
すめる月(つき)かな(繰返し)
諸生と月を見る (中江 藤樹)
〈吟〉福永 瀧霊
三、松島 (岩渓 裳川)
平泉懐古 (大槻 磐渓)
〈吟〉和田 彩楓
四、涼州詞 (王 翰)
磧中の作 (岑 参)
〈吟〉臼井 寛洲
五、山亭夏日 (高 駢)
暑を山園に避く (王 世貞)
〈吟〉米本 耿泉
六、金陵の鳳凰台に登る (李 白)
〈吟〉中澤 春誠
 
ハンセン病制圧に関するご報告
世界のハンセン病回復者、その子どもたちのために、今後も一層のご支援を!
WHOハンセン病制圧特別大使
日本財団理事長
笹川陽平
 全国の吟剣詩舞愛好者の皆様、お元気でしょうか。
 皆様がハンセン病について関心をもたれご寄付くださった総額は四二〇万円になりました。私はこの貴重な寄付金を一円たりとも無駄使いせず、すべてインド・中国・ミャンマーなどの国々の、恵まれないハンセン病回復者や学校に行けないその子どもたちのために活用させていただいております。寄付金の使途につきましては、後日詳しくご報告いたします。
 
インド・ボパール、ハンセン病治療中の患者さん(左の女性)宅にて
 
 私は年間四カ月、海外で活動しています。皆様の心強い支援があればこそのことです。いわれない差別に苦しんでいる人々のために世界からハンセン病をなくしたいという父・笹川良一の遺志を継いで、私は仕事をさせていただいていることに感謝をしながら活動しております。
 世界のハンセン病回復者は、皆様の想像を絶する環境の中で、仕事もなく極貧の生活をしております。その子どもたちも学校に行けず、悲しい生活を強いられております。
 
インド・ゴアのハンセン病病院を訪問
 
 お元気でご活躍の皆様方、彼らのためにも今後も一層のご支援をお願いいたします。
 
笹川陽平氏の著書
『世界のハンセン病がなくなる日』をプレゼント
 
 
 世界保健機関(WHO)ハンセン病制圧特別大使として、昨年第十一回読売国際協力賞を受賞した笹川陽平氏が、ハンセン病に取り組んできた半生を本にしました。父の故・笹川良一氏(前・日本財団会長)がハンセン病根絶とかかわったいきさつから、その遺志を継いでの自身の活動が克明に記録されています。ぜひご一読ください。なお、四月一日以降一万円以上の募金をいただいた方には、もれなく著者サイン入りの本書をプレゼントいたします。
 
ハンセン病回復者支援事業に引き続き協賛戴きました
 現在、開発途上国におけるハンセン病回復者自立支援事業における「(財)日本吟剣詩舞振興会」を通じてご寄付いただいた領は、四、二八八、四三九円(四月末日現在)となっております。
■募金の振込についてのご案内
 ハンセン病回復者自立支援募金は、本誌最終頁に貼付の「専用振込用紙」をご利用いただき、最寄の郵便局からお振込ください。送金手数料はかかりません。皆さまの温かいご支援をお願いします。
ハンセン病回復者 自立支援事業 スタッフ一同
 
四月中にご寄付いただいた方のお名前(敬称略)
〔千葉〕
滝口美千代
〔大阪〕
柏原 星芳
渡辺 緑翔
中都 渓潮
〔島根〕
新出谷ひろ子
〔広島〕
沖本 公子
〔愛媛〕
矢野 翠楓


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