(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年3月29日01時53分
瀬戸内海 安芸灘南西部
(北緯33度59.7分 東経132度25.8分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第二成和丸 |
総トン数 |
495トン |
全長 |
67.23メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
第二成和丸(以下「成和丸」という。)は,船尾船橋型の鋼製貨物船で,A受審人及びB指定海難関係人ほか3人が乗り組み,空倉で,船首1.20メートル船尾3.00メートルの喫水をもって,平成17年3月28日17時30分水島港を発し,岩国港に向かった。
ところで,A受審人は,船橋当直を,出港操船から22時00分までを自らが,22時00分から翌29日02時00分までを甲板部航海当直部員の資格を有するB指定海難関係人が,02時から岩国港の錨地に到着する直前までを一等航海士がそれぞれ単独で行うこととしていた。
また,A受審人は,乗組員が乗船した時,船長指示書によりに服務命令を指示するほか,日頃から船橋当直者に対し,眠気を感じたら自分または次直の当直者を起こすよう指導していた。
A受審人は,出港操船に引き続いて船橋当直にあたり,28日21時45分来島海峡の東方で昇橋してきたB指定海難関係人を操舵に就けて同海峡の西水道を通過し,22時30分桴磯灯標の北東方1.2海里ばかりの地点で,B指定海難関係人に対し,夜間なので注意して航行すること,船位を確認すること,不安を感じた場合は船長に知らせることなどを指示して船橋当直を引き継ぎ,降橋して自室で休息した。
船橋当直に就いたB指定海難関係人は,安芸灘を西行し,翌29日01時23分半安芸爼岩灯標から163度(真方位,以下同じ。)0.2海里の地点で,針路を245度に定めて自動操舵とし,機関を全速力前進にかけて11.5ノットの対地速力で,法定の灯火を表示して進行した。
定針後B指定海難関係人は,床面からの高さ1.1メートルの操舵コンソールの後方に立ち,その上面に両肘をついてもたれ掛かる姿勢で当直に当たっていたところ,海上が平穏で,周囲に他船がいなかったことから気が緩んで眠気を催したが,まさか居眠りに陥ることはないものと思い,船長または次直の一等航海士を起こしたり,ウイングに出て外気に当たったりして居眠り運航の防止措置をとることなく続航するうち,前示の姿勢のまま居眠りに陥った。
こうして,B指定海難関係人は,01時35分半柱島港来見沖防波堤北灯台から094度3.4海里の転針予定地点に達したものの,居眠りしていてこのことに気付かず,柱島水道に向け転針することなく,山口県黒小島に向首する針路のまま進行し,成和丸は,01時53分柱島港来見沖防波堤北灯台から165度1.7海里の地点において,同島東岸の浅礁に原針路,原速力のまま乗り揚げた。
当時,天候は晴で風力3の北北西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。
A受審人は,自室で休息中のところ,乗揚の衝撃を感じ,急ぎ昇橋して事後の措置に当たった。
乗揚の結果,船首船底外板に亀裂を伴う凹損を生じ,フォアピークタンクに浸水したが,満潮を待ってサルベージ船の援助を受けて離礁し,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,安芸灘南西部を西行中,居眠り運航の防止措置が不十分で,予定の転針が行われず,黒小島に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
B指定海難関係人は,夜間,安芸灘南西部を西行中,眠気を催した際,ウイングに出て外気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらなかったことは,本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対して勧告しないが,今後船橋当直中に眠気を催した際には,適切に居眠り運航防止措置をとり,安全運航に努めなければならない。
A受審人の所為は,本件発生の原因とならない。