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平成17年広審第100号
件名

漁船第五十五漁進丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年12月5日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(米原健一)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:第五十五漁進丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部船底に破口を伴う損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年9月5日04時00分
 宿毛湾
 (北緯32度54.8分 東経132度33.2分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十五漁進丸
総トン数 19トン
登録長 19.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190

3 事実の経過
 第五十五漁進丸(以下「漁進丸」という。)は,船体中央から少し後方に操舵室を有し,まき網漁業船団に運搬船として所属するFRP製漁船で,A受審人(昭和54年11月一級小型船舶操縦士免許取得)及び甲板員1人が乗り組み,操業の目的で,船首1.0メートル船尾1.6メートルの喫水をもって,平成16年9月4日18時30分愛媛県深浦港を発し,宿毛湾西方沖13海里の豊後水道の漁場に向かった。
 A受審人は,目的の漁場に至り,僚船とともに操業に従事したのち,あじ40トンを載せて帰港することとし,水揚げに備えて網船から作業員2人を移乗させ,船首1.6メートル船尾2.0メートルの喫水をもって,翌5日02時00分高茂埼灯台南西方沖合約11海里の地点を発進した。
 ところで,A受審人は,操業形態が夕方深浦港を出港して豊後水道の漁場で徹夜でまき網漁に従事し,翌朝06時ころ帰港して水揚げを行ったのちも網の修理にあたるなどの作業に従事するもので,そのころ好天が続き,本件発生前の数日間は連続して出漁し,睡眠時間が毎日3時間ばかりしかとれなかったことから睡眠不足の状態であった。
 A受審人は,漁場発進後,航行中の動力船の灯火を表示し,操舵室前面に備えた4つの窓のうち左舷側から2つ目の窓を開けた状態で,同室後部のベッドの端に腰を掛けて単独の船橋当直を行い,豊後水道を東行して宿毛湾口に至り,03時18分半高茂埼灯台から199度(真方位,以下同じ。)2.3海里の地点で,針路を深浦港南西方沖合3海里の愛媛県当木島に向く063度に定めて自動操舵とし,機関を全速力前進にかけて7.6ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は,深浦港に帰港する針路法として,当木島に2,100メートルまで接近したところで水ノ子と称する高さ26メートルの水上岩に向首し,水ノ子西方沖合400メートル付近に存在する岩礁を航過し,水ノ子に200メートルまで接近したのち左転し,水ノ子と岩礁との間を北上することとし,03時54分少し前天嶬鼻灯台から223度2.2海里の地点に達したとき,針路を水ノ子に向く052度に転じ,その後ベッドの端に腰を掛けたまま,0.75海里レンジとしたレーダーと目視とにより見張りを行い,手動操舵に切り替えて続航した。
 A受審人は,間もなく睡眠不足から眠気を催したが,まさか居眠りすることはあるまいと思い,船員室で休息中の甲板員を起こして2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置を十分にとることなく,同じ姿勢で見張りを続けるうち,いつしか居眠りに陥り,03時59分少し過ぎ転針予定地点に達したが,転針を行えず,水ノ子に向首したまま進行した。
 04時00分少し前A受審人は,ふと目が覚めて前方を見たところ,至近に水ノ子を認め,急いで機関を全速力後進にかけたが,効なく,04時00分天嶬鼻灯台から216度1.4海里の地点において,漁進丸は,原針路,原速力のまま,水ノ子南西端の浅所に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の東風が吹き,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,船首部船底に破口を伴う損傷を生じてスラスター室及び氷室に浸水したが,自力で離礁して深浦港に入港し,のち修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,宿毛湾北部において,操業を終え水揚げのため愛媛県深浦港に向けて帰港中,居眠り運航の防止措置が不十分で,水ノ子に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,宿毛湾北部において,操業を終え水揚げのため単独の船橋当直にあたって愛媛県深浦港に向け帰港中,睡眠不足から眠気を催した場合,居眠り運航にならないよう,船員室で休息中の甲板員を起こして2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,まさか居眠りすることはあるまいと思い,居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥り,予定の転針が行えず,水ノ子に向首したまま進行して同岩への乗揚を招き,船首部船底に破口を伴う損傷を生じてスラスター室及び氷室への浸水を招くに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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