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平成17年長審第39号
件名

漁船第十八龍鳳乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年11月17日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(藤江哲三)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第十八龍鳳船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
プロペラ,プロペラ軸,舵軸及び同軸駆動用油圧シリンダーに曲損並びに船底中央部から後部に擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年11月6日20時00分
 長崎県相浦港沖合
 (北緯33度11.5分 東経129度37.1分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八龍鳳
総トン数 19トン
登録長 18.39メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190

3 事実の経過
 漁船第十八龍鳳(以下「龍鳳」という。)は,網船と灯船2隻及び運搬船5隻で構成された中型まき網漁業船団付属の,レーダーとGPSプロッターを備えたFRP製漁獲物運搬船で,A受審人(平成8年4月一級小型船舶操縦士免許取得)が甲板員と2人で乗り組み,長崎県相浦港で漁獲物の水揚げを終え,漁場で操業中の船団に合流する目的で,船首0.70メートル船尾1.60メートルの喫水をもって,平成16年11月6日19時40分同港中央卸売市場水産市場の岸壁を発し,同県生月島西方沖合の漁場に向かった。
 ところで,A受審人は,相浦港から生月島西方沖合に向かう際には,同港の港界付近北側にある立石埼を右舷側に離して航行したのち,長崎県母島とその西方対岸にあるトノコ島との間の海域から,トノコ島北方対岸にある黒島の東岸沿いに北上して同県臼浦港の港域に入り,その後港域内を西行して沖合に向かう進路をとるようにして,付近の海域を度々航行していたので,母島とトノコ島間の幅約450メートルの海域には両島からそれぞれ険礁が拡延し,ほぼ中央部に当たる幅約100メートルの海域が航行可能であることをよく知っており,同海域を航行する際には,目測によるほか,レーダーによって母島とトノコ島のほぼ中央部の海域を航行するようにしていた。
 発航後,A受審人は,法定灯火を掲げ,レーダーを作動させて甲板員を操舵室右舷側甲板上に座らせ,自らは舵輪の後方で操舵操船に当たって港外に向かった。そして,19時50分相浦港1号防波堤灯台を左舷側に離して通過したのち,機関を全速力前進にかけて港域内を西行し,同時55分半浅子港A防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から154度(真方位,以下同じ。)1,040メートルの地点に当たる,立石埼沖合の海域に達したとき,針路を300度に定め,機関を全速力前進にかけたまま,8.0ノットの速力で,レーダーで母島とトノコ島の映像を右舷前方に見る態勢で進行した。
 19時58分少し過ぎA受審人は,防波堤灯台から193.5度610メートルの地点に達したとき,レーダー映像を見ながらトノコ島と母島のほぼ中間に向けて右転を始め,間もなく,母島とトノコ島の島影を視認し,慣れた海域なので目測で両島のほぼ中央部の海域を航行できるものと思って,レーダーで船位を確認しないまま右転を続け,同時59分防波堤灯台から208度500メートルの地点に達したとき,針路を母島とトノコ島間の海域に向首する351度に転じたところ,母島の西方沖合に拡延する険礁に向首する態勢となった。
 A受審人は,転針する時機が平素より早かったような気がしたが,依然として,慣れた海域なので大丈夫と思い,レーダーで船位を十分に確認することなく,険礁に向首したまま接近していることに気付かないで続航中,突然,船底に衝撃を感じ,龍鳳は,20時00分防波堤灯台から229度350メートルの地点に当たる,母島の西方沖合に拡延する険礁に,原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果,龍鳳は,プロペラ,プロペラ軸,舵軸及び同軸駆動用油圧シリンダーに曲損並びに船底中央部から後部に擦過傷を生じたが,僚船によって引き出され,のち損傷部は修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,沖合の漁場に向け長崎県相浦港沖合を航行中,船位の確認が不十分で,同県母島西方沖合に拡延する険礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,単独で操舵操船に当たり,沖合の漁場に向け長崎県相浦港沖合を航行する場合,同県母島西方沖合に険礁が拡延することを知っていたのだから,同険礁に向首進行することのないよう,レーダーで船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,慣れた海域なので大丈夫と思い,レーダーで船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,母島西方沖合に拡延する険礁に向首進行して乗揚を招き,龍鳳のプロペラ,プロペラ軸,舵軸及び同軸駆動用油圧シリンダーに曲損並びに船底中央部から後部に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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