ハンセン病制圧に関するご報告
各国の人権回復、まだ途上
WHOハンセン病制圧特別大使 日本財団理事長
笹川陽平
厚生労働省が有識者に委託した「ハンセン病問題検証会議」の最終報告書が先ごろ公表されました。ハンセン病強制隔離政策について、今後、国はもとより我々に課せられた責務は患者、回復者への差別払拭、人権回復にいかに取り組むかです。
今年三月、ブラジルのクルパティティ療養所を訪ねる笹川氏
「多剤併用療法」(MDT)の出現により、一九八〇年代以降、世界で一四〇〇万人が疾病のくびきから解放されました。すでに一一六カ国で制圧、残る未制圧国は九カ国ですが、国土、人口ともに最大のインドでの制圧のめどがたち、あと一歩です。
しかし、偏見、差別といったもう一つの社会的側面の課題は、我が国のみならず世界中に蔓延したままです。MDTによって完治した一四〇〇万人の人々のほとんどは、社会復帰ができないまま、現在も事実上の隔離状態に置かれていると言っても過言ではありません。
私は三年前、世界的に患者、回復者の人権回復を実現するには、国際機関に訴えるのが最良の道と考え、文字通りの徒手空拳でジュネーブの国連人権委員会の門をたたき、紆余曲折の末、昨春、幸いにも本会議で発言する機会を得ました。
私はハンセン病についての偏見や差別をなくすために、なすべき指針を作成し、各国の実情に即した措置をとるよう勧告することの必要性を説きました。そして、国連人権委員会は、小委員会が今年八月末までにハンセン病患者や、回復者への偏見と差別の実態を調査し、委員会に報告させることを決めました。
本年に入り、二月は南アフリカ、三月はブラジルと小委員会による患者や回復者からの事情聴取が開始されました。
こうした小委員会の調査活動は今後インドでも行なわれ、八月には委員会に報告が提出される予定です。問題は提出された報告書を本会議の議題として提案し、審議するかどうかです。
我が国政府は、ハンセン病隔離政策の誤りを認めました。これは世界でも、まれな画期的なことです。私は我が国政府が今後、国連人権委員会の場において積極的に「ハンセン病と人権」の推進役を果たすことを信じて疑いません。
■笹川陽平氏の著書
『世界のハンセン病がなくなる日』をプレゼント
世界保健機関(WHO)ハンセン病制圧特別大使として、昨年第十一回読売国際協力賞を受賞した笹川陽平氏が、ハンセン病に取り組んできた半生を本にしました。父の故・笹川良一氏(前・日本財団会長)がハンセン病根絶とかかわったいきさつから、その遺志を継いでの自身の活動が克明に記録されています。ぜひご一読ください。なお、四月一日以降一万円以上の募金をいただいた方には、もれなく著者サイン入りの本書をプレゼントいたします。
ハンセン病回復者支援事業に引き続き協賛戴きました
現在、開発途上国におけるハンセン病回復者自立支援事業における「(財)日本吟剣詩舞振興会」を通じてご寄付いただいた額は、四、二五九、四三九円(三月末日現在)となっております。
■募金の振込についてのご案内
ハンセン病回復者自立支援募金は、本誌最終頁に貼付の「専用振込用紙」をご利用いただき、最寄の郵便局からお振込ください。送金手数料はかかりません。皆さまの温かいご支援をお願いします。
ハンセン病回復者 自立支援事業 スタッフ一同
三月中にご寄付いただいた方のお名前(敬称略)
〔埼玉〕
匿名
〔東京〕
横田美智子
〔愛知〕
近藤 清峰
〔大阪〕
山口 和子
田中 紀子
〔福岡〕
竹之内清文
〔佐賀〕
古賀 桜州
〔熊本〕
中村 健一
〔大分〕
伊地知隆輝
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