(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年9月17日03時55分
愛媛県野忽那島東岸
(北緯33度58.0分 東経132度41.8分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船陽和丸 |
総トン数 |
197トン |
全長 |
42.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
367キロワット |
3 事実の経過
陽和丸は,船尾船橋型鋼製の食油タンカーで,A受審人ほか2人が乗り組み,空倉のまま,船首0.6メートル船尾2.9メートルの喫水をもって,平成16年9月16日12時00分大阪港堺泉北区を発し,来島海峡経由予定で,関門港若松区に向かった。
A受審人は,船橋当直を船長と折半し,単独で5時間ずつ行なうこととしており,普段船長から眠気を催した際には遠慮なく報告するよう指示を受けていた。
23時00分備後灘で船長と船橋当直を交替したA受審人は,単独で操舵と見張りに当たり,来島海峡を通航したのち,翌17日02時30分来島梶取鼻灯台から278度(真方位,以下同じ。)1.3海里の地点において,針路を223度に定め,機関を全速力前進にかけ,折からの潮流に乗じ9.0ノットの対地速力で,所定の灯火を表示し,自動操舵により進行した。
ところで,A受審人は,船橋当直に当たるに先立ち,18時ごろ夕食を摂ったのち,仮眠をとることなく,自室でテレビを見続けていたので,睡眠不足気味になっていた。
A受審人は,操舵室を冷房し,舵輪後方に置いた背もたれと肘掛け付きのいすに腰掛けていたところ,03時04分少し前安芸灘南航路第3号灯浮標を左舷に航過したのを確認して間もなく,睡眠不足から眠気を催したが,当直交替まであと1時間ばかりなので,なんとか眠気を我慢できるものと思い,船長にその旨を報告して早めに船橋当直を交替するなど,居眠り運航の防止措置をとることなく,同じ姿勢のまま続航した。
A受審人は,いつしか居眠りに陥り,03時37分少し過ぎ野忽那島灯台から041度2.7海里の地点に達したとき,釣島水道に向け転針することができず,愛媛県野忽那島東岸に向首したまま進行し,03時55分野忽那島灯台から334度130メートルの地点において,陽和丸は,原針路原速力のまま,同東岸に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風力1の南東風が吹き,潮候は下げ潮の末期で,付近には南西方に流れる微弱な潮流があった。
A受審人は,乗揚の衝撃を感じて昇橋した船長と事後の措置に当たった。
乗揚の結果,船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じて浸水したが,自力離礁し,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,安芸灘を西行中,居眠り運航の防止措置が不十分で,愛媛県野忽那島東岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,単独で操舵と見張りに当たり,安芸灘を西行中,睡眠不足から眠気を催した場合,船長にその旨を報告して早めに船橋当直を交替するなど,居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同受審人は,当直交替まであと1時間ばかりなので,なんとか眠気を我慢できるものと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,いつしか居眠りに陥り,愛媛県野忽那島東岸に向首したまま進行して同東岸への乗揚を招き,船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じて浸水させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。